2008. 6.26 Vol.60 |
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「Talk on Together 2008
〜第2部 トークショー〜」 ▼進行:島崎英純氏 ▼出席者:ゲルト・エンゲルス監督 島崎氏:暑いですね。慣れないことをやっているので汗が噴き出しそうです。監督は緊張されていますか? エンゲルス監督:ピッチよりここの方が緊張しますね(笑)。 島崎氏:まず、浦和レッズは6月17日から22日まで、北海道の夕張市でキャンプをしてきましたが、現在のチーム状況についてはいかがでしょうか? エンゲルス監督:いいと思います。合宿は非常にうまくいきました。練習も多くできて、ほとんど2部練習でしたが、1対1とか、フィジカルの練習を多くして、もちろん戦術的なことも確かめました。ケガ人もほぼ戻って来ましたが、細貝はまだちょっとケガをしています。あと、土日からちょっと(田中)達也が腹痛をおこして、合宿中は非常に調子がよかったので、ちょっと心配ですね。次の試合は間に合うかどうか、今の時点では分かりません。 島崎氏:北海道でおいしいものを食べ過ぎたんじゃないですか? エンゲルス監督:いや、どうかな(笑)。先生に薬をもらって、飲んでいるところです。うまくいけば土曜日までに間に合うかもしれません。 島崎氏:田中達也ももちろんそうですが、ロブソン・ポンテ、それから三都主アレサンドロ、ケガをしていた選手が次々と復帰をして、チームに合流しているようですね。 エンゲルス監督:平川(忠亮)、ロビー(ポンテ)、アレックスとみんな練習参加しています。みんな今は別メニューでもリハビリメニューでもなくて、100%練習に参加できているので、当然土曜日の試合に出る可能性も高いと思います。3人とも試合勘はちょっと足りないけれど、みんな経験があるから、大丈夫だと思います。 島崎氏:28日にJリーグが再開しまして、相手は柏レイソル、場所は国立競技場です。国立競技場といえばレッズのホームでもありますよね。結構いい雰囲気でできるんじゃないですか? エンゲルス監督:公式にはアウェイですけど、ホームの雰囲気を期待しています(笑)。 島崎氏:それでは少し戦術的なことを聞いていきます。ただ、あまり深く掘り下げても対戦相手にスカウティングされてもいけませんから、あまり深くない範囲でおうかがいしたいのですが、まずファン・サポーターの方が一番気にしていると思うんですが、今季からレッズの一員になった高原ですが、現状の高原のコンディションはどのように評価されていますか? エンゲルス監督:今年はいろいろありました。いろいろあちこちのケガや痛みもあったし、代表にも行ったり、選ばれなかったりといろいろな問題がありましたけど、最近は少しずつ調子もよくなっています。コンディションについてはもうそんなに問題ないでしょう。コンディションとかスタミナとか、キレだとか、それよりも、チームの練習になかなか参加できなかったから、味方との連携プレーがまだまだよくなかったと思います。でも、みんなも知っているとおり代表にいかないで、みんなと一緒に練習できていましたから、連携についてもよくなってきたと思います。点取ってほしいですけどね(笑)。 島崎氏:そうなんですよね。みんなもそう思っていると思いますけど(笑)。ところで、高原と現在コンビを組んでいる選手、同じく新加入のエジミウソンですが、エンゲルス監督は高原とエジミウソンの互いのコンビネーションについては、現状ではどのように評価されていますか? エンゲルス監督:それも少しずつよくなっていますね。当然2人が同じ場所にいるとなかなかうまくいかないから、ロビーかウメ(梅崎)か誰かを含めてポジションチェンジをしながらプレーをしています。前は2人の距離が近過ぎたり、遠過ぎたりしましたけど、今はだいぶコンビネーションが取れるようになってきたから、これからもっと強いコンビになっていくと思います。 でも他のFWもいますからね。達也もいるし、いろんなオプションがあると思います。 