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ミハイロ・ペトロヴィッチ新監督、就任会見
17日18時から埼玉スタジアム2002ボールルームにて、ミハイロ・ペトロヴィッチ新監督の就任会見が行なわれた。
会見には橋本光夫代表と山道守彦強化部長が同席し、最初に橋本代表が、昨年を「誇りあるクラブへ向かおうという歩みを停滞させてしまいました」と総括。「2012シーズンはクラブの信任回復とチームの再建、再生を目指します」と力強く宣言した。
続いて山道強化部長がミハイロ・ペトロヴィッチ監督就任の経緯を説明した。「若く経験が少ない選手が多い今のチームには、実績と経験があり、引き出しの多い監督に任せるしかないと思っていた」と語り、「確かに紆余曲折はありましたが」と前置きした上で「チームを変えるために必要な指揮官に任せたいということの答えがミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督です」と力強い口調で話した。
その後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督がにこやかに挨拶。サッカーやレッズに対する思い・考えなどを語ってから質疑応答、フォトセッションをこなし、約1時間の就任会見を終えた。なお、サンフレッチェ広島時代からコーチとして監督の通訳を務め、監督が絶大な信頼を寄せる杉浦大輔コーチが、引き続き、レッズでもコーチとして監督の通訳を務めることとなり、揃ってレッズのクラブスーツを着て会見に臨んだ。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
「座って話してもよろしいですか?私、もう年ですので(笑)。少し日が経ちましたが、明けましておめでとうございます。みなさんの今年の健康を心から祈っています。
浦和レッドダイヤモンズの監督に就任できたことを本当に光栄に思っています。私の個人的な自己紹介については、省かせていただきたいと思います。なぜなら、私自身6年もうすでに日本で仕事をしてきたので、みなさんも私がどういう人間かはご存じのことと思いますので。
私が監督として浦和レッズというチームを率いることは、本当に興味深い課題だと思っています。私が2006年に日本に来て仕事を始めたとき、浦和はリーグ優勝をし、その後2007年にアジアチャンピオンになった。そのとき私は他のチームから浦和というチームを見ていましたが、浦和が持っているポテンシャルは本当に大きいと感じましたし、素晴らしい状況だと感じていました。その後、昨シーズンまで、あまりうまくいっていない状況でしたが、計画した通りにいかないのもサッカーだと思います。
そして、私自身は、監督として2つの目標を持ってやりたいと思っています。
ここまでに至る間、選手、クラブで働いているスタッフ、そして応援してくれるファン・サポーターのみなさんは本当に厳しい時間を過ごしてきたと思います。
私が就任してまずやらなければいけないことは、選手がトレーニングする中でポジティブな雰囲気を作っていくことです。そしてこのクラブで働いている方にも、応援してくれているファン・サポーターのみなさんにもポジティブな雰囲気を持っていただきたい。ポジティブなものを持って我々は進めていくということ、私はそれを最初にやっていきたいと思っています。
厳しい時期、うまくいっていかなかった時期に対して、我々はやはりそこから学ばなければいけない。そして、学んだところから、我々は前を向いて進んでいかなければいけない。私は最初のトレーニングの日から選手の笑顔が見たいです。そして選手が自ら喜んでトレーニングに来るような、そういったものを持って来てほしい。やはりサッカーというものは自分自身が喜びをもってやらなければ、できないスポーツだと私は思っています。
2つ目に私がやらなければいけないことは、しっかりとしたチームを作り上げることです。チームとしていかにまとまって戦えるかという状況を作っていけるか。それを課題としてやりたい。第一にどの選手もチームのためにプレーしてほしいと思います。第二に、各選手が個人的な目標をそれぞれ持ってやってほしいと思っています。例えば代表に入る、あるいは記録だとか。でも、まずは選手一人一人が第一に考えてやってほしいことは、チームのために、チームが勝利するために戦うということ。そこを選手にしっかりやってほしい。これまで私が浦和を見てきたなかで感じたことは、浦和には個人の能力が高い選手がいる。しかしながら、私が先ほど言ったことと逆の選手がいたんじゃないかと感じます。やはりそれは逆でなければいけない。まずはチーム。そして、その後に自分の目標。それをしっかりと選手の意識の中に持ってやってほしいと思います。
言うのは簡単です。それを言葉の上で約束することも、簡単です。
ただ、私自身はこの我々のスタッフ、我々浦和の全員の力を集めれば、それは完全にできると感じています。必ず我々は安定した、しっかりとした土台を持ったチームというものを作れると私は感じています。我々はできるだけ早くファン・サポーターの信頼を取り戻していきたいとも感じています。私自身、基本的にトレーニングを非公開にすることはありません。私はファン・サポーターのみなさんに是非練習に足を運んで、見てもらって、我々がどういったことに日々取り組んでいるのか、どういった方向で仕事をしているのか、そういったことをご自身の目で見てもらいたいと思います。
我々にとって、決して簡単ではない、厳しい仕事になると感じています。ただ、監督として充分にそれをやりとげる能力があると私自身思っていますし、我々の力を合わせれば、必ずそれはやりとげられると思います。(日本語で)アリガト」
【質疑応答】
(チームとしてまとまってやっていくという話があったが、これまで2人の監督のもとで積み上げてきたもの、あるいはできなかったことがあるとしたらどういうことだと考えているか?)
