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オフ前 フィンケ監督コメント

フォルカー・フィンケ監督 本日のトレーニングを終えてのコメント
「この中断期間が始まる直前に、もう一度皆さんとしっかりと話し合いをしておこうと思いました。なぜかというと、ここ最近報道されることがまったく事実ではなかったので、やはり事実ではない報道がされたまま中断期間に入ってしまって何もコメントできないというよりは、今のうちに正しい情報をお伝えしておこうと思いました。
もちろん、一人の選手が何度も何度もケガをしてしまった、もしくは体調面でなかなか優れていないという現状があって、とても『ケガをしやすい』体になってしまった一人の選手を、私が監督として守らなければならないということがあります。ですので、選手の体の状態について、もしくは状況について、細かいそして詳しい情報を公の場で発表するということは一切ないと思ってください。
そして残念ながら、メディアの報道では、浦和レッズというクラブが、アレックスという一人の選手を冷遇視していたというように書かれていましたが、そのような事実は一切ないと思います。そしてもちろん、彼がこのクラブに残って、今後の試合に出場するかもしれないという可能性は残っていますが、私たちは実際には違う決断をしたわけですし、彼の今までの待遇などを考えましても、彼に対して非常に冷たく当たったということはありません。
今まで、このチームで実践されていたシステムと(今やっていることが)違ったということもありまして、本当の意味で左のサイドバックとして育ってきた選手がいない現状ではあります。だからこそ、私はこのクラブに残されていたすべてのオプションをしっかりと活用していきたいと考えていました。それはやはり一人の監督として当たり前のことだと思いますし、どの監督でも、このチームの現状ならばそのような決断を下すと思います。
シーズンが始まったときにも、私は積極的にこの両サイドバックのポジションで選手の補強をしていくということを考えませんでした。なぜかと言うと、私はまず、現時点でこのチームに所属している選手たちを起用していこうと考えたからです。ですので、長い間ケガをしていた平川忠亮、もしくはアレックスなど、これらの選手がしっかりとケガを治して戻って来て、チーム練習に合流して、彼らが試合に出ることを願っていました。
平川に関して言えば非常に喜ばしいことに、また練習に復帰できて、また試合に出場することができましたので、もしかしたら今後、定期的に彼を使うことができるようになるかもしれません。
そして、メディアには私がアレックスに対して非常に冷たく当たっていた、不公平な扱いをしたという形で書かれていましたが、それでも私はここで、なぜ彼がなかなか試合に出ることができなかったのか、ケガの状態、なぜケガから復帰するのに時間がかかってしまったのか、そして長い時間にわたってなぜ試合に出場することができなかったのか、そのようなことについて詳細なことをお話しするつもりは今後もありません。
しかし、4月4日の大分トリニータ戦でアレックスが復帰した後に、私が彼に出場機会を与えなかった、彼にチャンスを与えなかったというのは、私に対して非常にアンフェアだと思います。なぜかというと、それはまったく事実ではないからです。実際に彼は何度も試合に出場しましたし、ナビスコカップの試合(6月3日・ジュビロ磐田戦1-0○)で、彼がスタメンで試合に出て、そして前半8分でケガをして交代しなければならなかったという事実を皆さんもご存じだったと思います。ですから、あのような事実ではない形で報道されてしまったということは、非常に私にとっては理解できないものですし、なぜこのような形で報道されるのかということも、非常に不思議に思っています。
実際に4月4日の復帰戦の後も、彼は何度か試合に出ていたわけですが、何度もケガをしてしまったというのも事実だと思います。そしてあのナビスコカップ戦で負ったケガというのは、非常に大きな筋肉のケガでした。ですから、そう簡単にすぐ復帰できるようなものではなかったのです。ただし、そのような現状があったのにもかかわらず、『冷遇視していた』というように、とても不公平な書かれ方をされてしまいました。しかし、私が今回の移籍の直前に彼と1時間以上、しっかりとした話し合いをして、今後の彼の将来も考えて、私の意見を伝えて、彼もさまざまな意見を言ってきました。そのようなことは、アレックスにとってはとても大切なことだと思いますし、将来を考えればあのような形で、2人で話し合いをするということは、今回の決断をする上でも必要な機会だったと思います。