島崎氏:現状では高原とエジミウソンが2トップのような形になっていますが、時々、高原が遠慮しているのか、下がり気味になっていたりしますが、これは別に監督の指示ではないですね? エンゲルス監督:遠慮はしないと思いますよ。エジ(エジミウソン)がいると、そこにはスペースがなくなるし、お互いがまだそれぞれいる場所を理解してないとか、そういうことだと思います。それは最近、合宿の中では間合いなんかも少しずつよくなっている感じがしますね。 島崎氏:ところで、先ほども言ったポンテやアレックスが復帰してきたら、中盤のレギュラー争いも厳しくなりますね。 ディフェンスの選手も堤が若いのにレギュラーを取って何試合も出場していますし、坪井だってこのまま黙っていないでアピールしてくるでしょう。セレクションが非常に難しくなるんじゃないですか? エンゲルス監督:確かに難しくなったけど、それはいいことだと思いますよ。ライバル心というのはすごく大切なもので、意識が高い選手がたくさんいるのはうれしいです。 島崎氏:そういう競争意識を持ち込むのもチーム強化の一つの方法だと思いますが、チームのモチベーションを高めるために監督自身が何かアプローチしていることはあるんですか? エンゲルス監督:いろいろなアプローチは当然ありますよ。やる気を出させるのにはいろいろな方法があります。でも、基本的に僕がプロの選手に期待することは、モチベーションがあるのは当たり前だということです。それが選手から感じられなかったら僕は不満ですよ。 でも例えば、ある試合に対してはいろいろなモチベーションを高める方法があります。例えば、たまに相手の選手のコメントを選手に説明したりします。相手が「闘莉王をしっかり抑えて」とか、それを選手に伝えると、選手はちょっと熱くなったりしますね。 島崎氏:僕の記憶だと横浜の選手が「ワシントンがなんとか」とか言ったことがありますよね(笑)。 エンゲルス監督:そういうこともありましたね。僕もよく覚えていますよ(笑)。そういう発言、ちょっとレッズを軽く見て、変なコメントをするようなものを見つけたら、すごくチームにやる気が出ると思いますね。 島崎氏:日本語的には「焚きつける」ということですよね。 エンゲルス監督:そうですね(笑)。 島崎氏:なるほど、そういう感じのやり方もあるんですね。エンゲルス監督は日本語が堪能ですから、そういう意味ではコミュニケーションが取りやすいと思いますけど? エンゲルス監督:選手と話ができるのはすごく大事ですね。 島崎氏:外国人の監督さんは通訳を通じてやらなければいけないことが多々あるわけですが、エンゲルス監督は日本語だけでなく、ドイツ語、英語もできるんですよね。私なんて日本語しかできないですからね。困ったものですね(笑)。しかし、そういう言葉ができるのは指導者としても非常に有利だと思いますけれども、その辺はどのように感じられていますか? エンゲルス監督:人の体質によっても違うと思うけど、コミュニケーションを取りたいと思ったらすごく大事ですね。外国人の監督でも、通訳を入れても無視した監督もいるし、日本語ができなきゃいけないわけじゃないですけど、僕は直接選手と話をするのが好きで、そういう話をするのが大事だと思っているから、日本語ができてよかったと思います。 島崎氏:一番コミュニケーションを取りたがる選手は誰ですか? エンゲルス監督:まあ(コミュニケーションを取るのが)恥ずかしい選手はいませんよ。若い選手が僕に直接声をかけることはあまりないですけど、でも逆にいえば、闘莉王はちょっと声をかけ過ぎですし(笑)、でも僕からきちんとアプローチをしたら、みんなコミュニケーションするし、僕はやっぱりコミュニケーションしたいと思います。話し合えばいろいろな問題がクリアできますし。 島崎氏:エンゲルス監督はドイツでも指導者経験がありますが、日本の高校の指導もされて、それからJリーグでも何チームかで指揮を執られていますが、監督としてサッカーチームを構築して指導をするにあたって、指針としているもの、哲学とか教えてください。 エンゲルス監督:さっきのモチベーションの話と一緒ですが、「自己管理」、「自己責任」が大事だと思いますね。選手は自分で考えて、自分でプレーするべきだと思います。言われていることだけじゃなくて、自分でもうまくなりたい、そういう選手が僕は好きです。