「私は自分の同業であるどの監督さんもリスペクトしています。みなさん、それぞれ素晴らしい監督さんであると、私は感じています。それぞれの監督さんが自分のベストを尽くして頑張ってきたと思いますが、自分の仕事が結果として成功していくかどうかには、いろいろなことが関係しています。ラッキーやアンラッキー、あるいはレフェリーのジャッジ、いろいろなことが絡み合ってその仕事がうまくいくかどうかが決まってくると思います。それぞれの監督が、自分自身のサッカー哲学であったり、自分のやり方のトレーニングがあったと思います。私自身、アドバンテージがあるのは、6年、日本で仕事をしていますし、浦和というチームもある程度、知っています。そして日本という国のメンタリティーもこの6年で学ぶことができました。もちろんフィンケさん、ペトロヴィッチさんと、私の前に浦和で監督をされた方々は、日本に来てすぐにここで仕事をされて、なかなか難しい部分ももちろんあったと思います。私自身、外からですが、浦和を見たなかで思うことは、浦和にはしっかりとした個人の能力が高い選手がそろっているということです。その選手たちをいかにチーム戦術の中でうまくかみ合わせていけるか、チームとしていかに機能させていくか、そこを私はやりたいと思います」
(今の戦力を見て、戦術的にどういうサッカーをしようと考えていますか?)
「どのチームの監督も、バルセロナのようなサッカーができたらと思っているでしょう。それをやりたくない監督はいないと思います(笑)。ただ、それをやるというのはなかなか簡単なことではありません。私の指向するサッカーというのはすごく複雑です。私が考えるサッカーは、運動量が多く、走ることを求められます。そしてその中で考えながら走らなければいけない。次の状況を考えた上でのコンビネーション、そういったたくさんのことが複雑に絡み合う中でやっていかなければいけない。それをやっていくのはなかなか簡単な話ではありません。私自身も、私の選手たちも、そういったものを積み重ねて、よくなっていくためには、もちろんある程度の時間が必要だと感じています。先ほども言いましたが、浦和には、個人の能力が高い選手がいると思います。その個人の能力が高い選手たちをいかにチーム戦術の中に組み込んでいくか、それはすごく難しい課題ではあると思います。私自身、常にオプティミストとして考えてやってきましたが、できるだけ早く、そういったチーム戦術というものを浸透させていきたいと考えています。
そして、浦和というのは1試合に3万人、4万人、多いときには5万人も入るようなサポーターがたくさんいるクラブです。そのサポーターの皆さんは、ただ1試合に勝てば良いということを求めているとは私は思っていません。そういった方々に攻撃的で魅力あるサッカーというものを私は見せたいです。浦和のサッカー、と言われたときに、みなさんが、これが浦和のサッカーだ、とすぐにイメージできるような、そういうサッカーというものを私たちは作り上げていきたいし、そういったものを作り上げるために努力していきたいです。それをやり遂げるためには、日々、トレーニング、トレーニング、トレーニング。練習をすることが私はすごく重要なことであると思っています。
ただ、浦和というチーム、あるいは取り巻く環境が、すぐに結果を求めたり、すぐに良いサッカーというものを求めたり、そうされがちですが、ただ、我慢は必要です。それは我々も、見る側も含めて、我慢が必要です。監督として、そういった環境の中で仕事をしていかなくてはいけないのはもちろん厳しいですが、ただ、魔法はありません。魔法をかけて1日ですぐにそれができあがるということは、まずありません。サッカーというのは積み重ねることによってできあがっていくものです。浦和というチームが魅力あるサッカーをする、というのは、私は、我々に課せられた義務であると感じています。なぜなら浦和というのは日本でもっとも観客が多いクラブだからです。浦和というチームが魅力あるサッカーをするということは、我々がやらなければいけないことです」
(それを踏まえて、具体的な目標は?)
