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FIFAクラブワールドカップ3位決定戦直前!!【アル・アハリFC】チーム情報・勝利へのポイント
FIFAクラブワールドカップ(FCWC)の準決勝で浦和レッズは欧州王者マンチェスター・シティFCに0-3で敗れ、ファイナル進出を逃した。
立ち上がりから勇敢に、前から守備に行ってマンチェスター・シティのビルドアップを苦しめたが、徐々に剥がされて、自陣で耐える時間が長くなって行く。そこからラインを押し上げようとした矢先に、裏返されるように中盤の守備が破られて、オウンゴールでの失点に繋がった。
後半立ち上がりの2失点目、さらに終盤の3失点目もゴール前の守備を崩された訳ではなく、高いラインでプレッシャーをかけようとした裏返しの失点だった。勝機だけを考えれば、ずっと自陣で守りを固めていたら、なんとか0-0で耐えて、終盤に得点をというプランもあったかもしれない。
しかし、浦和らしくミドルゾーンで守備をして、ボールを奪ってゴールに矢印を向けるという戦いを目指したからこそ、見えた世界トップとの差や課題というものがある。0-3になってもボルテージを下げない浦和ファン・サポーターの声に後押しされて、最後までゴールを奪いに行ったからこそ、近くて遠いゴールとの距離も感じ取れたことだろう。その明確な差を地道に埋めて行って、次に公式戦で成長を確かめられるのは新フォーマットでのFCWCが予定される2025年の夏だ。
しかし、浦和には今やるべきことが残されている。3位決定戦でアフリカ王者アル・アハリFCに勝利すること。もちろん3位と4位では賞金も違う。それもクラブにとっては大事だが、何より国際舞台での戦いを勝利で終えて、来シーズンにつなげること。そしてマチェイ スコルジャ監督にとって、浦和で最後の指揮になる。その後、浦和での第2章があるかどうかは先の楽しみにするとして、ドラマチックだったマチェイ監督との1年間を勝利で締めくくり、笑顔で終えるということも意味がある。
現役最後の試合となるホセ カンテはもちろん、すでに契約満了が伝えられるアレックス シャルクにとっても浦和でのラストゲームになるが、サッカーチームには必ず出会いと別れがある。この試合に勝っても負けても、オフを経て新チームでの活動はスタートするが、この3位決定戦に勝利して、世界に「URAWA」を響かせてもらいたい。
対戦チーム情報
「アル・アハリ」という名前のクラブは中東や北アフリカに数多く存在する。理由は「国家のクラブ」あるいは「国民のクラブ」という意味があるためだ。首都カイロをホームとする文字通り国民的なクラブで、実に43回のリーグタイトルを獲得しており、クラブのアフリカ王者を決めるCAFチャンピオンズリーグでも11度の優勝を誇っている。また2021年のFCWCでは3位に輝いている。
リストの通り、ほとんどがエジプト代表というのは連携面で強みだ。スイス人のマルセル コラー監督が率いるチームは攻撃も守備もコレクティブで、良い距離感の小気味よいパス回しで相手陣内にボールを運ぶが、最後は南アフリカ代表のFWタウなどが、前線の選手が個人能力を発揮して決め切るシーンが多い。1トップのカハラバを有効なターゲットマンとするが、アバウトなロングボールを当てるより、ボランチや高い位置まで持ち上がったセンターバックからのクサビを受けて、ウイングのパーシー タウやフセイン エルシャハトが前向きに仕掛けるシチュエーションを演出する。
FCWCの準々決勝では開催国のリーグ王者として参加したアル・イテハドに3-1の快勝。フランス代表FWカリム ベンゼマやMFエンゴロ カンテ、ブラジル代表MFファビーニョを擁するタレント軍団を組織力で寄せ付けなかった。しかし、準決勝では南米王者フルミネンセを相手に立ち上がりこそ勢いよく攻め込んだものの、徐々に思うようなパフォーマンスが出せくなり、相手の圧力と技術に押し切られて0-2負けを喫した。
3位決定戦は浦和より1日多く休養と準備ができている分、自分たちの本来の持ち味をより発揮してこようとするだろう。またコラー監督は一度に二枚替え、三枚替えをしてくることもあり、浦和としては要注意だ。
FW パーシー タウ