そして、私はここ2年間の彼のさまざまなケガについて、そして彼がその度どのようにして復帰してきたかということについて、さまざまな情報を得ています。私は同時に、彼がオーストリアのザルツブルクでプレーしていたときにも、なぜ彼が試合になかなか出られなかったのかということも知っています。多分、多くの方と比べても、私はたくさんの詳細な情報を持っていると思います。ですから、彼と、彼の体の状況ということを私がしっかりと考えて、そして彼の将来を考えて、さまざまな話し合いをしたり、いろいろな決断をしてきたわけです。
ですので、彼の将来のことを考えて私が下した決断が、なぜか『監督がアレックスという一人の選手を冷遇視している。不公平な形で接している』と書かれてしまうのです。これは事実ではないので、私はここで皆さんに、このようなさまざまな過去の詳細な情報があって、選手本人のことを考えて下した決断したことだということは理解していただきたいと思います。ただし、そのような詳細な情報について、私が公の場で語るということは一切ないと思いますし、これはプロとして当たり前のことだと思います。
そしてもちろん、過去の情報だけが大切なわけではありません。私は毎日選手の練習を見ているわけですし、それによってさまざまな情報を得ることができます。そして、これらのすべての情報を事実として私がクラブに伝えたのは、『現時点では彼と12ヵ月間という契約延長を結ぶことはお勧めできない。だからこそ、もう少し様子を見て、彼の体がどうなるのか、彼の今後の練習でのパフォーマンスがどうなるのかということをすべて見極めて、彼の契約延長について話し合いをしよう』ということでした。
なぜかというと、彼は一人の選手としては優れているので、私はぜひ彼を来年もこのクラブに残したかったわけです。しかし、今すぐ12ヵ月間のオファーを出すということを、私はクラブに推薦するということはできませんでした。
そしてここ2週間の話し合いでは、最終的には名古屋グランパスから18ヵ月間というオファーが来ましたが、それまでは違う話だったということは皆さんもご存じだと思います。そして、私ならシーズンが終わるまでのあと5ヵ月間、アレックスという選手と一緒にここで仕事をしたかったです。そして彼のプレーを見て、彼の体調面がどうなるのかしっかりと見極めて、彼の契約延長について話し合いをしようということを伝えていました。ただし、クラブサイドに今すぐ彼に12ヵ月の契約延長の話を持っていく、もしくは、私からクラブに推薦することはできなかったわけです。
私は正直なところ、あのようなプレースタイルを持つサッカー選手がとても好きです。だからこそ私はアレックスと今後もぜひ一緒に仕事をしていきたいと思っていました。しかし、現時点でクラブに契約延長を勧めるということはできなかったわけです。なぜかというと、ここ数年間のケガということもありましたし、正直なところここ2年間、アレックスはこの浦和レッズの選手として、そう多くはピッチに立っていなかったのではないでしょうか。このような現実を考えると、今すぐ契約延長をするよりは、やはりあと数ヵ月間様子を見るというのが正しい判断だと思います。なぜかと言えば、私はクラブに対しての、そしてチームに対しての責任があるからです。
私はアレックスを試合に起用したときに、毎回毎回、ケガをしないでほしいということを心から願っていました。そして、彼のプレーを見ることができて、彼が試合でケガをしないで試合を終えることができれば、本当によかったと喜んでいました。もちろん、今回はこのような判断になって、彼はクラブを離れてしまいましたが、だからと言って、私が(アレックスについて)悪いことを言うつもりは一切ありません。心より彼がグランパスで成功することを願っていますし、彼が優れたサッカー選手であるということは、すでに何度も証明されていると思うので、今後も彼の選手としてのキャリアがちゃんと続くことを願っています。ただし、皆さんに対するお願いですが、一方的に『くだらない、もしくは間違った決断を下した』『非常に冷たい監督だ』、そしてアレックスに対しては、『冷遇視された非常にかわいそうな選手』というようには書かないでください。なぜかというと、これが事実ではないからです。
やはり私は中断期間の前に、ぜひ皆さんにこのことをお伝えしようと思っていました。今後も一緒に仕事をしていきたいわけですし、今後も優れた共同作業をするということを考えますと、お互いさまざまなことについて語り合うことが大切だと思います。そして皆さんから質問を受けたときに、私はできる限りしっかりと答えるようにします。しかし同じように、とてもフェアではない報道があった場合、もしくは全く事実ではないことが書かれていた場合には、私からも『これは事実ではなかった』ということを説明する機会があったとしてもおかしくはないと思いますし、このような話し合いをすることによって、今後も建設的な共同作業ができるのではないでしょうか。
もし質問があればどうぞ。できる限りお答えしたいと思います」

(アレックスは今年いっぱいの契約だったのか?)