「可能であるならば、2週間ほど時間をいただいてもいいですか(笑)。私自身、選手たちとまだトレーニングをしていないですから。私自身、監督として多くのことを皆さんと約束することはありません。一人の人間として、また一人の監督として、常に上を目指して、優勝を夢見るということは誰もが思っていることだと思います。夢というのは横にいる社長もそうですし、強化部長も持っていると思います。ただ、我々が置かれている現実は、昨シーズン、15位で終わったということ。そして我々は今シーズンから再びチームというもの、ベースを築いていく、そういった段階です。そういう意味では我々にとって、大きな目標というのは今のところ夢であると言えます。そのあたりに関しては少し時間をいただきたいと思います。みなさんが何か批判をするということに関しては、十分に時間が残されていると思いますから(笑)」
橋本代表「私の方からもいいですか。今、目標という質問をいただいて、ミシャ監督の方から的確な回答をしてもらったと思っていますが、監督とは昨年の末からチームの状況や今までのことを踏まえてクラブがどう考えているかという話をさせてもらってきています。先ほども話がありましたが、リーグ戦で15位だったというのが正直な結果です。そういった中で新しい監督を迎えて、ともかく多くの人に喜んでいただいて、夢と希望を与えるようなチーム作りに向けて、もう一度再建のスタートに立つんだという思いでいます。日々の大原の練習でチームがどういうふうに進歩していくか、ということがある意味では大きな目標でもあるし、それをスタジアムでどう表現できるかということが大きな目標になるのではないかと思います。監督と同じ答えで申し訳ないですが、そういった話をしています」
(監督のオファーが来たときの気持ちを教えてください?)
「私自身正直な人間なので、そのときの気持ちを正直に話します。広島で過ごした時間というのは私にとって、そして私の家族にとって、本当に夢のような素晴らしい時間でした。その素晴らしい時間は、2006年から始まりました。その2006年のシーズンが終わったとき、浦和レッズがリーグ優勝した、そういう年でした。優勝した瞬間のシーンを、私はテレビで見ていました。そのとき私が感じたことというのは、日本でこれほどのことが起こるのか、ということでした。バイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリードが優勝したときのような、そんな雰囲気をテレビで見ることができました。そのときに私が思ったことは、私の夢はいつか浦和の監督になる、ということでした。山道さん(強化部長)が広島に来て私にオファーを出してくれたのですが、そのとき、山道さんが握手のために差し出した手を、片手でなく両手で包み込みました。これは本当の話です(笑)。2006年、リーグ優勝したときの写真というのを、選手はロッカールームに掲げて、常にそこを見てイメージして、日々の練習に取り組んでほしいと思っています」
(一次キャンプではどのようなことを目標に掲げますか?)
「どのチームもそうですが、最初は走ること、コンディションを中心にやっていきたいです。もちろんボールを使ったトレーニングとのコンビネーションでやっていこうと思っていますが、まず重点を置いてやることは、コンディションを上げていくということです。サッカーで大事なことはまず走るということだと思います。どの選手も走らなくてはいけません。その後に求められることは、どのように走るかということです。とにかく走り続けたとしても、何も効果的でない選手もいます。大切なことは、走るだけでなく、いかに走るかです。相手にとって危険なところに走る、そういったことが大切です。どこに走るか、どのように走るかということはやはり考えなければできないことです。走ろうと考えていても走らない選手もいます。考えないで走り回る選手はよくないし、考えるけれども走らない選手もよくない。常に走ること、そして考えること。頭と脚が常に両方機能していなくてはいけない。今日のサッカーをする上では、インテリジェンスというものがすごく求められます。試合の中でインテリジェントにできるかはすごく大切な要素です」
(選手に求めるもの、クラブに求めるものは?)
「私自身の考えにあるものは、名前でサッカーはできない、ということです。先ほども言いましたが、まずどの選手にも求めることはチームプレーに徹してもらうということです。1人の選手が試合を決定づける、私のチームにはそういう選手はいないと思います。チームで戦い、チームで勝ち、チームで負ける。それと選手にはインテリジェンスを求めたい。我々がやるサッカーというのは、ものすごく考えてやらなければできないものです。だからこそ、ピッチの上でゲームの中でのインテリジェンスというものも必要とされますし、それを選手にも求めたいです。
1つの状況において、1つのアイデア、1つの選択肢では足りない。1人の選手がその状況において、3つくらいアイデアを持ってプレーしてもらいたいです。横にいる社長、山道さん、そしてクラブのみなさんには本当に大きな支援を受けています。クラブの方から私にこうしてほしい、というマストのことは一度も言われたことはありません。お互いに話し合いの中で物事を進めることができています。もし我々が良い家を建てたかったら、土台となるものというのはすごく大事です。良い土台があれば、1階、2階、3階と建てられますし、土台がしっかりしていれば高い家を建てられます。土台がしっかりしていなければ高く積み上げたときにそれが倒れてしまいます。我々は土台というチームをしっかり作って、その上で一つ一つ、上に積み重ねていきたいです。私自身、そのようにクラブとも話をしています」
(昨年の広島の最終節では、ゴールを挙げるだびに選手が監督のもとへ抱きつきにきていた。監督それぞれに選手との距離の取り方があると思うが、ペトロヴィッチ監督が選手と接する上で大切にしていることは?)
