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FIFAクラブワールドカップ準々決勝直前!!【クラブ・レオン】チーム情報・勝利へのポイント
サウジアラビアで行われるFIFAクラブワールドカップ(FCWC)は浦和レッズにとって、3度目となる世界の舞台だ。5月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ファイナルでアジア王者となった浦和は2025年夏に予定される新フォーマットのFCWCにもエントリーしているが、従来の形式では今回が最後の大会となる。
浦和にとってアジア王者になることは常に大きな目標となってきたが、それは世界に挑戦できる機会を得ることでもある。そして、またこうして大きなチャンスが巡ってきたわけだ。FCWCというと、浦和に限らず日本のサッカーファンは欧州王者や南米王者との対戦を見てしまうが、実際は北中米カリブ海王者やアフリカ王者、オセアニア王者、そして開催国の優勝クラブも参加している。
UAEで行われた2017年大会、二度目のFCWCに挑んだ浦和は準々決勝で開催国のアルジャジーラに1-0で敗れて、欧州王者レアル・マドリードとの対戦は実現しなかった。今回は北中米カリブ海王者であるメキシコのクラブ・レオンが、準々決勝の相手となる。勝ち上がれば世界的な強豪であるマンチェスター・シティに挑めるが、まずは目の前のクラブ・レオンに勝利することに集中するべきだ。
「本当に初戦のことだけに集中しています。次の試合のことは終わってみないと分からないので、今はクラブ・レオンに向かっていきたい。強いと思いますし、自分の中では勝手にアルヒラルと戦うぐらい。みんなもそういうモチベーションでいると思う」
伊藤敦樹もそう語るクラブ・レオンについて紹介していきたい。
対戦チーム情報
メキシコのグアナフアト州レオンを拠点とするクラブ・レオンはエメラルドをクラブカラーとする強豪クラブで、メキシコリーグで8度の優勝を誇る。2022-23シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグ決勝で、北米MLSのロサンゼルスFCを破って、クラブ史上初めて北中米カリブ海王者となった。
国内では2023-24前期リーグのプレーオフ(メキシコでは”リギージャ”と呼ばれる)では準々決勝で惜しくもクラブ・アメリカに敗れたが、ホーム&アウェーの第二試合が12月3日にあり、そこから中11日で浦和戦ということになる。アルゼンチン人のニコラス ラルカモン監督は堅実な守備と縦に速い攻撃スタイルを構築しており、4-4-2と3-5-2など複数のシステムを使い分ける。
3-5-2の場合も守備のベースは5バックで、ゾーン気味に構えながらもボールサイドでは早めにボール保持者と周囲の選手をマークして、人ではめてボールを奪いに行くのが特長だ。組み立てはグラウンダーのパスが中心だが、あまり中盤でボールを握ることに重きをおかずに、縦パスをFWに当てて、手前に落としたボールを中盤の選手が受けて、ワンタッチやツータッチで外側を追い越す選手に通すなど、ダイナミックな攻撃が多い。
勝利している試合の傾向としてボール保持率が相手より低く、シュート数は上回るスタッツになっていることからも、そうしたスタイルが分かる。ウルグアイ代表FWフェデリコ ビニャスが第一のフィニッシャーだが、二列目にもパンチ力のあるシューターが揃っており、JリーグやACLとも違うタイミングでゴールを狙ってくるので、そこは西川周作を擁する浦和にとっても要注意だ。
FW フェデリコ ビニャス
メキシコ屈指の名門であるクラブ・アメリカで頭角を現し、今年夏に加入。夏まで主力だったFWが移籍した状況で、クラブ・レオンの新エースとしてゴールを量産し、ウルグアイ代表にも招集。今年11月のワールドカップ南米予選アルゼンチン戦でデビューを果たした。センターフォワードとしては特に長身ではないが、体幹が非常に強く、前向きな動き出しから、あらゆるラストパスを正確にコントロールして、左足の強烈なシュートを打ち込んでくる。欧州クラブからオファーの報道が絶えず、この大会をステップに飛躍していく可能性も。浦和としては活躍を阻止したいところだ。
DF ウィリアム テシージョ