「その通りです。今年の終わりで契約が切れるわけでしたし、私はあと数ヵ月様子を見て、彼の今後の契約について話し合いをしたいということを考えていました。なぜかというと、あと数ヵ月間様子を見ることによって、彼の体の様子がどうなのか、どう回復するのか、そこを見極めたかったからです」
(本当にそのように様子を見たかったのであれば、今季終了までは移籍を強制的に止めることもできたのでは?)
「もちろん彼を強制的に残すこともできました。実際にこのクラブは、彼がケガから戻ってくるまで非常に長い期間待っていたわけですから、逆にこちらからも強制的に選手に対して、『自分(クラブ)たちが契約延長の話をするまで、君は数ヵ月間待たなければいけない義務がある』ということもできたと思います。ただし、私たちとしてみれば、やはり彼の体の様子を見て、それから契約延長の話をしたいというスタンスは一切変わりませんでした。
しかし、グランパスの出してきたオファーは、現時点で私たちの契約よりも12ヵ月長かったわけです。ですので、現時点では私たちの契約というのは今年いっぱいまで、しかしグランパスとの契約ならそれにプラスあと12ヵ月ありました。ですので、彼にとって有利な契約がグランパスから出てきたと言えるでしょう。
本当ならば普通私はこのようなことはお話ししないのですが、今回の話はアレックス本人も分かっていることですのでお話をします。実際にグランパスが最初に出してきたオファーは、契約期間6ヵ月でした。そしてこの6ヵ月間のオファーを私は断りました。なぜかというと、彼がだんだん体調を整えてきて、実際に彼が復帰してくるのを私たちは待ちたかったからです。
しかし、その後、グランパスサイドが18ヵ月間というオファーを提示してきたので、私たちは最終的には、彼が移籍することを了承したわけです。
もちろん私としましても、このクラブの人間、そしてファン・サポーターに、アレックスが非常にポジティブな形で思い出に残ることを願っています。なぜかと言えば、2004年から2006年まで彼は非常に優れた選手としてこのチームの成長に非常に貢献してきたと思うからです。ただし、その後のオーストリアでの1年では、彼は何度もケガをしてなかなか試合に出ることができませんでしたし、彼がレッズに復帰してからも、正直なところ2007年以降は、『ケガの期間』と言えるのではないでしょうか」
(アレックスは「浦和レッズが好きで、浦和レッズに残りたかった」と言っていたが、監督とのコミュニケーションがうまくいっていなかったのでは?)
