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ファン・サポーターのみなさまへ「2024シーズンの振り返りと2025シーズンに向けて」
日ごろより浦和レッズへ熱いサポートをいただき、誠にありがとうございます。
今シーズンは、天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会 4回戦における試合運営管理規程違反事案の発生に伴い、同大会への出場資格を失ったことを厳粛に受け止め、競技運営本部の設立を始めとし、クラブ全体で改過自新して臨んだシーズンでした。
そして、単年度に止まらず常に優勝を狙えるポジションに位置し続けるチーム作りをクラブとして目指すなか、2006シーズン以来18シーズンぶりのリーグタイトル獲得を明確な目標に定め、その実現に向けたオフシーズンの選手、スタッフ補強、トレーニングルームやチームミーティングルームへの設備投資等、「リーグ優勝のためにできることは全てやる」という信念をもってクラブ全体で準備に臨み、開幕を迎えました。
しかしながらそうした準備が実を結ぶことなく、プレーの面でファン・サポーターのみなさまのご期待に沿う結果、内容をお届けできなかったことに加え、プレー以外の面におきましても、監督や強化責任者の交代、主力選手の退団、またそれに伴う複数回に渡るキャプテンの交代など、ご不安やご不満を抱かせてしまう事象が数多く発生いたしました。
ファン・サポーターのみなさまに、クラブとして実現を目指す「強くて魅力あるチーム」や、その明確な実現過程をお見せできなかったことを、ここにお詫び申し上げます。
言わずもがな、ファン・サポーターのみなさまが、チームやそれを支えるべき立場にあるクラブのパフォーマンスが良いときも悪いときも、変わらずに選手、チームにお気持ちを添えてくださることは決して当たり前ではありません。良いことも悪いことも、ファン・サポーターのみなさまと共有させていただきながら前を向き、そして常に改善を加えながら歩を進めていくことはその前提であり、選手、チームスタッフ、クラブスタッフ全員の責務であると認識しております。
シーズンを通じて実践できたこと、できなかったこと。
そしてそれらの事象はなぜ生じ、どう改善を図り、これからどのような姿を目指すのかという点に触れながら、浦和レッズの一員であり、また浦和レッズの最大の理解者でいていただきたいファン・サポーターのみなさまへ向けて、2024シーズンの振り返りを以下にお伝えさせていただきます。
2024シーズン振り返り
2024シーズンは、上述の通り天皇杯の出場権を失い、また前年にAFCチャンピオンズリーグの出場権を獲得できなかったことから、出場大会がJ1リーグとYBCルヴァンカップの2大会に限られたシーズンとなりました。
またそれに伴い、2023シーズンには過去最多となる60試合を数えた公式戦が、YBCルヴァンカップの試合数こそ勝敗により増減するものの、大幅に減る(結果的に40試合となりました)ことが予め決まっていたシーズンでした。そのため、疲労回復とコンディション調整に追われた前年とは大きく異なり、戦略的にトレーニングスケジュールを組むことのできるシーズンになることを前提に、質、量共に高い水準のトレーニングを行うことによって、チーム作りと勝ち点の積み上げに並行して取り組んでいくことが可能と考え、J1リーグでの優勝を目標としました。
しかしながら、J1リーグでは開幕以降一度も優勝争いに加わることができなかっただけでなく、一時はJ2リーグ降格圏とも獲得勝ち点が接近するなどして13位(12勝12引き分け14敗)という成績に終わり、YBCルヴァンカップにおいても1stラウンド3回戦での敗退となりました。
2024シーズンにおけるチーム強化の大方針は、「2023シーズンに構築した強固な守備に、攻撃面での改善を上乗せする」というものでした。
フットボールにおいて守備と攻撃は不可分であり、機械的に「2023シーズンの守備+2024シーズンの攻撃」という組み合わせを実現することができないことを理解しつつ、それを実現することが、単年度に止まらず常に優勝を狙えるポジションに位置し続けるチーム作り、更には2025シーズンに開催されるFIFAクラブワールドカップという大会において、世界の強豪クラブと伍して闘うことのできるチーム作りに繋がると考え、またトレーニングスケジュールが改善されるこのタイミングこそが、この難易度の高いチャレンジを行う上で最善のタイミングであると判断し、こうした方針を定めました。
この方針に基づき、攻撃の改善、具体的には、「守備を疎かにすることなく得点力を向上させる」というコンセプトで合意した、ペア マティアス ヘグモ氏を新監督に招聘いたしました。