爆発的なスピードと左足のシュートで相手ゴールを脅かす。プレミアリーグのブライトンに所属していたこともあり、レンタルでベルギーリーグも経験。若き日には母国・南アフリカのマメロディ・サンダウンズでアフリカ王者となり、2016年のFCWCに参加。鹿島アントラーズ戦に出場したが、0-2で敗れている。南アフリカ代表の主力としても、しばしば重要なゴールを決めてきた。その一方で守備に献身的な選手だが、準決勝のフルミネンセ戦では自陣ボックス内のファウルで、相手に先制点となるPKを与えてしまった。切り替えて3位決定戦に臨んでくるはずだが、浦和の左サイドは常に注意しておきたい。
DF アリ マールル
チュニジア代表の経験豊富なサイドバックで、カタールW杯でフランス撃破を果たしたメンバーの一人。33歳だがハードワークをいとわない職人であり、守備で奮闘したかと思えば、タイミングの良い攻め上がりでシンプルに正確なクロスを上げてくる。シュート技術も非常に高く、母国の地元クラブであるスファクシアンに所属していた時代には1シーズン14ゴールで得点王に輝いたことも。アル・イテハド戦ではPKでゴールを決めたが、流れでもアル・アハリがボールを持つ側になり、浦和が自陣に構える時間帯では彼のミドルシュートにも要注意だ。
DF モハメド アブデルモネイム
強さと巧さを兼ね備えたセンターバック。エジプト代表の選手が大半を占めるメンバーの中にあっても、守護神のモハメド エルシェナウィなどと同じく、代表の主力に定着している北アフリカ屈指の守備的なタレントだ。カタールW杯の最終予選で、セネガルとの第一試合の前半で負傷交代してしまい、突破がかかる第二試合の欠場を強いられた。そしてエジプトはPK戦で本大会を逃すという辛い経験をしている。スピードもあり、サイドバックをこなすこともできる。クラブのアカデミー育ちであり、トップ昇格から二度の武者修行に出ているが、能力的には欧州のビッグリーグでも通用するはず。ここから象徴的な存在として残り続けるのか、欧州に挑戦の場を求めるのか注目される。
浦和レッズ勝利のためのポイント・見どころ
アル・アハリは4-3-3をベースとするが、変幻自在に可変するということはなく、マンチェスター・シティより前からハメやすいことは間違いない。浦和としても主導権を握るために、縦にコンパクトなブロックをある程度、高いエリアまで押し上げて、アル・アハリにプレッシャーをかけることが有効になる。
基本的にアル・アハリはシンプルに縦に速い攻撃を志向するが、中盤の3枚を経由する傾向が強い。ロングボールをアバウトに蹴ることをあまりやってこないし、もしFWのカハラバをめがけて蹴られてもアレクサンダー ショルツとマリウス ホイブラーテンなどのセンターバックが対応できる。ただし、左右のウイングに構えるタウとエルシャハトがワイドな位置で縦パスを受けると、一気にディフェンスを破りに来るのは注意したい。
またカウンターになると前の3人で攻め切るというより、左サイドバックのマールルなど、ボールを追い越すような鋭いランニングで攻撃人数をかけてくる。そこの対応は要注意だが、裏を返せば、もし浦和がうまくボールを引っかけたり、セカンドボールを拾えたら"カウンターのカウンター"でビッグチャンスが生まれるかもしれない。
浦和としてはミドルゾーンより高い位置で奪って、ショートカウンターで攻め切るのが理想だ。アル・アハリも守備の組織はしっかりしており、フルミネンセに対しても4-5-1のような形で構えていたが、攻守が切り替わる時はサイドが前がかりになっているので、その瞬間に攻めるエリアを共有して、ボールホルダーが孤立しない距離感で攻めて行きたい。
なかなか一本のパスで決定的なフィニッシュまで持ち込むことは難しいが、ドリブルで一枚縦に剥がすと、ボールサイドに人が寄ってファー側にスペースが生じやすい。そこで斜めのサイドチェンジパスを通すことができれば、反対側の選手から決定的なシーンが生まれるはずだ。ディフェンス陣も人に強いが、間に潜っていく動きの対応をそれほど得意としていない。ホセ カンテは頼りになるが、二列目の選手のフィニッシュワークが鍵を握りそうだ。
この3位決定戦を迎えるにあたり、浦和とアル・アハリの置かれた状況に大きな違いがある。それは浦和がこの試合でシーズンオフに入るのに対して、アル・アハリは年内にまだ試合を残している。彼らは中3日でエジプト・スーパー杯の準決勝を戦わなければいけないのだ。その意味では接戦になればなるほど、浦和の方がここにかけるモチベーションで勝るのではないか。
今年60試合目となる浦和だが、総力戦で出し切って、2023年のラストゲームを勝利で終えてもらいたい。そして"浦和ファミリー"が良いクリスマスを迎えられることを願っている。