「いいえ、そういうわけではないと思います。基本的に言えることですが、すべてのケガをしている選手というのは、『なかなか我慢をできない選手たち』です。できる限り早く復帰したい、そして自分の体の状況をドクターや監督が見ているよりも、もっと楽観的に見てしまうところがあります。ですので、なかなか厳しい現実を見ることができない状況に至ってしまう。これがケガをしている選手によく起こってしまう現象です。
もちろん、これにはいい面もあります。彼らがなかなか我慢をできないということによって、逆に強い意志を持って毎日の復帰に向けての練習に励むかもしれないからです。
今回の梅崎 司の件を思い出してください。彼の腰の手術というのは、非常に難しくて、厳しいものでした。手術後、4ヵ月間という非常に長い期間リハビリをしなければいけなかったわけです。その後、だんだんとチーム練習に合流できるようになって、今の彼は非常に大きな喜びを持って毎日の練習に励んでいます。
そして、今彼がチーム練習に合流して約20日間が経ったわけですが、20日間の練習の後にすぐに私のところに来て、『監督、私の腰の状況はもう非常によくなりました。もうベンチに座ることができると思います』。そのようなことを彼は伝えてきたわけです。もちろん私は今の時点で、彼をベンチに座らせるということはしませんでした。しかし、これはとてもいいシグナルだと思います。選手がとてもいい意気込みを持って、自分の体を治すことに励んで、そしてまたチームに合流しようとしている。そして早く試合に出たい。これはやはり選手として持っていなければいけない一つのキャラクターだと思います。
そしてアレックスの状況が、とても厳しかったことは皆さんご存じだと思いますし、本人もなかなか我慢できなかったと思います。なぜかというと、合計で約2年半、彼はケガをしていたわけです。なかなか試合に出ることができなかった、定期的に試合に出ることができなかった。そして、彼の契約が切れてしまう、そして彼の年齢、32歳という年齢を考えると、もしかしたら来年からは自分には契約がないかもしれない、という焦りがあるのもよく理解できます。このような非常に厳しい状態に至っている選手が発言しているようなことを、すべて私が『黄金の天秤』に載せるわけにはいきません。なぜかというと、このような厳しい状況に置かれている選手は、場合によっては『監督はもっと自分を早く試合に使うことができたのに、もっと早く起用することができたのに』と言うことがよくあるからです。しかし、そのようなときに体を治して、本当の意味で試合に出られるような体作りをしないといけないというのは本人も分かっていることだと思います。もちろん32歳と言う状況を考えれば、やはり家族がいる、そして今後の収入がどうなるのか、さまざまな心配事があるのはよく理解できます。
ですので皆さんにも理解していただきたいことですが、このような難しい、非常に難しい状態に置かれている選手の発言を、すべて私が『この発言は間違っている』『この発言は問題だ』と、毎回毎回言っていくつもりは一切ありません。なぜかと言うと、選手の状況も理解しなくてはいけないからです。
そして、私たちのこのポジションの選手で、とても優れた選手が必要だというとても厳しい状況を考えると、このようなアレックスというとても優れたサッカー選手が、私たちのチームのためにとても価値のある仕事をしてくれることを願っていたのは皆さんにもご理解いただけると思います。ただし、そのような価値のある仕事をするためには、やはり体調を整えなくてはいけません。そしてアレックスの場合は約2年半にわたって、何度もケガをしていた、そして現時点でも毎日の練習からさまざまな情報を得ることができたわけですが、とても体調面で優れているわけではなかったのです。そして私たちは2週間おきにさまざまなスプリントテストを行なって、瞬発力を調べていますが、そこでも残念ながら彼にはいい結果を見ることができませんでした。そのような総合的なすべての情報を総合して、クラブに対して、『今すぐこの選手に12ヵ月間の契約延長をするべきです』ということを、私は言うことができませんでした。クラブに対して、責任を持って推薦することはできませんでした。