同氏は「トレーニングの文化」という言葉を多用していた通り、日々負荷の高いトレーニングメニューを用いながら、若手、ベテランを問わず全ての選手に対して100%以上の知力、体力をもってトレーニングに取り組むことを求めました。その精神姿勢は決して否定すべきものではなく、またクラブ全体で取り組んだものでしたが、弊害として負傷離脱者や慢性的な肉体疲労を抱えた選手を多く抱えることとなり、チーム全体としてのコンディション調整を思うように行えないという状況に陥りました。
またこうした理由からメンバーを固定して闘うことができなかったことにより、闘い方の積み上げを図れないままに試合数を重ねることとなり、得点と失点が同時に増え勝ち点が停滞するという、2023シーズンの守備と2024シーズンの攻撃とがトレードオフの関係性になっているような状態から抜け出せなかったことが成績不振の大きな要因となりました。
また、そうした状態にあるチームをサポートするべきフットボール本部においても、チームの強化・編成責任者の交代という体制変更がシーズン途中に行われたことにより、選手やチームスタッフに動揺を与えるなど、十分なサポートができなかったと考えております。新体制下で臨んだ、夏のウインドーを始めとしたシーズン中のチーム編成においても、重要な役割を担っていた主力選手が複数名退団したことに対し、シーズン途中で加入した選手が十分な出場機会を得られないなど効果的な補強が行えず、このことが成績不振のもう一つの要因になったと考えております。
これら2つの主要課題に対し、シーズン途中に監督交代とフットボール本部の強化を行いました。
監督交代について
「2023シーズンに構築した強固な守備に攻撃面での改善を上乗せする」という方針を継続し、2023シーズンの監督でもあり、高いチームマネジメントスキルを所持しているマチェイ スコルジャ氏を、当該方針に基づいたチーム作りを実現できる可能性が最も高い監督であると評価し、複数の候補者の中から後任監督として招聘いたしました。
なお、同氏は離任後も浦和レッズの情報を追い続けており、研究熱心な性格も相まって、昨シーズン在籍していなかった選手も含め、相応のチーム、選手情報を把握し続けていたことも、フットボール本部の目指す成長の方向性継続と、成長速度の上昇を実現する上で最適な人物であると判断した一つの理由となりました。
フットボール本部の強化について
4月に着任した堀之内 聖スポーツダイレクターをサポートするスタッフが複数名加入しており、国内外を問わずネットワークの充実を図ることができています。チームコンセプトに基づいて積み上げてきたものを活かすという継続と、思うようにことが進まなかったときにリセットするのではなく、戻るべきところへ戻り、そこから再び積み上げを図るという継続を、堀之内SDを中心とした複数のスタッフがワンチームとなり実践しております。
また昨今の移籍市場は非常に動きが早く、状況は刻一刻と変化しています。フットボール本部がそうした市場の変化に合わせて迅速且つ柔軟に対応できる体制であり続けられますよう、選手のみならず強化担当スタッフのスカウティングも欠かさず行っており、現スタッフの成長、深化と併せ、変化を恐れず組織としての成長、深化を目指し続けてまいります。
以下、フットボール本部のコンセプトであります「チーム」、「個」、「姿勢」に沿いまして、より細かな振り返りをさせていただきます。
コンセプトベースの振り返り
・チーム:攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレー
「2023シーズンに構築した強固な守備に攻撃面での改善を上乗せする」という方針に基づき、シーズン開幕前の沖縄キャンプではハイプレスのトレーニングに多くの時間を割きました。ハイプレスを活かし、より高い位置でボールを奪うという攻撃的な守備の構築と、攻撃時にボールを奪われた場合にも即座に奪い返し、二度三度と攻撃に繋げるべくネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)の速度上昇にも注力しました。
6月30日(日)に行われたJ1リーグ第21節ジュビロ磐田戦における3得点目など、これらの取り組みを試合の中で表現できた場面もありましたが、一試合を通じてそうした場面を繰り返し表現できた試合はなく、反面、ハイプレスの機会を増やすために敷いたハイラインの背後を突かれる形での失点を重ねたことで、多くの勝ち点を失いました。
また勝ち点が伸び悩んだことによって、失点することへの恐怖心が必要水準以上に高まり、チーム全体の重心が下がってしまうという負の連鎖が生まれました。それによってハイプレスとハイラインの良質な連動が難しくなり、間延びする、或いは前線の選手の多くがディフェンスラインに吸収されるなどしてセカンドボールの回収率が下がるなど、本来志向するプレーエリアよりも後方でプレーせざるを得ない時間帯が長くなってしまいました。