僕が後ろを向いているときに、背後にいる選手たちが何もやらないというのはよくないことです。 僕は選手に責任を与えたい。選手がそれを分かると、見ていなくてもしっかりとやるようになります。選手はピッチ上では自分で判断しないといけません、動かなきゃいけません。人に言われてからやるということは、日本の高校では結構多かったと思いますね。だからもうちょっと自分で責任を持って、自分で判断して、自分で考えてほしいですね。そういう指導をしたいです。こっちから言われるんじゃなくて、自分からしてほしいと思います。 島崎氏:浦和レッズというチームは、Jリーグ創設以来ずっと最下位をさまよっていたチームだったんですけど、2002年ごろから変わってきましたよね?2003年には初めてナビスコカップのタイトルも取って、2004年の2ndステージはステージ優勝を果たしまして、そのときにはエンゲルス監督もコーチとしてチームにいたわけですが、「選手に責任を与える」ということは、レッズというチームに対して、ある程度のレベルで評価をされているからかなとも思います。つまり選手の力量、チームとしての力を、本当に評価されているからではないでしょうか?優勝争いできるというような。 エンゲルス監督:それはできるでしょう(笑)。我々の目標はタイトルです。あと三つ今年ありますから、チームもみんなが元気だったら戦力は整っていると思います。一つの大きい目標はJリーグ。特に去年取れなかったから今年はぜひ取りたいですね。 島崎氏:今、三つとおっしゃいましたけど、残念ながら、ナビスコカップは未勝利で終わってしまいました。それは私の個人的な意見では、浦和レッズは選手層が厚くなったおかげで、日本代表に選出されることが増えて、今年に関しては最初の時期に7人も取られてしまって、ナビスコカップには日本代表選手は出られないわけですから、その点もナビスコカップを戦う難しさだったと思いますが、監督ご自身ではどうでしたか? エンゲルス監督:それはどう見ても言い訳になってしまいますけど、当然僕は満足していません。次のラウンドまでいきたかったし、これも一つのタイトルですし。でもおっしゃった通り、いろんな問題がありました。僕が監督になって最初の2試合はナビスコカップでした。あのときはいろいろまだ修正しなければいけない状態でした。その試合を戦ったメンバーには十分力はあると思います。でも、代表選手を外したということもありますけど、戦ったメンバーも今まで試合に出ていなかったわけですからあまり試合勘がなかったですね。確かに新しくチームを作るしかない状態だったわけです。残念ながら決勝トーナメントまで残れなかったですけど、でも、試合を一つ一つ見ると、またちょっとイメージは変わると思います。 まず、神戸戦(3月20日)は、監督をやって最初の試合だったこともあって、チームは確かに勝ちたがっていました。でも早い時間に1点を取られてしまって、ずっと攻め続けたけど点が取れなくて0-1のまま終わってしまいました。 二つ目の試合は京都サンガとの3-3の試合(3月23日)。あの試合はシーズンで初めて点を取った試合で、エジミウソンが3点取りました。前半はすごくよかったのですが、後半は少し悪くなってしまいました。その他の試合も、内容的には決して悪くなかったと思います。僕が一番不満な試合は、最後の名古屋戦(6月8日)ですね。なぜかというと、その前の試合はいろいろなことがあったけど、選手たちはよく頑張っていました。勝たなければいけない試合もあったし、他の試合結果によって(決勝トーナメントに)いけたりいけなかったりという状況だったこともあるけど、みんな頑張ったと思います。でも、最後の名古屋戦で僕が一番期待していることは「ファイティングスピリット」でしたけれど、それがなかったと思います。あのときは確かに予選突破ができないことは決まっていましたけど、でも逆にスタジアムにも観客がたくさん入っていましたし、そういう姿勢ではダメだと思いました。 それで今回の合宿のときにも選手にちょっと説明をしました。それが合宿で、みんな必死になって練習した一つの理由だと思います。