文:河治良幸(サッカージャーナリスト)
立ち上がりから勇敢に、前から守備に行ってマンチェスター・シティのビルドアップを苦しめたが、徐々に剥がされて、自陣で耐える時間が長くなって行く。そこからラインを押し上げようとした矢先に、裏返されるように中盤の守備が破られて、オウンゴールでの失点に繋がった。
後半立ち上がりの2失点目、さらに終盤の3失点目もゴール前の守備を崩された訳ではなく、高いラインでプレッシャーをかけようとした裏返しの失点だった。勝機だけを考えれば、ずっと自陣で守りを固めていたら、なんとか0-0で耐えて、終盤に得点をというプランもあったかもしれない。
しかし、浦和らしくミドルゾーンで守備をして、ボールを奪ってゴールに矢印を向けるという戦いを目指したからこそ、見えた世界トップとの差や課題というものがある。0-3になってもボルテージを下げない浦和ファン・サポーターの声に後押しされて、最後までゴールを奪いに行ったからこそ、近くて遠いゴールとの距離も感じ取れたことだろう。その明確な差を地道に埋めて行って、次に公式戦で成長を確かめられるのは新フォーマットでのFCWCが予定される2025年の夏だ。
しかし、浦和には今やるべきことが残されている。3位決定戦でアフリカ王者アル・アハリFCに勝利すること。もちろん3位と4位では賞金も違う。それもクラブにとっては大事だが、何より国際舞台での戦いを勝利で終えて、来シーズンにつなげること。そしてマチェイ スコルジャ監督にとって、浦和で最後の指揮になる。その後、浦和での第2章があるかどうかは先の楽しみにするとして、ドラマチックだったマチェイ監督との1年間を勝利で締めくくり、笑顔で終えるということも意味がある。
現役最後の試合となるホセ カンテはもちろん、すでに契約満了が伝えられるアレックス シャルクにとっても浦和でのラストゲームになるが、サッカーチームには必ず出会いと別れがある。この試合に勝っても負けても、オフを経て新チームでの活動はスタートするが、この3位決定戦に勝利して、世界に「URAWA」を響かせてもらいたい。
対戦チーム情報
アル・アハリFC(アフリカ王者)
「アル・アハリ」という名前のクラブは中東や北アフリカに数多く存在する。理由は「国家のクラブ」あるいは「国民のクラブ」という意味があるためだ。首都カイロをホームとする文字通り国民的なクラブで、実に43回のリーグタイトルを獲得しており、クラブのアフリカ王者を決めるCAFチャンピオンズリーグでも11度の優勝を誇っている。また2021年のFCWCでは3位に輝いている。
リストの通り、ほとんどがエジプト代表というのは連携面で強みだ。スイス人のマルセル コラー監督が率いるチームは攻撃も守備もコレクティブで、良い距離感の小気味よいパス回しで相手陣内にボールを運ぶが、最後は南アフリカ代表のFWタウなどが、前線の選手が個人能力を発揮して決め切るシーンが多い。1トップのカハラバを有効なターゲットマンとするが、アバウトなロングボールを当てるより、ボランチや高い位置まで持ち上がったセンターバックからのクサビを受けて、ウイングのパーシー タウやフセイン エルシャハトが前向きに仕掛けるシチュエーションを演出する。
FCWCの準々決勝では開催国のリーグ王者として参加したアル・イテハドに3-1の快勝。フランス代表FWカリム ベンゼマやMFエンゴロ カンテ、ブラジル代表MFファビーニョを擁するタレント軍団を組織力で寄せ付けなかった。しかし、準決勝では南米王者フルミネンセを相手に立ち上がりこそ勢いよく攻め込んだものの、徐々に思うようなパフォーマンスが出せくなり、相手の圧力と技術に押し切られて0-2負けを喫した。
3位決定戦は浦和より1日多く休養と準備ができている分、自分たちの本来の持ち味をより発揮してこようとするだろう。またコラー監督は一度に二枚替え、三枚替えをしてくることもあり、浦和としては要注意だ。
アル・アハリFC(エジプト) FIFAクラブワールドカップ サウジアラビア2023 登録選手リスト
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選手情報
FW パーシー タウ