9月21日(土)に行われたJ1リーグ第31節FC東京戦は、マチェイ スコルジャ監督が指揮を執った試合の中で唯一、複数得点差での敗戦となりましたが、同試合における2失点は、オウンゴールとハンドによるPKからの失点であり、直接的な事象としては事故的な失点と言い得るものでした。しかしながら、その伏線にはそうした課題が関与しており、決して事故として処理してはならない失点であると考えています。また同様に、11月10日(日)に行われたJ1リーグ第36節サンフレッチェ広島戦につきましても、スコアこそ3-0というものでしたが、試合開始直後から前半の大半の時間で自陣ゾーン1(ディフェンシブサード)内でのプレーを強いられました。実力の拮抗したJ1リーグにおいては特に、試合の中で劣勢になる時間自体を無くすことの難易度は高いものの、当然ながらそうした時間が長くなればその分、失点のリスクは高まり、その中に事故的な失点が含まれる可能性も比例して上がってしまいます。したがって、いかにあの様な時間を短くするか、或いはそうした時間帯においてもプレーエリアをゾーン2(ミドルサード)に近づけられるよう、いかにして押し返すかということが、失点リスクを抑えるだけでなく、ボールを奪った後のポジティブトランジション(守備から攻撃への切り替え)の改善、つまり攻守に切れ目のないプレーの実現に必要であると考えています。来シーズンに向けては、攻守両面におけるトランジションの質と量の改善が必須であると考えており、そのためのトレーニングに注力してまいります。
一方、同広島戦にはその他の重要な要素も含まれていました。
後半開始からの約10分間、ハイプレスから主導権を握り、攻撃時にボールを奪われても即座に奪い返す場面が多く見られ、攻守両面におけるトランジションが高水準で機能していました。また非常にコンパクトな陣形で試合を進めることができ、2得点目の場面も含め、ペナルティエリア内に複数の選手が入る場面を多く作り出せていただけでなく、各選手の矢印が前方を向く時間が続きました。両チーム間にコンディションの差があったことや、同時間帯に生み出した決定機の多くを得点に繋げられなかった事実も含め、手放しに肯定的な評価をすることは決してできませんが、あのような姿をより長い時間、そしてシーズンを通じてお見せすることを私たちは引き続き目指してまいります。
・個:個の能力の最大限発揮
チームに関わる全員が個の能力を高めることに注力し続け、その能力を最大限に発揮することがチーム強化に繋がる、という考えは普遍的なものです。それ故に、選手に限らない、チームに関わる全員の成長をフットボール本部としてサポートしてまいりました。一例を挙げますと、今シーズンから個の成長にフォーカスしたIDP(Individual Development Plan)への取り組みを開始し、昨シーズン、或いは今シーズン開幕当初には出場機会を得られていなかった選手たちがポジション争いに加わるなどの成長が見られました。
しかしながら一方で、夏のウインドーで複数の主力選手がチームを離れ、またシーズン途中で効果的な補強を行えなかったことによりチーム内での競争が薄れてしまい、能力の拮抗した選手たちが適正な緊張感の中で切磋琢磨しながら成長していくという環境を、年間を通じて維持することができませんでした。このことは、フットボール本部としての大きな反省材料であると考えております。
選手・スタッフ個人に対する課題定義や、その解決サポート等の直接的な働きかけは勿論のこと、成長速度の上昇を促進する環境の維持、改善にも取り組みながらいかにチームとして機能させ、そして勝利に繋げていくかということは、フットボール本部が普遍的に取り組むべき課題であり、その課題と引き続き誠実に向き合ってまいります。
・姿勢:前向き、攻撃的、情熱的なプレー
選手たちは全ての試合において全力でプレーしました。しかしながら前向き、攻撃的、情熱的なプレーを通じて「最後まで走り、闘い、貫く」という姿勢を、誰の目から見ても十分に表現できたと言える試合は決して多くなかったと感じております。このことにつきましては、ホーム、アウェイを問わず声や手拍子でチーム、選手に大きな力を与えてくださったファン・サポーターのみなさまや、スタジアムに足をお運びになられていなくとも、浦和レッズを気に掛けてくださったみなさまに対して、ご期待に沿う結果、内容をお届けできなかったことと同様、もしくはそれ以上に申し訳なく存じております。
浦和レッズに思いを寄せてくださっている方々によって形成されるスタジアム内外での、有形無形を問わない環境や空気感はあまりにも特別なものであり、また選手やクラブがどれだけ強く願ったとしても、或いはどれだけの時間やお金を投じたとしても、決して自分たちだけでは作り出すことのできないものです。