そしてこのような状況で、グランパスが18ヵ月間というオファーを出してきたので、私は彼を放出するということを認めなくてはいけませんでしたし、それをリスペクトしなくてはいけなかったと思います。
もし今グランパスが18ヵ月間というオファーを出してきたのにもかかわらず、私が彼の放出を認めないで強制的にここに残らせた場合、どうなるでしょう。例えば、12月まで彼と一緒に練習をして、彼の状態を見たい、そして彼の体の状況を見極めて、契約延長をするかしないかという判断を下したい。これは先ほど説明しましたけれど、もしそこで彼と契約延長をしないという状況になった場合、すべての責任を私が負うことになります。そして『あのときグランパスからオファーがあったのに、それを認めてくれないのは監督じゃなかったか』と、非常に難しい状況になってしまいます。ですので、選手本人の今後のキャリア、そして来年のサッカー選手としての収入、家族を養わなければいけないという彼の状況、このようなことをすべて総合的に考えて、今回の移籍はチームに対しての責任、そしてアレックスという1人の選手に対しての責任を果たしたものだと思います。もちろん、強制的に彼をここに残らせることができるというのは、先ほどもお話しした通りです。しかし、現時点でグランパスがプラス12ヵ月を確定したオファーを出してくるのであれば、それを受理できるように伝えるのも、私の役目だったと思います。なぜなら、現時点で私は来年の彼の収入を保証できないからです。彼のように素晴らしい、浦和レッズのためにも日本代表のためにも素晴らしい実績を残してきた選手に対して、強制的に残すという決断を下すべきだったのでしょうか。私は、そうは思いません。家族を養わなければいけないという彼の状況を考えれば、今すぐ追加で12ヵ月間のお金を稼げるというグランパスのオファーがあった時点で、私は彼を放出するという決断をしなければいけなかったと思います。それは、本人に対して、選手としてだけではなく人間としてリスペクトすることでもあると思います。
以上ですが、私は彼を冷遇したことは一切ないということだけは理解していただきたいと思います。私は彼の今後も成長すること、そして成功することを心より願っています」
(アレックスはチーム内でも重要な選手で、その移籍に動揺した選手もいると思うのだが、今のような説明は、他の選手たちにもしてあるのか?)
「選手の契約の詳細、交渉状況について、すべての選手をここに集めて話をするということはありません。しかし、私たちのチームにはチームから選ばれた代表選手たち、鈴木啓太、阿部勇樹、山田暢久、坪井慶介、細貝 萌がおり、彼ら代表組にはさまざまなことについて話し合いをしています。今回の件もそうですし、今後もチームの中でちょっとした問題が起きたり、メディアで事実ではないことが書かれた場合には、代表組と話し合いをして、選手たちにも理解してもらうようにしています。毎回毎回、全員を集めてという形で話し合いをすることはありませんが、代表組を通しては、何度も話し合いをして、議論をして、すべてがいい方向に進んでいくように、選手たちとともにこの道を歩いていくことになります」
(アレックスを放出した分、他の選手を獲得する予定は?)
「もちろんあります。しかし、ここ最近になって補強に動き出したわけではありません。このクラブとサインをした日から、各ポジションで補強をできないかと、さまざまな情報を得たりしています。しかし、その補強する選手というのは、私たちのクラブの予算で獲得できる選手でなければならないということは、皆さんにもご理解いただけることと思います。クラブ内のさまざまな人間と私は話をしていますし、チームダイレクターやクラブのスカウトたちとも、どのポジションで選手を獲得しようとしているのか、みんなよく分かっていると思います。アレックスがいなくなったからといって、突然動き出したわけではありません。私が契約書にサインした日から動いていることです」
(海外の移籍窓口はあと10日ほどで閉まるが?)