いつでもどこでも、練習試合でも思い切りやらなければいけません。 僕が外国人、ドイツ人ですからもう一つ言わせてもらうと、根本的な話をすると、メジャーな大会が四つあるのならば、組織的にはそれぞれの大会でベストメンバーを組めるようにしておかないといけないと思います。そうしたら言い訳もなくなりますし、みんな同じ条件で大会に入れますし、スポンサーについてもその方がいいと思いますけどね。 島崎氏:戦力はあるのに、それを削がれてしまうレギュレーションなのはおかしいですよね。おそらく合宿中にナビスコカップの責任について、何人かの選手は監督からお灸をすえられたというわけですね。それは28日にはきっと明らかになるんでしょうね(笑)。ナビスコカップの話はこれまでにしまして、私はファン・サポーターの方からの質問に沿って話を進めているわけですが、一番多かった質問があります。それは、まずエンゲルス監督が理想とするサッカースタイル、それとレッズらしいサッカーって何なんだろうという話でした。監督が思い描かれている「レッズらしい」サッカーというのはどんなサッカーなのでしょうか? エンゲルス監督:僕のスタイル、僕らしいサッカーというのは、僕が思うに、監督をやるときはまず、自分のスタイル、自分の好きなサッカーを意識してやるべきだと思います。でもそのチームのスタイルも意識するべきです。だから自分のスタイルと全然合わないサッカーをやるチームで監督をやっても、たぶんあまりよくないと思います。そういうことはヨーロッパでも何回もあったし、日本でも何回もありました。特に、外国からJリーグをあまり知らない監督が来て、そのチームのスタイルを知らなかった、あるいは無視して、自分のスタイルしかやりたくないということでは非常に難しいと思います。だから、自分のスタイルを意識しながら、もちろんチームのスタイルも守らないといけません。 それで、レッズのスタイルについてですが、ちょっと変わったと思います。僕も結構苦しめられましたけど(笑)、レッズに負けた試合も結構ありましたし、やっぱり早いカウンター攻撃が一つの大きい武器だったと思います。選手で言えば、例えばエメルソンに合わせるサッカーだったですね。そうした個人の力を生かすサッカーがよかったと思います。でもそのときはまだ優勝候補ではなかったと思います。 レッズは積極的なサッカーをやらなければいけないと思います。リアクションサッカーより、積極的なサッカーですね。でも、さっきのカウンターの話を繰り返しますと、何年か前、ギド(ブッフバルト元監督)の1年目ぐらいまでは、我々はカウンター攻撃もよくできたと思います。それで相手もレッズの強さをそろそろ分かるようになってきて、相手もレッズに対して気を付けるようになると、カウンターのシーンが少なくなりました。 でも、選手の力はカウンターをしなくても残っていますし、オフェンシブなサッカーも続けたいですし、当然相手のハーフ(陣内)でキープするサッカーもやりたいです。でも、無駄なパス、例えば横パスとかを減らして、早めに相手のハーフに行きたい、相手のペナルティーエリアに行く、そういうサッカーをしたいですね。 それから、メンタルの部分もすごく入っていると思います。内容の話は結構出てきますけど、ベースのところは勝負と結果にこだわるというところですね。 それと当然、サッカーはどう見てもランニングスポーツですから、立ったままではできませんから、どんどん追い越していかないといけない。それもレッズらしいところだと思いますね。 島崎氏:実は以前監督にインタビューをさせていただいたときに、すごく印象に残った言葉がありまして、監督が理想に思い描くサッカーは、いわゆる「縦のスイッチの早さ」、これを重要視しているとおっしゃっていましたが、つまり、守から攻、攻から守ですね、その切り替えを早くしたいということがうかがえるのですけれども、戦術もそうした趣旨になっているのですか? エンゲルス監督:それはすごく大事なことだと思いますね。切り替えを早くするというのは、すごく簡単に見えますが、それを自動的に早くできるというのは、「いいチーム」の一つの大切な武器だと思います。 