そうした特別な環境や空気感を与えられた者が、フットボールという、相手が存在するスポーツにおいて勝利を確約することはできずとも、勝利を必死に目指して闘う姿をお見せすることは、相手の存在に関わらずできることです。
上述の通り、勝ち点が伸び悩んだことによって、失点することへの恐怖心が必要水準以上に高まった結果、特に失点後などの場面において、チームは適正なリバウンドメンタリティを発揮することができませんでした。また夏以降に守備の改善を施し、数字上の成果も出た反面、意識の面で前向き、攻撃的な姿勢が弱まってしまったことも否定できません。そうした競技面での現象が選手、チームスタッフの心理面に影響を及ぼしていることも事実ではありますが、それでもなお、浦和レッズに思いを寄せてくださっている方々に対して示すべき姿勢について、チームに関わる全員が同じベクトルと高い解像度で理解し、その理解に基づいた行動を実践していく必要があると強く感じております。そのための中長期的な方策を、クラブとして今一度再考し、早急に着手してまいります。
2025シーズンへ向けて
チーム作りにおいて、攻守両面の強化が急務だと考えております。
攻撃面においては、ゴールやアシストといった勝利に直結するプレーに加え、高い位置からの攻撃的な守備を高い水準で実行できる選手の獲得を目指します。併せて、ドリブル等「個」の力で局面を打開できる能力を持った選手の獲得が、コンセプトに沿った攻撃を実現するために必要だと考えております。
また守備面においては、ディフェンスラインの統率に加え、チーム全体を鼓舞できる強いリーダーシップを持ち、プレーにおいても文字通り「壁」となるような、存在感を発揮できる選手がチームにとって必要であり、そうした選手の獲得を2025シーズンに向けた選手補強における重要なテーマに置いています。
私たち浦和レッズが目指すフットボールのスタイルは、2025シーズンも決して変わることはありません。
攻守両面において数的、質的、位置的な優位性を作り出し、組織的且つ積極的に主導権を握りながらゴールを目指す。そして、ボールを失っても即座に攻撃的な守備を行い、ボール奪取から二度三度と攻撃を畳みかけるというスタイルの実現を引き続き追求いたします。
これらを実践するためには、上述の通り、攻守両面におけるトランジションの質と量の改善が必須であり、選手たちには高い献身性が求められます。
そしてその献身性は、選手自身の理解、努力、自覚にのみ委ねるのではなく、チームスタッフによる技術、精神両面の適正なマネジメント、そしてクラブスタッフによるチームスタッフへの適正なマネジメントを通じて向上させることのできる余地が、まだ残っていると認識しております。
浦和レッズの選手理念に謳う「サッカーを極め、勝利を追求する」という項目は、決して選手だけの責務ではなく、「チームのために」「クラブのために」という思いを一にしたALL REDSがワンチームとなって実践するものです。
そうした認識のもと、選手、監督、チームスタッフ等の入れ替わりにかかわらず、コンセプトに基づいて積み上げてきたものを活かしていくという継続と、思うようにことが進まなかったときにリセットするのではなく、戻るべきところへ戻り、そこから再び積み上げを図るという継続を、引き続きクラブ主導で進めてまいります。
最後に
2024シーズン、浦和レッズのホームゲームには延べ712,852人の方がご来場くださり、浦和駒場スタジアムでの開催試合を含めた全ホームゲームの平均ご来場者数は37,519人となりました。
これらの記録には反映されない、アウェイゲームやDAZN等を通じてお気持ちを寄せてくださったみなさまも含めまして、シーズンを通じて大変多くのみなさまがチーム、選手を勇気づけ、そして共に闘ってくださいましたことに、改めまして深く御礼を申し上げます。
年間ご来場者数が70万人を超えるのは2009シーズン以来15シーズンぶり5度目のことであり、また平均ご来場者数37,519人は、年間勝ち点1位を記録した2016シーズンの記録を上回ります。
私たち浦和レッズは、ここに列記させていただいた記録を数字ではなく人、そしてお一人お一人がチーム、選手にかけてくださったご期待と理解しております。
そして、それだけ多くのみなさまお一人お一人のご期待に応えられなかったことを、大変申し訳なく存じております。
浦和レッズにお気持ちを寄せてくださるみなさまが、選手、チーム、クラブに対してご期待いただいていることを見誤ることなく、そしてそのご期待に応えたいという野心を強く胸に抱きながら、引き続きクラブ運営を誠実に行ってまいります。
今シーズンも最後まで熱いサポートをいただき、誠にありがとうございました。