南米の強豪国であるコロンビアを代表するセンターバックの一人であり、対人戦での強さと統率力を併せ持つ。2016年のリオ五輪ではOA(オーバーエイジ枠)として出場し、日本戦では同じくOAだった興梠慎三と熱いマッチアップを繰り広げた。世界の舞台での再戦は見どころの1つ。A代表としても本来なら出場するはずだった2018
FIFAワールドカップロシアで、怪我での欠場が無ければ、初戦でコロンビアに勝利をあげた日本の前に立ちはだかっていたかもしれない。ディフェンスとしての能力はもちろん、左足のフィード力が高く、プレッシャーを少しでも緩めてしまうと、一発でフェデリコ ビニャスに通してくるので要注意だ。
GK ロドルフォ コタ
メキシコ代表としてFIFAワールドカップ カタール2022のメンバーにも名を連ねた。ギジェルモ オチョア(現在イタリア・セリエAのサレルニターナに所属)というワールドクラスのGKの影に隠れてきたが、世界基準でもハイレベルなGKであることは間違いない。実は2018年にグアダラハラで北中米カリブ海王者に輝いたが、その夏にクラブ・レオンへ移籍。アジアからは鹿島アントラーズが参加した同年のFCWCに出場がかなわなかった経緯があり、5年越しでつかんだ大舞台となる。確かなシュートストップだけでなく、カバー範囲の広さが目に付く。浦和のGK西川周作にも通じる特長があり、二人の競演が試合を引き締め、勝負どころにもなるだろう。
浦和レッズ勝利のためのポイント・見どころ
FCWCのような大舞台での一発勝負というのは、最初に失点してしまうとゲームプランが非常に難しくなる。ただ、荻原拓也が「これまで積み上げてきたものをできるだけいい形で、堂々とプレーしたい。勿体無いって思うから。小さくなって、ミスを恐れてやっていてもしょうがない」と語るように、あまりに対策、対策となっても浦和の良さを発揮できない。そこのバランスワークはマチェイ スコルジャ監督が得意とするところでもあり、世界の舞台でも発揮してもらいたい。
J1リーグで最少失点の守備がベースになるが、跳ね返すだけでなく、いかに良い形でボールを奪って、相手のバランスが崩れているところを突けるかが鍵になる。クラブ・レオンも堅実な守備を強みとするが、攻撃になった時にあまり手数をかけない中でも、左右のサイドバック(3バックならウイングバック)が高い位置に上がったり、コロンビア人MFのオマール フェルナンデスなどが前に出ていく。それは浦和が攻撃に出るときも同じだが、リスクマネージメントにはやや甘さがある。攻守の切り替えの早さでは浦和が上回る可能性が高く、カウンターからのチャンスは作りやすいだろう。
特に右サイドバックのイバン モレノはかなり前がかりになる傾向が強く、流れに乗じてボールを持つと、中央のバイタルエリアにドリブルで侵入してくる分、クラブ・レオンにとっての右サイドは空きやすい。そうした状況で浦和がボールを奪い、素早く同サイドを狙って攻撃に出れば、相手ディフェンスは慌てて寄せてくるので、今後は中央にスペースが生じたりする。そうした”被カウンター”の対応のウィークポイントは突いていきたい。
浦和が注意したいのはどういう試合展開になっても、サウジアラビアの慣れない環境で、終盤に運動量がガクッと落ちる可能性がある。そこでオフェンシブなポジションにフレッシュな選手が入り、どんどん前に飛び出すシーンが増えると、最終ラインや中盤との距離が開きすぎて、オープンな展開になりすぎてしまうリスクもある。フレッシュな選手が積極的にゴールを狙うことは大事だが、バランスをコントロールしながら効果を出せるかどうか。そうした意味では中盤のコンダクターである岩尾 憲がキーマンになるが、誰か1人というより全体で共有しながら、むしろ相手側がバランスを崩すところを狙って行けるようにしたい。
横浜F・マリノスの宮市 亮選手から、世界で戦う浦和にエールのメッセージをいただいた。「Jリーグを代表して、アジアを代表して、戦って来てほしいと思います。みんなが注目していますし、頑張ってほしいと思います」と宮市選手。日頃ライバルの選手たちも、FCWCでの浦和の奮闘に期待しているはず。
そして、浦和が世界の舞台で輝けば輝くほど、いつかアジア王者になり、そこで戦いたいと多くの選手、Jリーグのサポーターが思うはず。もちろん出るからには健闘だけで満足する必要はない。相手がクラブ・レオンだろうが、マンチェスター・シティだろうが、世界一を目指して戦ってきてほしい。その経験がまた規模が拡大される2025年のFCWCにも繋がっていくはずだ。