「確かに外国から選手を連れてくる場合は、あと10日ほどでウインドーは閉まってしまいます。このような補強を行なう際に大切なのは、連れてくる選手が現在所属している選手よりも優れていなければならない、ということです。しかし、現在は世界のサッカー業界が変わってしまったということを、日本の方々は理解しなければいけません。一昔前のように代表選手として優れた実績を残した選手がキャリアを終える前にお金を稼ぐために日本に来るということはなくなってしまいました。
例えばピエール・リトバルスキー、ウーベ・バイン、ギド・ブッフバルトのような実績を残し経験溢れる非常に優れた選手たちが、キャリアの終盤に日本に来るということはあり得ない時代になっています。彼らはアラブ諸国を選んでしまうというのが現状です。そして、ヨーロッパのサッカー市場は金額がとても高くなってしまいましたから、世界的に最もよく知られている5つのブランド・ネーション、イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスという5つの国から、主力として活躍しているような選手を引っ張ってくるというのは、ほぼ不可能になっています。
だからこそ、若い選手たちを育成していかなければなりません。この育成というところに、この国のサッカーの将来があるのではないでしょうか。そして、日本の選手だけではなく、アジア全体のマーケットを見渡さなければなりませんし、アジアの中で最も優れた選手がどこにいるのかを考えなければなりません。残念ながら、ヨーロッパ出身の優れた若手選手を引っ張ってくることも、とても難しい状況にあります。彼らはヨーロッパでのレベルアップを望んでおり、日本に来たら誰も自分のことを見てくれないのではないかという恐怖心があるからです。
現時点では、私たちのチームに2つの外国人枠が残されています。通常の外国人枠とアジア枠です。この2つに加えて、外国人でも使うことのできるC契約での育成枠があります。
今まで、私はさまざまな外国人選手を見てきましたが、このクラブの予算で買える選手で、かつ私たちが必要としている選手で補強となるような選手を見つけることはできませんでした。アジア枠であろうと、ヨーロッパ大陸の選手であろうと、現時点で予算に見合いチーム戦術にも合う選手を見つけられていない、これが現状です。
選手を発掘、獲得するときに責任を持たなくてはいけないチームダイレクターやスカウトも、日本の中でどのような選手がいるのかの情報を今集めていると思いますし、今後は優れた選手獲得ができるように、私たちは仕事をしていきたいと思います」
(日本国内の移籍はあと数週間猶予があるが?)
「日本国内の選手を獲得するかどうかについては、あまり細かくお話しすることはできませんが、私たちが必要としているポジションで他のクラブの選手を今まで観察してきたのは事実です。
しかし、私はアレックスが戻ってくることを願っていました。ですので、私たちは長い間このポジションで選手獲得に動くことはしてきませんでした。しかし、残念ながらアレックスは復帰とケガというサイクルを繰り返していたので、移籍するということになりました。
現時点で私の手元には大量の資料、DVDがあります。私たちが必要とするポジションでプレーすることができる選手のリストがあります。それ以外に、代理人が出してきた資料というものもあります。私はこの中断期間を利用して、少なくとも40時間、場合によっては50時間、DVDを見ることになるでしょう。
そして、はっきりと言わなくてはならないことがあります。選手を獲得するのに大切なことは、その選手を実際に獲得することができるのか、現在の所属クラブがその選手を放出するのか、ということです。2つ目に、私たちのチームに所属している選手よりも、その選手は優れているのか。3つ目に、私たちの予算で移籍金を賄うことができるのか。この3つのポイントを常に考えて、選手を獲得するのかしないのかを考えなくてはいけません。
正直なところ、今年の夏の最大の補強は梅崎、平川、田中達也になると思います。長い間ケガで離脱していた彼らが戻ってくることができるのは、チーム全体のことを考えるととても喜ばしいことですし、この3人の選手の復帰が最大の補強になるでしょう。もちろん、他のクラブから選手を獲得することができればうれしいでしょうが、優れた選手を獲得するにはそれなりのお金が必要になります。そして、そのための移籍金が、私たちに与えられた予算内で賄うことができるかは、まだ分かりません。達也が夏の間にチーム練習に戻ってくることができれば、私にとってはこの夏、最大のスペクタクルな選手獲得になると思います(笑)。