引き続き、2025シーズンも熱いサポートをどうぞ宜しくお願い申し上げます。
浦和レッドダイヤモンズ
今シーズンは、天皇杯 JFA 第103回全日本サッカー選手権大会 4回戦における試合運営管理規程違反事案の発生に伴い、同大会への出場資格を失ったことを厳粛に受け止め、競技運営本部の設立を始めとし、クラブ全体で改過自新して臨んだシーズンでした。
そして、単年度に止まらず常に優勝を狙えるポジションに位置し続けるチーム作りをクラブとして目指すなか、2006シーズン以来18シーズンぶりのリーグタイトル獲得を明確な目標に定め、その実現に向けたオフシーズンの選手、スタッフ補強、トレーニングルームやチームミーティングルームへの設備投資等、「リーグ優勝のためにできることは全てやる」という信念をもってクラブ全体で準備に臨み、開幕を迎えました。
しかしながらそうした準備が実を結ぶことなく、プレーの面でファン・サポーターのみなさまのご期待に沿う結果、内容をお届けできなかったことに加え、プレー以外の面におきましても、監督や強化責任者の交代、主力選手の退団、またそれに伴う複数回に渡るキャプテンの交代など、ご不安やご不満を抱かせてしまう事象が数多く発生いたしました。
ファン・サポーターのみなさまに、クラブとして実現を目指す「強くて魅力あるチーム」や、その明確な実現過程をお見せできなかったことを、ここにお詫び申し上げます。
言わずもがな、ファン・サポーターのみなさまが、チームやそれを支えるべき立場にあるクラブのパフォーマンスが良いときも悪いときも、変わらずに選手、チームにお気持ちを添えてくださることは決して当たり前ではありません。良いことも悪いことも、ファン・サポーターのみなさまと共有させていただきながら前を向き、そして常に改善を加えながら歩を進めていくことはその前提であり、選手、チームスタッフ、クラブスタッフ全員の責務であると認識しております。
シーズンを通じて実践できたこと、できなかったこと。
そしてそれらの事象はなぜ生じ、どう改善を図り、これからどのような姿を目指すのかという点に触れながら、浦和レッズの一員であり、また浦和レッズの最大の理解者でいていただきたいファン・サポーターのみなさまへ向けて、2024シーズンの振り返りを以下にお伝えさせていただきます。
2024シーズン振り返り
2024シーズンは、上述の通り天皇杯の出場権を失い、また前年にAFCチャンピオンズリーグの出場権を獲得できなかったことから、出場大会がJ1リーグとYBCルヴァンカップの2大会に限られたシーズンとなりました。
またそれに伴い、2023シーズンには過去最多となる60試合を数えた公式戦が、YBCルヴァンカップの試合数こそ勝敗により増減するものの、大幅に減る(結果的に40試合となりました)ことが予め決まっていたシーズンでした。そのため、疲労回復とコンディション調整に追われた前年とは大きく異なり、戦略的にトレーニングスケジュールを組むことのできるシーズンになることを前提に、質、量共に高い水準のトレーニングを行うことによって、チーム作りと勝ち点の積み上げに並行して取り組んでいくことが可能と考え、J1リーグでの優勝を目標としました。
しかしながら、J1リーグでは開幕以降一度も優勝争いに加わることができなかっただけでなく、一時はJ2リーグ降格圏とも獲得勝ち点が接近するなどして13位(12勝12引き分け14敗)という成績に終わり、YBCルヴァンカップにおいても1stラウンド3回戦での敗退となりました。
2024シーズンにおけるチーム強化の大方針は、「2023シーズンに構築した強固な守備に、攻撃面での改善を上乗せする」というものでした。
フットボールにおいて守備と攻撃は不可分であり、機械的に「2023シーズンの守備+2024シーズンの攻撃」という組み合わせを実現することができないことを理解しつつ、それを実現することが、単年度に止まらず常に優勝を狙えるポジションに位置し続けるチーム作り、更には2025シーズンに開催されるFIFAクラブワールドカップという大会において、世界の強豪クラブと伍して闘うことのできるチーム作りに繋がると考え、またトレーニングスケジュールが改善されるこのタイミングこそが、この難易度の高いチャレンジを行う上で最善のタイミングであると判断し、こうした方針を定めました。
この方針に基づき、攻撃の改善、具体的には、「守備を疎かにすることなく得点力を向上させる」というコンセプトで合意した、ペア マティアス ヘグモ氏を新監督に招聘いたしました。
同氏は「トレーニングの文化」という言葉を多用していた通り、日々負荷の高いトレーニングメニューを用いながら、若手、ベテランを問わず全ての選手に対して100%以上の知力、体力をもってトレーニングに取り組むことを求めました。その精神姿勢は決して否定すべきものではなく、またクラブ全体で取り組んだものでしたが、弊害として負傷離脱者や慢性的な肉体疲労を抱えた選手を多く抱えることとなり、チーム全体としてのコンディション調整を思うように行えないという状況に陥りました。