文:河治良幸(サッカージャーナリスト)
浦和にとってアジア王者になることは常に大きな目標となってきたが、それは世界に挑戦できる機会を得ることでもある。そして、またこうして大きなチャンスが巡ってきたわけだ。FCWCというと、浦和に限らず日本のサッカーファンは欧州王者や南米王者との対戦を見てしまうが、実際は北中米カリブ海王者やアフリカ王者、オセアニア王者、そして開催国の優勝クラブも参加している。
UAEで行われた2017年大会、二度目のFCWCに挑んだ浦和は準々決勝で開催国のアルジャジーラに1-0で敗れて、欧州王者レアル・マドリードとの対戦は実現しなかった。今回は北中米カリブ海王者であるメキシコのクラブ・レオンが、準々決勝の相手となる。勝ち上がれば世界的な強豪であるマンチェスター・シティに挑めるが、まずは目の前のクラブ・レオンに勝利することに集中するべきだ。
「本当に初戦のことだけに集中しています。次の試合のことは終わってみないと分からないので、今はクラブ・レオンに向かっていきたい。強いと思いますし、自分の中では勝手にアルヒラルと戦うぐらい。みんなもそういうモチベーションでいると思う」
伊藤敦樹もそう語るクラブ・レオンについて紹介していきたい。
対戦チーム情報
クラブ・レオン(北中米カリブ海王者)
メキシコのグアナフアト州レオンを拠点とするクラブ・レオンはエメラルドをクラブカラーとする強豪クラブで、メキシコリーグで8度の優勝を誇る。2022-23シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグ決勝で、北米MLSのロサンゼルスFCを破って、クラブ史上初めて北中米カリブ海王者となった。
国内では2023-24前期リーグのプレーオフ(メキシコでは”リギージャ”と呼ばれる)では準々決勝で惜しくもクラブ・アメリカに敗れたが、ホーム&アウェーの第二試合が12月3日にあり、そこから中11日で浦和戦ということになる。アルゼンチン人のニコラス ラルカモン監督は堅実な守備と縦に速い攻撃スタイルを構築しており、4-4-2と3-5-2など複数のシステムを使い分ける。
3-5-2の場合も守備のベースは5バックで、ゾーン気味に構えながらもボールサイドでは早めにボール保持者と周囲の選手をマークして、人ではめてボールを奪いに行くのが特長だ。組み立てはグラウンダーのパスが中心だが、あまり中盤でボールを握ることに重きをおかずに、縦パスをFWに当てて、手前に落としたボールを中盤の選手が受けて、ワンタッチやツータッチで外側を追い越す選手に通すなど、ダイナミックな攻撃が多い。
勝利している試合の傾向としてボール保持率が相手より低く、シュート数は上回るスタッツになっていることからも、そうしたスタイルが分かる。ウルグアイ代表FWフェデリコ ビニャスが第一のフィニッシャーだが、二列目にもパンチ力のあるシューターが揃っており、JリーグやACLとも違うタイミングでゴールを狙ってくるので、そこは西川周作を擁する浦和にとっても要注意だ。
クラブ・レオン(メキシコ) FIFAクラブワールドカップ2023サウジアラビア 登録選手リスト
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選手情報
FW フェデリコ ビニャス
メキシコ屈指の名門であるクラブ・アメリカで頭角を現し、今年夏に加入。夏まで主力だったFWが移籍した状況で、クラブ・レオンの新エースとしてゴールを量産し、ウルグアイ代表にも招集。今年11月のワールドカップ南米予選アルゼンチン戦でデビューを果たした。センターフォワードとしては特に長身ではないが、体幹が非常に強く、前向きな動き出しから、あらゆるラストパスを正確にコントロールして、左足の強烈なシュートを打ち込んでくる。欧州クラブからオファーの報道が絶えず、この大会をステップに飛躍していく可能性も。浦和としては活躍を阻止したいところだ。
DF ウィリアム テシージョ
南米の強豪国であるコロンビアを代表するセンターバックの一人であり、対人戦での強さと統率力を併せ持つ。2016年のリオ五輪ではOA(オーバーエイジ枠)として出場し、日本戦では同じくOAだった興梠慎三と熱いマッチアップを繰り広げた。世界の舞台での再戦は見どころの1つ。A代表としても本来なら出場するはずだった2018