島崎氏:ところで、今年の5月にUEFAチャンピオンズリーグで、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドと、チェルシーが決勝戦で対戦したわけですけれども、優勝したマンチェスター・ユナイテッドなどは、エンゲルス監督の思い描く「スイッチの早い」チームだと思いますが? エンゲルス監督:そういうことだと思います。 島崎氏:ただ、ちょっとお聞きしたいのは、マンチェスター・ユナイテッドも今のJリーグのレッズと同じように、プレミアリーグでいわゆる優勝争いをするチームですよね?でもあのチームは非常にカウンターも鋭いですけど、なぜマンチェスター・ユナイテッドはカウンターを繰り出せるんでしょうか? エンゲルス監督:スイッチが早いですから。マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーが決勝に残ったから、ドイツの雑誌もいろいろな記事を書きました。それで、マンチェスターだけじゃなくて、プレミアリーグのチームは、例えば、ちょっと残念ですけど、ドイツに比べると、一人一人がボールを触る時間が1.1秒で、ドイツの場合は1.9秒なんです。その1秒の違いはすごく大きいですね。 ですからマンチェスターの一つの武器は、DFがボールを触る時間が非常に短いんですね。奪ってからすぐにパスをするんです。ですからそれも今回の合宿のメニューの一つになりました。相手のボールを奪ってから最初のボールをすぐに回す、それができるようになったら強いチームでもカウンター攻撃ができるシーンが出てきます。 僕が今回、初めてチームに言ったことがあります。それは、我々には得点力があると思います。だが、これから増やさなければいけないゴールは、(相手からボールを)取ってからのゴールと、セットプレーからのゴールです。セットプレーは昔から比べるとちょっと多くなりました。でも、取ってからのゴールはまだ一つ二つしかありません。そういうゴールをもっともっと意識しないとダメだと思います。 島崎氏:攻撃的な面では、レッズの特徴は私自身の考えではやっぱりスピードだと思います。相手の研究にあって、なかなかカウンターを繰り出せなくなりますけれども、自らカウンターを仕掛けられる攻撃の形を作ることも大事ですよね。その面で言われていたと思います。 それともう一点、攻撃面もそうですが、一つ懸案なのは守備だと思います。これもスイッチに関係していると思いますが、相手のカウンターから失点している形も多いですよね?これに対しても合宿では指導されたんですね? エンゲルス監督:ゆっくりJリーグのゴールを分析すると、そんなにカウンターのゴールはないんです。それよりは最近はセットプレーでの失点の方が目立ちますね。でも、今のキーポイントはその「スイッチ」ということですね。守備から攻撃、攻撃から守備への切り替え、それと、取られ方も非常に大きいです。切り替えがどんなに早くても取られ方が悪かったらダメですし。攻撃を防ぐときのバランスが非常に大事です。みんな同じラインを引いているときに横のミスパスを取られると、相手のFWに一発でパスが通ってゴール前まで行かれたりします。 あとは取られたポイントですね。相手のハーフで取られた方がリスクは少ないですから。ですから、確実に早く相手のペナルティーエリアまで行くことが大事です。 サッカーはどんなところでもミスは起きます。大事なのはミスが起こったときの切り替えです。この場合のバランスも非常に大事です。 島崎氏:そういうことは、選手が自ら判断しないといけないですね。監督自身は選手に指導をされるでしょうけれども、ゲーム中は監督にいちいち聞きに行くわけにはいかないですからね。 エンゲルス監督:やりたいことは当然スタッフや僕が指導しないといけないですね。例えば目の前の選手が1対1で相手の選手を抜こうとしているのに、後ろの選手がクロスオーバーで追い越していこうとしたら、1対1の場面では確率は五分五分かもっと低いわけですから、後ろの選手がクロスオーバーしようとするのはあまりよくないです。前の選手がフリーで確実にボールをコントロールできているなら、クロスオーバーをするのは逆にいいことだと思いますけどね。 