またこうした理由からメンバーを固定して闘うことができなかったことにより、闘い方の積み上げを図れないままに試合数を重ねることとなり、得点と失点が同時に増え勝ち点が停滞するという、2023シーズンの守備と2024シーズンの攻撃とがトレードオフの関係性になっているような状態から抜け出せなかったことが成績不振の大きな要因となりました。
また、そうした状態にあるチームをサポートするべきフットボール本部においても、チームの強化・編成責任者の交代という体制変更がシーズン途中に行われたことにより、選手やチームスタッフに動揺を与えるなど、十分なサポートができなかったと考えております。新体制下で臨んだ、夏のウインドーを始めとしたシーズン中のチーム編成においても、重要な役割を担っていた主力選手が複数名退団したことに対し、シーズン途中で加入した選手が十分な出場機会を得られないなど効果的な補強が行えず、このことが成績不振のもう一つの要因になったと考えております。
これら2つの主要課題に対し、シーズン途中に監督交代とフットボール本部の強化を行いました。
監督交代について
「2023シーズンに構築した強固な守備に攻撃面での改善を上乗せする」という方針を継続し、2023シーズンの監督でもあり、高いチームマネジメントスキルを所持しているマチェイ スコルジャ氏を、当該方針に基づいたチーム作りを実現できる可能性が最も高い監督であると評価し、複数の候補者の中から後任監督として招聘いたしました。
なお、同氏は離任後も浦和レッズの情報を追い続けており、研究熱心な性格も相まって、昨シーズン在籍していなかった選手も含め、相応のチーム、選手情報を把握し続けていたことも、フットボール本部の目指す成長の方向性継続と、成長速度の上昇を実現する上で最適な人物であると判断した一つの理由となりました。
フットボール本部の強化について
4月に着任した堀之内 聖スポーツダイレクターをサポートするスタッフが複数名加入しており、国内外を問わずネットワークの充実を図ることができています。チームコンセプトに基づいて積み上げてきたものを活かすという継続と、思うようにことが進まなかったときにリセットするのではなく、戻るべきところへ戻り、そこから再び積み上げを図るという継続を、堀之内SDを中心とした複数のスタッフがワンチームとなり実践しております。
また昨今の移籍市場は非常に動きが早く、状況は刻一刻と変化しています。フットボール本部がそうした市場の変化に合わせて迅速且つ柔軟に対応できる体制であり続けられますよう、選手のみならず強化担当スタッフのスカウティングも欠かさず行っており、現スタッフの成長、深化と併せ、変化を恐れず組織としての成長、深化を目指し続けてまいります。
以下、フットボール本部のコンセプトであります「チーム」、「個」、「姿勢」に沿いまして、より細かな振り返りをさせていただきます。
コンセプトベースの振り返り
・チーム:攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレー
「2023シーズンに構築した強固な守備に攻撃面での改善を上乗せする」という方針に基づき、シーズン開幕前の沖縄キャンプではハイプレスのトレーニングに多くの時間を割きました。ハイプレスを活かし、より高い位置でボールを奪うという攻撃的な守備の構築と、攻撃時にボールを奪われた場合にも即座に奪い返し、二度三度と攻撃に繋げるべくネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)の速度上昇にも注力しました。
6月30日(日)に行われたJ1リーグ第21節ジュビロ磐田戦における3得点目など、これらの取り組みを試合の中で表現できた場面もありましたが、一試合を通じてそうした場面を繰り返し表現できた試合はなく、反面、ハイプレスの機会を増やすために敷いたハイラインの背後を突かれる形での失点を重ねたことで、多くの勝ち点を失いました。
また勝ち点が伸び悩んだことによって、失点することへの恐怖心が必要水準以上に高まり、チーム全体の重心が下がってしまうという負の連鎖が生まれました。それによってハイプレスとハイラインの良質な連動が難しくなり、間延びする、或いは前線の選手の多くがディフェンスラインに吸収されるなどしてセカンドボールの回収率が下がるなど、本来志向するプレーエリアよりも後方でプレーせざるを得ない時間帯が長くなってしまいました。