「私自身もプレーしていましたし、いろいろな指導者の方を知っていますが、大体2つのタイプに分かれるのかなと感じています。1つのタイプは、上から物を言って規律で選手を縛って、それによって選手からのリスペクトを受けるというタイプ。もう1つのタイプが、自分のピッチでの仕事によって選手からのリスペクトを受ける。そういった2つのタイプの監督がいると思います。私は、選手が私から何かを学べる、この監督から何か学べるんだと思ってもらえるように、指導していきたいと思っています。私はトレーニングでは、非常にハードにトレーニングさせます。ですが、練習の前も後もサッカーのことであれば24時間常に選手のためにあると思ってますし、サッカーことだけでなくプライベートのことに関しても何か選手が話があるならば、いつでも私のところに来て話をしていいと、選手にオープンに接しています。そのように選手に対しては密な関係を考えています。
私は広島時代、(柏木)陽介には手を焼きました(笑)。何回かトレーニングから外してロッカールームに帰らせたことがあります。ただ、私はそういうふうに彼に厳しく接しましたが、それは彼にとって良いことであり、彼もそれは分かっていたと思います。陽介が3試合くらいスタメンで出た後、彼は少し自分がビッグプレーヤーになったように振舞った時期があって、トレーニングで私がこうした方がいいよと言っても、すべてその逆をするようなことがあり、そのときすごく厳しく接しました。その中で、彼は私から学んでくれたことがあったと思います。
サッカーというのは日々の仕事です。サッカー選手というのは、毎日毎日、自分はできるということを証明しなければいけない職業だと私は思っています。サッカーとは、とても厳しいものです。例えば3年連続でタイトルを取ったような監督さんでも、4連敗したら解雇になる、あるいはこの監督は駄目だと烙印を押されかねない。そういった厳しい仕事です。だからこそ、サッカーを職業とする人間は、選手も私も含めて、自分はできるんだと毎日証明していかなきゃいけない。サッカーというのは、過去には生きられないスポーツです」
(先ほどから「土台」という言葉が何度かでてきている。監督ご自身の責任ではないが、サポーターの中には「また今年も土台作りなのか」と感じるサポーターもいると思うが?)
「私の前に就任された監督さんも、しっかりとしたベースを作っていきたいと、こういう場で言ったのではないかと思うのですが、私自身それ以外に何を言っていいのか分からないので、どうコメントしていいか分からないです(苦笑)。ですが、私自身も現実というものは見つめていますので、浦和というクラブで働く以上、あまり時間がないということは理解しています。ただ、私が言えることは、ファン・サポーターのみなさんが我々がやっていることを見て、このチームは進んでいるということを見てくれればいいと思います。やはり、私自身練習を非公開にはしない方針なので、練習場で我々がやっていることをしっかりと見てほしい。そして、我々がどういう方向に進んでいるか、進んでいる方向が正しいかどうか、そういったことを確認してもらうことが、私がファン・サポーターのみなさんに言えることだと思います。
私が今、確信していることは、我々がこれまでとは違うサッカーをやるということ。そして、間違いなくサッカーでは負けることというのがあると思うのですが、その負けの中でもファン・サポーターのみなさんが納得できる、この内容で負けるなら仕方がないという、内容の良い負けという、みなさんに納得してもらえるようなものを、私は作れるんじゃないかなと思います。やはりサッカーですので、すべての試合で勝つことは不可能です。ただ、負けることがあったとしても、どういう負けなのかが大事になってくると思います。チームはたとえ負けることがあったとしても、チームが常にベストで戦うという姿勢を見せることは、我々にはできると思います。もちろん、そんなにたくさん負けては困りますが(笑)、ときどきそういうことになることもある思います」
(開幕戦の相手がサンフレッチェ広島となったが、何か思うところは?)