FIFAワールドカップロシアで、怪我での欠場が無ければ、初戦でコロンビアに勝利をあげた日本の前に立ちはだかっていたかもしれない。ディフェンスとしての能力はもちろん、左足のフィード力が高く、プレッシャーを少しでも緩めてしまうと、一発でフェデリコ ビニャスに通してくるので要注意だ。
GK ロドルフォ コタ
メキシコ代表としてFIFAワールドカップ カタール2022のメンバーにも名を連ねた。ギジェルモ オチョア(現在イタリア・セリエAのサレルニターナに所属)というワールドクラスのGKの影に隠れてきたが、世界基準でもハイレベルなGKであることは間違いない。実は2018年にグアダラハラで北中米カリブ海王者に輝いたが、その夏にクラブ・レオンへ移籍。アジアからは鹿島アントラーズが参加した同年のFCWCに出場がかなわなかった経緯があり、5年越しでつかんだ大舞台となる。確かなシュートストップだけでなく、カバー範囲の広さが目に付く。浦和のGK西川周作にも通じる特長があり、二人の競演が試合を引き締め、勝負どころにもなるだろう。
浦和レッズ勝利のためのポイント・見どころ
FCWCのような大舞台での一発勝負というのは、最初に失点してしまうとゲームプランが非常に難しくなる。ただ、荻原拓也が「これまで積み上げてきたものをできるだけいい形で、堂々とプレーしたい。勿体無いって思うから。小さくなって、ミスを恐れてやっていてもしょうがない」と語るように、あまりに対策、対策となっても浦和の良さを発揮できない。そこのバランスワークはマチェイ スコルジャ監督が得意とするところでもあり、世界の舞台でも発揮してもらいたい。
J1リーグで最少失点の守備がベースになるが、跳ね返すだけでなく、いかに良い形でボールを奪って、相手のバランスが崩れているところを突けるかが鍵になる。クラブ・レオンも堅実な守備を強みとするが、攻撃になった時にあまり手数をかけない中でも、左右のサイドバック(3バックならウイングバック)が高い位置に上がったり、コロンビア人MFのオマール フェルナンデスなどが前に出ていく。それは浦和が攻撃に出るときも同じだが、リスクマネージメントにはやや甘さがある。攻守の切り替えの早さでは浦和が上回る可能性が高く、カウンターからのチャンスは作りやすいだろう。
特に右サイドバックのイバン モレノはかなり前がかりになる傾向が強く、流れに乗じてボールを持つと、中央のバイタルエリアにドリブルで侵入してくる分、クラブ・レオンにとっての右サイドは空きやすい。そうした状況で浦和がボールを奪い、素早く同サイドを狙って攻撃に出れば、相手ディフェンスは慌てて寄せてくるので、今後は中央にスペースが生じたりする。そうした”被カウンター”の対応のウィークポイントは突いていきたい。
浦和が注意したいのはどういう試合展開になっても、サウジアラビアの慣れない環境で、終盤に運動量がガクッと落ちる可能性がある。そこでオフェンシブなポジションにフレッシュな選手が入り、どんどん前に飛び出すシーンが増えると、最終ラインや中盤との距離が開きすぎて、オープンな展開になりすぎてしまうリスクもある。フレッシュな選手が積極的にゴールを狙うことは大事だが、バランスをコントロールしながら効果を出せるかどうか。そうした意味では中盤のコンダクターである岩尾 憲がキーマンになるが、誰か1人というより全体で共有しながら、むしろ相手側がバランスを崩すところを狙って行けるようにしたい。
横浜F・マリノスの宮市 亮選手から、世界で戦う浦和にエールのメッセージをいただいた。「Jリーグを代表して、アジアを代表して、戦って来てほしいと思います。みんなが注目していますし、頑張ってほしいと思います」と宮市選手。日頃ライバルの選手たちも、FCWCでの浦和の奮闘に期待しているはず。
そして、浦和が世界の舞台で輝けば輝くほど、いつかアジア王者になり、そこで戦いたいと多くの選手、Jリーグのサポーターが思うはず。もちろん出るからには健闘だけで満足する必要はない。相手がクラブ・レオンだろうが、マンチェスター・シティだろうが、世界一を目指して戦ってきてほしい。その経験がまた規模が拡大される2025年のFCWCにも繋がっていくはずだ。
文:河治良幸(サッカージャーナリスト)