9月21日(土)に行われたJ1リーグ第31節FC東京戦は、マチェイ スコルジャ監督が指揮を執った試合の中で唯一、複数得点差での敗戦となりましたが、同試合における2失点は、オウンゴールとハンドによるPKからの失点であり、直接的な事象としては事故的な失点と言い得るものでした。しかしながら、その伏線にはそうした課題が関与しており、決して事故として処理してはならない失点であると考えています。また同様に、11月10日(日)に行われたJ1リーグ第36節サンフレッチェ広島戦につきましても、スコアこそ3-0というものでしたが、試合開始直後から前半の大半の時間で自陣ゾーン1(ディフェンシブサード)内でのプレーを強いられました。実力の拮抗したJ1リーグにおいては特に、試合の中で劣勢になる時間自体を無くすことの難易度は高いものの、当然ながらそうした時間が長くなればその分、失点のリスクは高まり、その中に事故的な失点が含まれる可能性も比例して上がってしまいます。したがって、いかにあの様な時間を短くするか、或いはそうした時間帯においてもプレーエリアをゾーン2(ミドルサード)に近づけられるよう、いかにして押し返すかということが、失点リスクを抑えるだけでなく、ボールを奪った後のポジティブトランジション(守備から攻撃への切り替え)の改善、つまり攻守に切れ目のないプレーの実現に必要であると考えています。来シーズンに向けては、攻守両面におけるトランジションの質と量の改善が必須であると考えており、そのためのトレーニングに注力してまいります。
一方、同広島戦にはその他の重要な要素も含まれていました。
後半開始からの約10分間、ハイプレスから主導権を握り、攻撃時にボールを奪われても即座に奪い返す場面が多く見られ、攻守両面におけるトランジションが高水準で機能していました。また非常にコンパクトな陣形で試合を進めることができ、2得点目の場面も含め、ペナルティエリア内に複数の選手が入る場面を多く作り出せていただけでなく、各選手の矢印が前方を向く時間が続きました。両チーム間にコンディションの差があったことや、同時間帯に生み出した決定機の多くを得点に繋げられなかった事実も含め、手放しに肯定的な評価をすることは決してできませんが、あのような姿をより長い時間、そしてシーズンを通じてお見せすることを私たちは引き続き目指してまいります。
・個:個の能力の最大限発揮
チームに関わる全員が個の能力を高めることに注力し続け、その能力を最大限に発揮することがチーム強化に繋がる、という考えは普遍的なものです。それ故に、選手に限らない、チームに関わる全員の成長をフットボール本部としてサポートしてまいりました。一例を挙げますと、今シーズンから個の成長にフォーカスしたIDP(Individual Development Plan)への取り組みを開始し、昨シーズン、或いは今シーズン開幕当初には出場機会を得られていなかった選手たちがポジション争いに加わるなどの成長が見られました。
しかしながら一方で、夏のウインドーで複数の主力選手がチームを離れ、またシーズン途中で効果的な補強を行えなかったことによりチーム内での競争が薄れてしまい、能力の拮抗した選手たちが適正な緊張感の中で切磋琢磨しながら成長していくという環境を、年間を通じて維持することができませんでした。このことは、フットボール本部としての大きな反省材料であると考えております。
選手・スタッフ個人に対する課題定義や、その解決サポート等の直接的な働きかけは勿論のこと、成長速度の上昇を促進する環境の維持、改善にも取り組みながらいかにチームとして機能させ、そして勝利に繋げていくかということは、フットボール本部が普遍的に取り組むべき課題であり、その課題と引き続き誠実に向き合ってまいります。
・姿勢:前向き、攻撃的、情熱的なプレー
選手たちは全ての試合において全力でプレーしました。しかしながら前向き、攻撃的、情熱的なプレーを通じて「最後まで走り、闘い、貫く」という姿勢を、誰の目から見ても十分に表現できたと言える試合は決して多くなかったと感じております。このことにつきましては、ホーム、アウェイを問わず声や手拍子でチーム、選手に大きな力を与えてくださったファン・サポーターのみなさまや、スタジアムに足をお運びになられていなくとも、浦和レッズを気に掛けてくださったみなさまに対して、ご期待に沿う結果、内容をお届けできなかったことと同様、もしくはそれ以上に申し訳なく存じております。
浦和レッズに思いを寄せてくださっている方々によって形成されるスタジアム内外での、有形無形を問わない環境や空気感はあまりにも特別なものであり、また選手やクラブがどれだけ強く願ったとしても、或いはどれだけの時間やお金を投じたとしても、決して自分たちだけでは作り出すことのできないものです。
そうした特別な環境や空気感を与えられた者が、フットボールという、相手が存在するスポーツにおいて勝利を確約することはできずとも、勝利を必死に目指して闘う姿をお見せすることは、相手の存在に関わらずできることです。