「サッカーというもの自体を考えれば、私は素晴らしいことだと思います。広島はやはり素晴らしいチームであると思っていますし、第1節までに浦和もやはり良いチームに作れると思っている。そして、その第1節での広島との対戦でたくさんの注目を集めて、お客さんも来る中で、興味深い試合ができると思います。そういう舞台があることは、私は素晴らしいことだと思います」
【浦和レッズオフィシャルメディア(URD:OM)】
会見には橋本光夫代表と山道守彦強化部長が同席し、最初に橋本代表が、昨年を「誇りあるクラブへ向かおうという歩みを停滞させてしまいました」と総括。「2012シーズンはクラブの信任回復とチームの再建、再生を目指します」と力強く宣言した。
続いて山道強化部長がミハイロ・ペトロヴィッチ監督就任の経緯を説明した。「若く経験が少ない選手が多い今のチームには、実績と経験があり、引き出しの多い監督に任せるしかないと思っていた」と語り、「確かに紆余曲折はありましたが」と前置きした上で「チームを変えるために必要な指揮官に任せたいということの答えがミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督です」と力強い口調で話した。
その後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督がにこやかに挨拶。サッカーやレッズに対する思い・考えなどを語ってから質疑応答、フォトセッションをこなし、約1時間の就任会見を終えた。なお、サンフレッチェ広島時代からコーチとして監督の通訳を務め、監督が絶大な信頼を寄せる杉浦大輔コーチが、引き続き、レッズでもコーチとして監督の通訳を務めることとなり、揃ってレッズのクラブスーツを着て会見に臨んだ。
ミハイロ・ペトロヴィッチ監督
「座って話してもよろしいですか?私、もう年ですので(笑)。少し日が経ちましたが、明けましておめでとうございます。みなさんの今年の健康を心から祈っています。
浦和レッドダイヤモンズの監督に就任できたことを本当に光栄に思っています。私の個人的な自己紹介については、省かせていただきたいと思います。なぜなら、私自身6年もうすでに日本で仕事をしてきたので、みなさんも私がどういう人間かはご存じのことと思いますので。
私が監督として浦和レッズというチームを率いることは、本当に興味深い課題だと思っています。私が2006年に日本に来て仕事を始めたとき、浦和はリーグ優勝をし、その後2007年にアジアチャンピオンになった。そのとき私は他のチームから浦和というチームを見ていましたが、浦和が持っているポテンシャルは本当に大きいと感じましたし、素晴らしい状況だと感じていました。その後、昨シーズンまで、あまりうまくいっていない状況でしたが、計画した通りにいかないのもサッカーだと思います。
そして、私自身は、監督として2つの目標を持ってやりたいと思っています。
ここまでに至る間、選手、クラブで働いているスタッフ、そして応援してくれるファン・サポーターのみなさんは本当に厳しい時間を過ごしてきたと思います。
私が就任してまずやらなければいけないことは、選手がトレーニングする中でポジティブな雰囲気を作っていくことです。そしてこのクラブで働いている方にも、応援してくれているファン・サポーターのみなさんにもポジティブな雰囲気を持っていただきたい。ポジティブなものを持って我々は進めていくということ、私はそれを最初にやっていきたいと思っています。
厳しい時期、うまくいっていかなかった時期に対して、我々はやはりそこから学ばなければいけない。そして、学んだところから、我々は前を向いて進んでいかなければいけない。私は最初のトレーニングの日から選手の笑顔が見たいです。そして選手が自ら喜んでトレーニングに来るような、そういったものを持って来てほしい。やはりサッカーというものは自分自身が喜びをもってやらなければ、できないスポーツだと私は思っています。
2つ目に私がやらなければいけないことは、しっかりとしたチームを作り上げることです。チームとしていかにまとまって戦えるかという状況を作っていけるか。それを課題としてやりたい。第一にどの選手もチームのためにプレーしてほしいと思います。第二に、各選手が個人的な目標をそれぞれ持ってやってほしいと思っています。例えば代表に入る、あるいは記録だとか。でも、まずは選手一人一人が第一に考えてやってほしいことは、チームのために、チームが勝利するために戦うということ。そこを選手にしっかりやってほしい。これまで私が浦和を見てきたなかで感じたことは、浦和には個人の能力が高い選手がいる。しかしながら、私が先ほど言ったことと逆の選手がいたんじゃないかと感じます。やはりそれは逆でなければいけない。まずはチーム。そして、その後に自分の目標。それをしっかりと選手の意識の中に持ってやってほしいと思います。
言うのは簡単です。それを言葉の上で約束することも、簡単です。
ただ、私自身はこの我々のスタッフ、我々浦和の全員の力を集めれば、それは完全にできると感じています。必ず我々は安定した、しっかりとした土台を持ったチームというものを作れると私は感じています。我々はできるだけ早くファン・サポーターの信頼を取り戻していきたいとも感じています。私自身、基本的にトレーニングを非公開にすることはありません。私はファン・サポーターのみなさんに是非練習に足を運んで、見てもらって、我々がどういったことに日々取り組んでいるのか、どういった方向で仕事をしているのか、そういったことをご自身の目で見てもらいたいと思います。
我々にとって、決して簡単ではない、厳しい仕事になると感じています。ただ、監督として充分にそれをやりとげる能力があると私自身思っていますし、我々の力を合わせれば、必ずそれはやりとげられると思います。(日本語で)アリガト」
【質疑応答】
(チームとしてまとまってやっていくという話があったが、これまで2人の監督のもとで積み上げてきたもの、あるいはできなかったことがあるとしたらどういうことだと考えているか?)