このような形でさまざまな話し合いをすることは、やはり大切なことだと思います。レッズが現時点でどのような形で選手を獲得できるのか、どのくらいの予算があるのか、どのポジションで選手を必要としているのか。一つの移籍を成功させるためには、さまざまな要素を考えなくてはいけません。そして、そのようなことを考えなくてはいけないのだということを、皆さんに説明するのも、とても大切なことだと思います。
私はここで悪いことを言いたいというわけではありません。ただ、ここ最近、何度も何度も、レッズは優勝争いをしなくてはいけない、あるいは優勝しなくてはいけないチームだという形でのコメントや報道がありましたので、ここでしっかりとした事実を皆さんにお伝えしたいと思います。
厳しいことかもしれませんが、Jリーグが1993年にできてからレッズが優勝するまで13年間かかったわけです。そして、Jリーグができてから現在まで、レッズが優勝した回数は1回です。それなのになぜ、このチームが毎回毎回優勝しなくてはいけないと言われるのですか。私たちは今、ちょうど世代交代をしています。それは、年上の選手たちを追い出すために年下の選手を入れているわけでは一切ありません。このチームの将来のことを考えて、年下の選手を徐々に入れているわけです。世代交代というのは、どのチームもいつか必ずやらなければならないことです。しかし、そういったチームの若返りをし、結果を残すためには、少なくとも1年もしくは2年はかかるものです。そして、今までとはまったく違うスタイルのサッカーを私たちは追求しているときでもあります。前回優勝するまでに13年間待ったわけですから、次の優勝までには場合によっては1年もしくは2年かかるかもしれません。そのことは、このクラブの中で起きている現状として、皆さんに理解していただきたいことです。今すぐ優勝しなくてはいけないと書かれてしまうのは、おかしいと思います。なぜなら、現時点では、新しいチームを作り上げる段階だからです」
(選手もサポーターも優勝を願っていると思うが、監督の考えと温度差があるのではないのか?)
「もちろん私としても、優勝することができるなら、それはうれしいです。当たり前のことです。しかし、監督と監督を雇ったクラブの間ではしっかりとした話し合いが行なわれなければなりません。そして、シーズンがはじまる前に行なわれたとても大切な話し合いでは、昨年までの状況、結果はどうだったのかということが確認されました。昨年は7位というよくない結果を残してしまいましたから、今年のはじめに非常に詳細な話し合いが行なわれました。もちろん私は一人の監督として、このチームの目標は優勝しかありえない、と言うことができれば、それは非常にうれしい状況だと思います。そして、週末に勝ち点3を取ることができるようになるために、私たちが毎日仕事をしているということは、選手たちも理解してくれていると思います。ただし、サッカーというのは、自分が望む曲をすべて演奏してくれるオーケストラではありません。ですので、この業界で仕事をするときには、現実を見極めるということも、ある意味では大切なことだと思います。そして、現実と希望を勘違いしてはいけません。
現状として、私が今年になって引き継いだチームは、昨年7位という結果を残したチームです。そしてそのチームからは、永井雄一郎と相馬崇人という何度も試合に出場していた主力級の選手が放出されていたわけです。他のクラブから、すぐ戦力となるような選手を補強したわけでもありませんでした。だからこそ、もちろん私としましても優勝したいという希望を持つことは大切だと思いますが、やはり現実を見なくてはいけないと思います。
そして、その現実的なことをクリアにしていかなければいけませんし、徐々に課題を解決していかなくてはいけないと思います。
昨年7位という成績を残したチームが土台となっています。もちろん、彼らは今年に入ってさまざまなことを改善してきました。まったく違うサッカーを展開していますし、パフォーマンスは徐々によくなってきています。それは、年上の選手についても言えることですし、新戦力と言われる選手たちにも言えることです。その代表格が原口元気、山田直輝になるわけですが、彼らはどんどんどんどんプレーを改善し、Jリーグで通用するような選手になりました。この選手の成長というものは、チームを作り上げる上でとても大切な要素ではないでしょうか。私に与えられた一つの使命として、年上の優れた個の力を持つ選手と、大抵年下の選手になりますが、運動量の豊富な選手たちの割合を変化させなければならないということがあります。これが今年の一つのテーマでもあるわけです。このことに関しては、私も何度も説明していますし、選手たちも理解していると思います。