上述の通り、勝ち点が伸び悩んだことによって、失点することへの恐怖心が必要水準以上に高まった結果、特に失点後などの場面において、チームは適正なリバウンドメンタリティを発揮することができませんでした。また夏以降に守備の改善を施し、数字上の成果も出た反面、意識の面で前向き、攻撃的な姿勢が弱まってしまったことも否定できません。そうした競技面での現象が選手、チームスタッフの心理面に影響を及ぼしていることも事実ではありますが、それでもなお、浦和レッズに思いを寄せてくださっている方々に対して示すべき姿勢について、チームに関わる全員が同じベクトルと高い解像度で理解し、その理解に基づいた行動を実践していく必要があると強く感じております。そのための中長期的な方策を、クラブとして今一度再考し、早急に着手してまいります。
2025シーズンへ向けて
チーム作りにおいて、攻守両面の強化が急務だと考えております。
攻撃面においては、ゴールやアシストといった勝利に直結するプレーに加え、高い位置からの攻撃的な守備を高い水準で実行できる選手の獲得を目指します。併せて、ドリブル等「個」の力で局面を打開できる能力を持った選手の獲得が、コンセプトに沿った攻撃を実現するために必要だと考えております。
また守備面においては、ディフェンスラインの統率に加え、チーム全体を鼓舞できる強いリーダーシップを持ち、プレーにおいても文字通り「壁」となるような、存在感を発揮できる選手がチームにとって必要であり、そうした選手の獲得を2025シーズンに向けた選手補強における重要なテーマに置いています。
私たち浦和レッズが目指すフットボールのスタイルは、2025シーズンも決して変わることはありません。
攻守両面において数的、質的、位置的な優位性を作り出し、組織的且つ積極的に主導権を握りながらゴールを目指す。そして、ボールを失っても即座に攻撃的な守備を行い、ボール奪取から二度三度と攻撃を畳みかけるというスタイルの実現を引き続き追求いたします。
これらを実践するためには、上述の通り、攻守両面におけるトランジションの質と量の改善が必須であり、選手たちには高い献身性が求められます。
そしてその献身性は、選手自身の理解、努力、自覚にのみ委ねるのではなく、チームスタッフによる技術、精神両面の適正なマネジメント、そしてクラブスタッフによるチームスタッフへの適正なマネジメントを通じて向上させることのできる余地が、まだ残っていると認識しております。
浦和レッズの選手理念に謳う「サッカーを極め、勝利を追求する」という項目は、決して選手だけの責務ではなく、「チームのために」「クラブのために」という思いを一にしたALL REDSがワンチームとなって実践するものです。
そうした認識のもと、選手、監督、チームスタッフ等の入れ替わりにかかわらず、コンセプトに基づいて積み上げてきたものを活かしていくという継続と、思うようにことが進まなかったときにリセットするのではなく、戻るべきところへ戻り、そこから再び積み上げを図るという継続を、引き続きクラブ主導で進めてまいります。
最後に
2024シーズン、浦和レッズのホームゲームには延べ712,852人の方がご来場くださり、浦和駒場スタジアムでの開催試合を含めた全ホームゲームの平均ご来場者数は37,519人となりました。
これらの記録には反映されない、アウェイゲームやDAZN等を通じてお気持ちを寄せてくださったみなさまも含めまして、シーズンを通じて大変多くのみなさまがチーム、選手を勇気づけ、そして共に闘ってくださいましたことに、改めまして深く御礼を申し上げます。
年間ご来場者数が70万人を超えるのは2009シーズン以来15シーズンぶり5度目のことであり、また平均ご来場者数37,519人は、年間勝ち点1位を記録した2016シーズンの記録を上回ります。
私たち浦和レッズは、ここに列記させていただいた記録を数字ではなく人、そしてお一人お一人がチーム、選手にかけてくださったご期待と理解しております。
そして、それだけ多くのみなさまお一人お一人のご期待に応えられなかったことを、大変申し訳なく存じております。
浦和レッズにお気持ちを寄せてくださるみなさまが、選手、チーム、クラブに対してご期待いただいていることを見誤ることなく、そしてそのご期待に応えたいという野心を強く胸に抱きながら、引き続きクラブ運営を誠実に行ってまいります。
今シーズンも最後まで熱いサポートをいただき、誠にありがとうございました。
引き続き、2025シーズンも熱いサポートをどうぞ宜しくお願い申し上げます。
浦和レッドダイヤモンズ
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