「私は自分の同業であるどの監督さんもリスペクトしています。みなさん、それぞれ素晴らしい監督さんであると、私は感じています。それぞれの監督さんが自分のベストを尽くして頑張ってきたと思いますが、自分の仕事が結果として成功していくかどうかには、いろいろなことが関係しています。ラッキーやアンラッキー、あるいはレフェリーのジャッジ、いろいろなことが絡み合ってその仕事がうまくいくかどうかが決まってくると思います。それぞれの監督が、自分自身のサッカー哲学であったり、自分のやり方のトレーニングがあったと思います。私自身、アドバンテージがあるのは、6年、日本で仕事をしていますし、浦和というチームもある程度、知っています。そして日本という国のメンタリティーもこの6年で学ぶことができました。もちろんフィンケさん、ペトロヴィッチさんと、私の前に浦和で監督をされた方々は、日本に来てすぐにここで仕事をされて、なかなか難しい部分ももちろんあったと思います。私自身、外からですが、浦和を見たなかで思うことは、浦和にはしっかりとした個人の能力が高い選手がそろっているということです。その選手たちをいかにチーム戦術の中でうまくかみ合わせていけるか、チームとしていかに機能させていくか、そこを私はやりたいと思います」
(今の戦力を見て、戦術的にどういうサッカーをしようと考えていますか?)
「どのチームの監督も、バルセロナのようなサッカーができたらと思っているでしょう。それをやりたくない監督はいないと思います(笑)。ただ、それをやるというのはなかなか簡単なことではありません。私の指向するサッカーというのはすごく複雑です。私が考えるサッカーは、運動量が多く、走ることを求められます。そしてその中で考えながら走らなければいけない。次の状況を考えた上でのコンビネーション、そういったたくさんのことが複雑に絡み合う中でやっていかなければいけない。それをやっていくのはなかなか簡単な話ではありません。私自身も、私の選手たちも、そういったものを積み重ねて、よくなっていくためには、もちろんある程度の時間が必要だと感じています。先ほども言いましたが、浦和には、個人の能力が高い選手がいると思います。その個人の能力が高い選手たちをいかにチーム戦術の中に組み込んでいくか、それはすごく難しい課題ではあると思います。私自身、常にオプティミストとして考えてやってきましたが、できるだけ早く、そういったチーム戦術というものを浸透させていきたいと考えています。
そして、浦和というのは1試合に3万人、4万人、多いときには5万人も入るようなサポーターがたくさんいるクラブです。そのサポーターの皆さんは、ただ1試合に勝てば良いということを求めているとは私は思っていません。そういった方々に攻撃的で魅力あるサッカーというものを私は見せたいです。浦和のサッカー、と言われたときに、みなさんが、これが浦和のサッカーだ、とすぐにイメージできるような、そういうサッカーというものを私たちは作り上げていきたいし、そういったものを作り上げるために努力していきたいです。それをやり遂げるためには、日々、トレーニング、トレーニング、トレーニング。練習をすることが私はすごく重要なことであると思っています。
ただ、浦和というチーム、あるいは取り巻く環境が、すぐに結果を求めたり、すぐに良いサッカーというものを求めたり、そうされがちですが、ただ、我慢は必要です。それは我々も、見る側も含めて、我慢が必要です。監督として、そういった環境の中で仕事をしていかなくてはいけないのはもちろん厳しいですが、ただ、魔法はありません。魔法をかけて1日ですぐにそれができあがるということは、まずありません。サッカーというのは積み重ねることによってできあがっていくものです。浦和というチームが魅力あるサッカーをする、というのは、私は、我々に課せられた義務であると感じています。なぜなら浦和というのは日本でもっとも観客が多いクラブだからです。浦和というチームが魅力あるサッカーをするということは、我々がやらなければいけないことです」
(それを踏まえて、具体的な目標は?)
