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FCWC直前 特別コラム2017年編「まず目の前の道をしっかり踏みしめて進んでいけなければならない~2017FIFAクラブワールドカップから」
浦和レッズのFIFAクラブワールドカップ2023初戦まであと1日。オフィシャル・マッチデー・プログラムでおなじみの清尾 淳ライターに過去2大会のFIFAクラブワールドカップの闘いを振り返る特別コラムを執筆いただきました。昨日の2007年編に続き、本日は2017年編を公開。
いよいよ明日15日(金)が、浦和レッズのFIFAクラブワールドカップ初戦 クラブ・レオン戦。試合の前にぜひ、ご一読ください。
「海外開催で勝つ」から「レアルに勝つ」へ
2017年のFIFAクラブワールドカップ。
浦和レッズは2007年に続いて2度目の出場だが、10年前とは大きく違う側面があった。
日本開催ではない大会ということ。開催地のアラブ首長国連邦(UAE)はアジアではあるが、言語はもちろん、気候や風習など日本とはまったく異なっており、ある意味ではアメリカやヨーロッパよりも「外国」度が高い。
2007年のFCWCでレッズが戦った場所は、豊田スタジアムと横浜国際総合競技場。レッズは決して「開催地代表」クラブではなく、アジア王者として出場し、たまたま開催地が日本だったというだけだったが、スタジアムに来場したレッズサポーターの数は、もしかするとJリーグの名古屋グランパスや横浜F・マリノスとのアウェイゲームよりも多かったかもしれない。他のFCWC出場クラブからしてみれば、レッズにだけ大きなアドバンテージがあるじゃないか、と憤ったのではないだろうか。
2017年11月25日、サウジアラビアのアルヒラルに勝って2度目のアジア王者になったとき、「海外開催のFCWCで、前回(3位)以上の成績を」。そう考えたサポーターは多いだろう。
僕もそうだ。当然、簡単ではない戦いになるが、「世界での、自分たちの立ち位置がわかる」と思っていた。
この年、リーグ戦では厳しい成績を余儀なくされた。開幕から第8節まではほぼ順調で首位にも立っていたが、第9節で大宮(アルディージャ)に敗れるとリズムの良さが崩れ、負けが増えてきて、7月29日、20試合を終えた時点で当時のミハイロ ペトロヴィッチ監督が解任となった。後任監督には堀 孝史コーチが昇格し、黒星先行には歯止めをかけたが、上昇気流には乗れず7位でJリーグを終了した。ペトロヴィッチ監督が着任した2012年以降の6シーズンで最も悪い成績だった。またYBCルヴァンカップは準々決勝で、天皇杯はラウンド16で敗退し、国内大会は無冠。そんな中でACLは、ホーム7試合を全勝という成績で通算二度目の優勝を果たしたのだ。
浦和レッズの底力を示す最後の機会、としてFCWCには大きな期待をかけていた。中国の上海上港、広州恒大、アルヒラルといった強豪を退けてACLを制覇したことが、自信にもなっていた。
FCWCの初戦、準々決勝に勝てば、準決勝で当たるのはレアル・マドリード。クリスティアーノ ロナウドを擁するスペインの強豪クラブは前回FCWCの王者でもあった。つまりUEFAチャンピオンズリーグ二連覇中で、当時は同じスペインのFCバルセロナを抑えて世界で最も注目を集めているクラブ、と言ってもよかった。
この年の6月、レアル・マドリードがUEFAチャンピオンになったとき、ACLはまだラウンド16が終わった段階だったが、「ACLで優勝すればレアルとやれる」と、先の可能性に意欲を燃やしたレッズのファン・サポーターも少なくない。ACLの準々決勝で対戦することが決まっていた川崎フロンターレのファン・サポーターもおそらくそうだっただろう。
だから前述した11月25日のACL優勝の日、ファン・サポーターは、「海外開催のFCWCに出場する」という思いだけでなく、レアルへの挑戦権を得たような気がしていたかもしれない。
高い頂きを見るときこそ、足もとを固めなければ
初めてFCWCに出場し、初めてヨーロッパの強豪クラブと親善試合ではなく真剣勝負で戦った2007年。日本で開催されながら、自分たちレッズのファン・サポーターを除いた多くの日本人サッカーファンからは「ACミランの相手」としか見られていなかったような気がした。
それは錯覚だったかもしれないが、あの2007年準決勝は10年経っても記憶から消えていないどころか、二度目のFCWC出場で、ますます鮮明によみがえってきた。
「今シーズン国内で無冠だった日本の浦和レッズが、FCWCでレアルに勝って日本と世界を驚かす」
12月2日のJリーグ最終節を終えてから、その思いは徐々に強くなり、現地に行く人も行けない人も、FCWCへのモチベーションは非常に高まっていった。絶対に決勝に行く、という意気込みは間違いなく10年前より高かったし、それでなければならなかったと思う。だが…。