そして、年上の選手たちに関しては、『自分は年上だから一切チャンスを与えられていない』と言うような選手は一切いないと思います。私は公平なチャンスを与えていますし、『監督は自分が年上だからチャンスを与えてくれていない』と感じているような選手はいないと思います。
ここで個人名を挙げるわけにはいきませんし、皆さんも毎日の練習をご覧になっているわけですから、選手の体の状況というのは理解できるのではないでしょうか。現実として、28~33歳の選手の方がケガはしやすいわけです。今年に入ってから、実際に彼らは小さなケガかもしれませんが、ケガをしています。18~25歳の選手に比べれば、ケガをする可能性が高いのは当たり前のことだと思います。そして、このチームにはとても多くの28~33歳までの選手が所属しているわけですが、彼らにしてみれば、連戦が続くイングリッシュ・ウイークが何度も何度もあるというのは、非常に厳しいことになるわけです。実際、日本ではヨーロッパに比べてイングリッシュ・ウイークは多いです。このような連戦が続くと、特に年上の選手たちは体がついていかない、休みが必要だという状態になってしまうわけです。
そして、このような28~33歳の選手が多いチームで改革をしていくのは、非常に難しいことでもあります。なぜなら、彼らは優れた実績を残しています。もちろんタイトルも取ったでしょう。しかし、彼らがそういった優れた実績を残したときの年齢を考えてみてください。多くの選手が24~28歳の間だったのではありませんか。その代表格がアレックスだと思います。当時、2004年から2006年にこのチームがたくさんのタイトルを獲ったときの主力選手の平均年齢は、今のチームよりも若かったのではないでしょうか。私がよく話をしていることですが、年上の選手たちというのは、年下の選手たちがいなかったら、チームの中で存在することができません。ただし、年下の選手たちにしてみれば、年上の選手がいなければ、生き残るチャンスもない。それが、この業界の常識だと思います。
このようなプロセスは、年上の選手にしてみれば、ある意味で恐怖感を伴うものなのかもしれません。なぜなら、来年以降、自分の契約はないのではないかと心配してしまうからです。もちろん、ベンチに座るということに関しても、18歳、19歳の選手の方が32歳、33歳の選手よりも多くの苦情を言わないのは当たり前のことだと思います。19歳の選手にしてみれば、本当はもっと試合に出たいが、まだ自分は19歳だし、自分の将来はこれからだと考えるでしょう。
しかし、32歳、33歳の選手がベンチに座ると、自分の将来はどうなるんだと、契約はあるのかと心配してしまうわけです。
今日、突然このような形でお話しすることになって、非常に申し訳なく思っています。しかし、今後私としましても皆さんといい仕事をするために努力をしていきたいと思いますし、やはりこのような形での情報交換は大切だと思います。そして同時に皆さんにも理解していただきたいのですが、事実ではないことが書かれたときには、私からも説明をしたいという気持ちがあること、そしてそのことを皆さんも建設的に受け止めてほしいです。攻撃ではないということを。私は日本でのこの生活を非常に満喫していますし、短い期間で大金を稼いでこの国を去ろうとは一切考えていません。これが事実です」
(ベストな方法としては、間違ったことが書かれる前に監督から十分な説明がなされることだと思うが?)
「おっしゃる通りだと思います。私はシーズンがはじまる前に、皆さんにはっきり申し上げたと思いますが、1週間に2回しっかりと時間を取って皆さんとお話しする機会を作る。これに私はまったく抵抗はないよということは伝えていました。
しかしなぜか、シーズンがはじまると自然にその回数が減っていって、1週間に1回の試合直前だけになってしまいました。キャンプのときを思い出してください。私は1日もしくは2日おきに、皆さんとお話ししていました。ただし、クラブハウスの出口でパッと立ち話をするのはなく、このように座ってしっかりとお話をする環境を作って、やりたいと思います。
もし今後、もっとさまざまな情報交換をするべきだというのであれば、1週間に1回ではなく2回もしくは3回、皆さんとここでお話しをすることに、一切抵抗はありません。それが、当時話し合った状況だと思います。(日本語で)アリガト」

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