「可能であるならば、2週間ほど時間をいただいてもいいですか(笑)。私自身、選手たちとまだトレーニングをしていないですから。私自身、監督として多くのことを皆さんと約束することはありません。一人の人間として、また一人の監督として、常に上を目指して、優勝を夢見るということは誰もが思っていることだと思います。夢というのは横にいる社長もそうですし、強化部長も持っていると思います。ただ、我々が置かれている現実は、昨シーズン、15位で終わったということ。そして我々は今シーズンから再びチームというもの、ベースを築いていく、そういった段階です。そういう意味では我々にとって、大きな目標というのは今のところ夢であると言えます。そのあたりに関しては少し時間をいただきたいと思います。みなさんが何か批判をするということに関しては、十分に時間が残されていると思いますから(笑)」
橋本代表「私の方からもいいですか。今、目標という質問をいただいて、ミシャ監督の方から的確な回答をしてもらったと思っていますが、監督とは昨年の末からチームの状況や今までのことを踏まえてクラブがどう考えているかという話をさせてもらってきています。先ほども話がありましたが、リーグ戦で15位だったというのが正直な結果です。そういった中で新しい監督を迎えて、ともかく多くの人に喜んでいただいて、夢と希望を与えるようなチーム作りに向けて、もう一度再建のスタートに立つんだという思いでいます。日々の大原の練習でチームがどういうふうに進歩していくか、ということがある意味では大きな目標でもあるし、それをスタジアムでどう表現できるかということが大きな目標になるのではないかと思います。監督と同じ答えで申し訳ないですが、そういった話をしています」
(監督のオファーが来たときの気持ちを教えてください?)
「私自身正直な人間なので、そのときの気持ちを正直に話します。広島で過ごした時間というのは私にとって、そして私の家族にとって、本当に夢のような素晴らしい時間でした。その素晴らしい時間は、2006年から始まりました。その2006年のシーズンが終わったとき、浦和レッズがリーグ優勝した、そういう年でした。優勝した瞬間のシーンを、私はテレビで見ていました。そのとき私が感じたことというのは、日本でこれほどのことが起こるのか、ということでした。バイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリードが優勝したときのような、そんな雰囲気をテレビで見ることができました。そのときに私が思ったことは、私の夢はいつか浦和の監督になる、ということでした。山道さん(強化部長)が広島に来て私にオファーを出してくれたのですが、そのとき、山道さんが握手のために差し出した手を、片手でなく両手で包み込みました。これは本当の話です(笑)。2006年、リーグ優勝したときの写真というのを、選手はロッカールームに掲げて、常にそこを見てイメージして、日々の練習に取り組んでほしいと思っています」
(一次キャンプではどのようなことを目標に掲げますか?)
「どのチームもそうですが、最初は走ること、コンディションを中心にやっていきたいです。もちろんボールを使ったトレーニングとのコンビネーションでやっていこうと思っていますが、まず重点を置いてやることは、コンディションを上げていくということです。サッカーで大事なことはまず走るということだと思います。どの選手も走らなくてはいけません。その後に求められることは、どのように走るかということです。とにかく走り続けたとしても、何も効果的でない選手もいます。大切なことは、走るだけでなく、いかに走るかです。相手にとって危険なところに走る、そういったことが大切です。どこに走るか、どのように走るかということはやはり考えなければできないことです。走ろうと考えていても走らない選手もいます。考えないで走り回る選手はよくないし、考えるけれども走らない選手もよくない。常に走ること、そして考えること。頭と脚が常に両方機能していなくてはいけない。今日のサッカーをする上では、インテリジェンスというものがすごく求められます。試合の中でインテリジェントにできるかはすごく大切な要素です」
(選手に求めるもの、クラブに求めるものは?)
「私自身の考えにあるものは、名前でサッカーはできない、ということです。先ほども言いましたが、まずどの選手にも求めることはチームプレーに徹してもらうということです。1人の選手が試合を決定づける、私のチームにはそういう選手はいないと思います。チームで戦い、チームで勝ち、チームで負ける。それと選手にはインテリジェンスを求めたい。我々がやるサッカーというのは、ものすごく考えてやらなければできないものです。だからこそ、ピッチの上でゲームの中でのインテリジェンスというものも必要とされますし、それを選手にも求めたいです。
1つの状況において、1つのアイデア、1つの選択肢では足りない。1人の選手がその状況において、3つくらいアイデアを持ってプレーしてもらいたいです。横にいる社長、山道さん、そしてクラブのみなさんには本当に大きな支援を受けています。クラブの方から私にこうしてほしい、というマストのことは一度も言われたことはありません。お互いに話し合いの中で物事を進めることができています。もし我々が良い家を建てたかったら、土台となるものというのはすごく大事です。良い土台があれば、1階、2階、3階と建てられますし、土台がしっかりしていれば高い家を建てられます。土台がしっかりしていなければ高く積み上げたときにそれが倒れてしまいます。我々は土台というチームをしっかり作って、その上で一つ一つ、上に積み重ねていきたいです。私自身、そのようにクラブとも話をしています」
(昨年の広島の最終節では、ゴールを挙げるだびに選手が監督のもとへ抱きつきにきていた。監督それぞれに選手との距離の取り方があると思うが、ペトロヴィッチ監督が選手と接する上で大切にしていることは?)