爆発的なスピードと左足のシュートで相手ゴールを脅かす。プレミアリーグのブライトンに所属していたこともあり、レンタルでベルギーリーグも経験。若き日には母国・南アフリカのマメロディ・サンダウンズでアフリカ王者となり、2016年のFCWCに参加。鹿島アントラーズ戦に出場したが、0-2で敗れている。南アフリカ代表の主力としても、しばしば重要なゴールを決めてきた。その一方で守備に献身的な選手だが、準決勝のフルミネンセ戦では自陣ボックス内のファウルで、相手に先制点となるPKを与えてしまった。切り替えて3位決定戦に臨んでくるはずだが、浦和の左サイドは常に注意しておきたい。
DF アリ マールル
チュニジア代表の経験豊富なサイドバックで、カタールW杯でフランス撃破を果たしたメンバーの一人。33歳だがハードワークをいとわない職人であり、守備で奮闘したかと思えば、タイミングの良い攻め上がりでシンプルに正確なクロスを上げてくる。シュート技術も非常に高く、母国の地元クラブであるスファクシアンに所属していた時代には1シーズン14ゴールで得点王に輝いたことも。アル・イテハド戦ではPKでゴールを決めたが、流れでもアル・アハリがボールを持つ側になり、浦和が自陣に構える時間帯では彼のミドルシュートにも要注意だ。
DF モハメド アブデルモネイム
強さと巧さを兼ね備えたセンターバック。エジプト代表の選手が大半を占めるメンバーの中にあっても、守護神のモハメド エルシェナウィなどと同じく、代表の主力に定着している北アフリカ屈指の守備的なタレントだ。カタールW杯の最終予選で、セネガルとの第一試合の前半で負傷交代してしまい、突破がかかる第二試合の欠場を強いられた。そしてエジプトはPK戦で本大会を逃すという辛い経験をしている。スピードもあり、サイドバックをこなすこともできる。クラブのアカデミー育ちであり、トップ昇格から二度の武者修行に出ているが、能力的には欧州のビッグリーグでも通用するはず。ここから象徴的な存在として残り続けるのか、欧州に挑戦の場を求めるのか注目される。
浦和レッズ勝利のためのポイント・見どころ
アル・アハリは4-3-3をベースとするが、変幻自在に可変するということはなく、マンチェスター・シティより前からハメやすいことは間違いない。浦和としても主導権を握るために、縦にコンパクトなブロックをある程度、高いエリアまで押し上げて、アル・アハリにプレッシャーをかけることが有効になる。
基本的にアル・アハリはシンプルに縦に速い攻撃を志向するが、中盤の3枚を経由する傾向が強い。ロングボールをアバウトに蹴ることをあまりやってこないし、もしFWのカハラバをめがけて蹴られてもアレクサンダー ショルツとマリウス ホイブラーテンなどのセンターバックが対応できる。ただし、左右のウイングに構えるタウとエルシャハトがワイドな位置で縦パスを受けると、一気にディフェンスを破りに来るのは注意したい。
またカウンターになると前の3人で攻め切るというより、左サイドバックのマールルなど、ボールを追い越すような鋭いランニングで攻撃人数をかけてくる。そこの対応は要注意だが、裏を返せば、もし浦和がうまくボールを引っかけたり、セカンドボールを拾えたら"カウンターのカウンター"でビッグチャンスが生まれるかもしれない。
浦和としてはミドルゾーンより高い位置で奪って、ショートカウンターで攻め切るのが理想だ。アル・アハリも守備の組織はしっかりしており、フルミネンセに対しても4-5-1のような形で構えていたが、攻守が切り替わる時はサイドが前がかりになっているので、その瞬間に攻めるエリアを共有して、ボールホルダーが孤立しない距離感で攻めて行きたい。
なかなか一本のパスで決定的なフィニッシュまで持ち込むことは難しいが、ドリブルで一枚縦に剥がすと、ボールサイドに人が寄ってファー側にスペースが生じやすい。そこで斜めのサイドチェンジパスを通すことができれば、反対側の選手から決定的なシーンが生まれるはずだ。ディフェンス陣も人に強いが、間に潜っていく動きの対応をそれほど得意としていない。ホセ カンテは頼りになるが、二列目の選手のフィニッシュワークが鍵を握りそうだ。
この3位決定戦を迎えるにあたり、浦和とアル・アハリの置かれた状況に大きな違いがある。それは浦和がこの試合でシーズンオフに入るのに対して、アル・アハリは年内にまだ試合を残している。彼らは中3日でエジプト・スーパー杯の準決勝を戦わなければいけないのだ。その意味では接戦になればなるほど、浦和の方がここにかけるモチベーションで勝るのではないか。
今年60試合目となる浦和だが、総力戦で出し切って、2023年のラストゲームを勝利で終えてもらいたい。そして"浦和ファミリー"が良いクリスマスを迎えられることを願っている。
文:河治良幸(サッカージャーナリスト)