島崎氏:これは柏戦で面白い見方ができました。クロスオーバーした選手の顔を見てください。あ、しまったって顔をしているかどうかです(笑)。 エンゲルス監督:クロスオーバーするなとは言わないです。動いてほしいですから。やっぱり、頭を使って、次のステップ、次のステップを考えないといけないです。 島崎氏:まだ監督は就任されてから3ヵ月ほどしか経っていないわけですけれども、その思い描いているサッカーにどの程度近づいていると思われていますか? エンゲルス監督:うーん。難しい質問ですね。瞬間的には結構いいサッカーもできていますけど、逆にそんなに短い間にいいサッカーができるようになったらおかしいと思いますね。時間はかかると思いますけど、すごくいいサッカーをやる前にまず結果を出さないといけません。そういうこともすごく大事です。そうしているうちにまたレベルアップできると思います。ですからレベルアップしながらファイトをします。足りないところはファイトでやり直します。 例えば、1対1をやっている後ろの選手がクロスオーバーしようとしたら、その瞬間は判断が悪くても、次の瞬間にはカバーに帰らないといけないです。運動量を多くしないといけません。もしかしたらちょっと運動量はつらくなるかもしれません。でもサッカーは動くスポーツですから。 島崎氏:ムービングですね。ということで油断をしていたら、舞台の袖の方から激しい巻きが入っています(笑)。もう時間がありませんので、こんなところで終わるのはどうかとも思うのですが、最後になりますが、あと三つタイトルを取らないといけないわけですが、これからの戦いに対する意気込みを語っていただいて締めにしようかと思います。 エンゲルス監督:我々もタイトルを取りたいと思っています。まず普段の練習の時間を使って、レベルアップするというのは一つです。普段の練習の中から全力を出して、よくなるように頑張らないといけないと思います。でも、その前にやっぱり勝たないといけませんから、まだJリーグもありますし、アジアも待っていますし、天皇杯もあります。やっぱりステップ・バイ・ステップでレベルアップしていきたいです。でも、試合のときはレベルアップできませんから、その中では戦わないといけません。その試合の前の現在のレベルで、もし何かが足りなかったら、やっぱりファイトしないといけません。Jリーグでもプレミアリーグでも、そんなにいい選手がいないチームでもたまに勝つことがあります。その理由はほとんど「相手よりファイトした」ことです。戦術的なことより、相手よりファイトした、相手より頑張った、相手より1対1でうまくいった、そういうことです。 島崎氏:まずは28日の柏戦で、レッズの選手がファイトしてくれることですね。 エンゲルス監督:それは間違いありません。 島崎氏:期待しています。それから、一戦一戦レベルアップするチームを、ファン・サポーターの方々も見たいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。 エンゲルス監督:頑張ります。ありがとうございました。 閉会にあたって 白戸広報部長:ゲルト・エンゲルス監督、お忙しいところありがとうございました。勝利を追求し、最後まで対処し、そして走る、このようなエンゲルス監督が率いるサッカーを今年追求していきます。クラブは、ファン・サポーター・ホームタウンの方々が求めるようなクラブ作りのために、精いっぱい努力してまいります。 そして、本日提案のございました「オピニオンボックス」、「ご意見箱」、これにつきましては、手始めとして、来月までに設置することをお約束します。 本日のようなトーク・オン・トゥギャザーのような形になるかどうかは分かりませんが、これまで我々浦和レッズは、ファン・サポーターの方々とのコミュニケーションが不足しておりました。今後は、改善を図ってまいります。そして、年末には何とかいいお酒を飲み、喜べるように共に戦ってください。よろしくお願いします。 |
※掲載内容は、実際の発言の主旨を変えない範囲で、変更している箇所があります。 |
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