「私自身もプレーしていましたし、いろいろな指導者の方を知っていますが、大体2つのタイプに分かれるのかなと感じています。1つのタイプは、上から物を言って規律で選手を縛って、それによって選手からのリスペクトを受けるというタイプ。もう1つのタイプが、自分のピッチでの仕事によって選手からのリスペクトを受ける。そういった2つのタイプの監督がいると思います。私は、選手が私から何かを学べる、この監督から何か学べるんだと思ってもらえるように、指導していきたいと思っています。私はトレーニングでは、非常にハードにトレーニングさせます。ですが、練習の前も後もサッカーのことであれば24時間常に選手のためにあると思ってますし、サッカーことだけでなくプライベートのことに関しても何か選手が話があるならば、いつでも私のところに来て話をしていいと、選手にオープンに接しています。そのように選手に対しては密な関係を考えています。
私は広島時代、(柏木)陽介には手を焼きました(笑)。何回かトレーニングから外してロッカールームに帰らせたことがあります。ただ、私はそういうふうに彼に厳しく接しましたが、それは彼にとって良いことであり、彼もそれは分かっていたと思います。陽介が3試合くらいスタメンで出た後、彼は少し自分がビッグプレーヤーになったように振舞った時期があって、トレーニングで私がこうした方がいいよと言っても、すべてその逆をするようなことがあり、そのときすごく厳しく接しました。その中で、彼は私から学んでくれたことがあったと思います。
サッカーというのは日々の仕事です。サッカー選手というのは、毎日毎日、自分はできるということを証明しなければいけない職業だと私は思っています。サッカーとは、とても厳しいものです。例えば3年連続でタイトルを取ったような監督さんでも、4連敗したら解雇になる、あるいはこの監督は駄目だと烙印を押されかねない。そういった厳しい仕事です。だからこそ、サッカーを職業とする人間は、選手も私も含めて、自分はできるんだと毎日証明していかなきゃいけない。サッカーというのは、過去には生きられないスポーツです」
(先ほどから「土台」という言葉が何度かでてきている。監督ご自身の責任ではないが、サポーターの中には「また今年も土台作りなのか」と感じるサポーターもいると思うが?)
「私の前に就任された監督さんも、しっかりとしたベースを作っていきたいと、こういう場で言ったのではないかと思うのですが、私自身それ以外に何を言っていいのか分からないので、どうコメントしていいか分からないです(苦笑)。ですが、私自身も現実というものは見つめていますので、浦和というクラブで働く以上、あまり時間がないということは理解しています。ただ、私が言えることは、ファン・サポーターのみなさんが我々がやっていることを見て、このチームは進んでいるということを見てくれればいいと思います。やはり、私自身練習を非公開にはしない方針なので、練習場で我々がやっていることをしっかりと見てほしい。そして、我々がどういう方向に進んでいるか、進んでいる方向が正しいかどうか、そういったことを確認してもらうことが、私がファン・サポーターのみなさんに言えることだと思います。
私が今、確信していることは、我々がこれまでとは違うサッカーをやるということ。そして、間違いなくサッカーでは負けることというのがあると思うのですが、その負けの中でもファン・サポーターのみなさんが納得できる、この内容で負けるなら仕方がないという、内容の良い負けという、みなさんに納得してもらえるようなものを、私は作れるんじゃないかなと思います。やはりサッカーですので、すべての試合で勝つことは不可能です。ただ、負けることがあったとしても、どういう負けなのかが大事になってくると思います。チームはたとえ負けることがあったとしても、チームが常にベストで戦うという姿勢を見せることは、我々にはできると思います。もちろん、そんなにたくさん負けては困りますが(笑)、ときどきそういうことになることもある思います」
(開幕戦の相手がサンフレッチェ広島となったが、何か思うところは?)
「サッカーというもの自体を考えれば、私は素晴らしいことだと思います。広島はやはり素晴らしいチームであると思っていますし、第1節までに浦和もやはり良いチームに作れると思っている。そして、その第1節での広島との対戦でたくさんの注目を集めて、お客さんも来る中で、興味深い試合ができると思います。そういう舞台があることは、私は素晴らしいことだと思います」
【浦和レッズオフィシャルメディア(URD:OM)】