レッズの初戦は12月9日、アブダビで行われる準々決勝だ。6日に行われるオセアニア代表のオークランド・シティ(ニュージーランド)対開催国代表アルジャジーラ。1回戦というより、プレーオフのような位置づけのような試合の勝者との対戦だ。
決して、それを忘れていたわけではないし、楽な試合だと思っていたはずもないが、レアルを見過ぎていた、ことは否めない。前評判どおりアルジャジーラが勝って準々決勝の対戦相手に決まったが、自分たちは同じ中東の強豪アルヒラルと戦って勝っていることで自信もあった。
8日、レッズの前日練習のとき、先乗りしていた記者がやってきて「6日のアルジャジーラの試合を見ましたけど、レッズは勝てますよ」と言ってくれた。1年間、レッズの試合を見てきた記者がそう言うのだから、力の差を感じたのだろう。その言葉が準々決勝に向けて何かプラスになるわけではないが、僕を安心させる効果はあった。僕はそれより、自分が翌日スタジアムに入れるかどうかが心配だった。FIFAへのメディア登録も取材申請もちゃんと行っていたが、地元UAEのセキュリティ―上のエラーが出て、ADが発行されなかったのだ。
9日。当日になってもADは発行されず、僕は仲間のメディアと別れてチケットを買って入った。いっそレッズのサポーターの近くで応援に回ろうかとも考えたが、仕事を優先し、試合が見やすい上の方の席にした。
守備的なアルジャジーラに対し、レッズが主導権を握りながら攻めあぐむという、半ば予想された展開だったからだろうか、試合内容はあまり記憶にない。覚えているのは後半の早い時間帯に失点し、あ然としたことだ。
大丈夫、まだ時間は十分ある、という自分を落ち着かせるための言葉と、自国のスタジアムで先制したチームから点を取り返すのは難しいぞ、という思いが交互に浮かんでは消えた。ギアを上げたレッズだったが、ますます守りを固める相手を崩せなかった。終了の時間が近づき、考えたのはレッズサポーターのことだ。
今日は土曜日だから、この試合だけを応援しに来た人もいるだろうが、多くは準決勝を中心に予定を組んでいるはず。レッズが負けたらその人たちはどうするんだろう。これから日本を出発する人たちは、どんな思いでこの試合を見ているのだろう。
アルジャジーラ 1-0 浦和レッズ。
誰も予想していなかった結末だった。いや、負ける結末は予想しなくてもいい。だが、負けないための準備は入念にしたのか。レアルを見てしまっていた多くの人たちの思いが影響したとは考えたくないが、そう言われてしまうことは間違いない。
勝ったのはアルジャジーラだが、レッズが負けたのは自分たち自身、そんな気がした。
FCWCの悔しさはFCWCでしか晴らせない。
だが簡単に出られる大会ではないし、レッズは翌年(2018年)のACLさえ出場権を持っていない。
2017年のFCWCは10年前の準決勝のリベンジという意識が強かった。その相手がレアル・マドリードだということが、さらに準決勝へ目を向けさせた。しかし、高い頂きに向かうためには、まず目の前の道をしっかり踏みしめて進んでいけなければならない。次に出場の機会があったら、そのことを肝に銘じて戦いたい。
ただ、それがいつになるのか、当時は全く見えなかった。
今年最後の話題を浦和レッズがさらおう
エピローグみたいに言ってはいけないが、2017年は5位決定戦に勝って終わった。相手のウィダード・カサブランカはモロッコのクラブで、スタンドのサポーターの陽気な応援が印象的だった。僕は5位決定戦でもADがもらえず、やはり一般席にいた。おかげで彼らが残していった「ハリセン」のような応援グッズをお土産にできた。
次はいつになるか。
FCWC出場の機会は6年ぶりにつかんだ。
今回はレッズが5月6日にアジア王者として出場を決め、さてACミランとの再戦かレアル・マドリードと6年越しの対戦があるかと思っていたら、マンチェスター・シティがUEFAチャンピオンズリーグで優勝した。もう知らない人のほうが多いだろうが、シティは1993年4月、Jリーグ開幕前に駒場競技場で国際親善試合を行った相手だ。もちろん、そんなことより話題は、イングランド・プレミアリーグで3連覇中のクラブと対戦する可能性が生まれたことだった。
ただ今回は「準々決勝に勝てばシティとやる」という言い方になっているのは6年前の教訓があるからだろう。また、準決勝の相手として北中米カリブの代表がメキシコのクラブ・レオンに早くから決まっていることもある。ちなみにマチェイ スコルジャ監督と今季の試合数の多さやシーズンの長さについて何度か話したことがあるが、彼の口から「マンチェスター・シティ」という名前が出てきたとは一度もなかった。常に「ハノイFCとの試合が終わったら、FCWCでクラブ・レオンと戦う」としか言っていない。
今季も国内ではタイトルを獲れなかった。2017年に比べれば、ルヴァンカップでは決勝に進んだし、Jリーグでもシーズン終盤まで可能性を残したが、いずれも最後に勝ち切れず、それだけに悔しさは一段と強い。
FCWC初戦の相手クラブ・レオンは、アジア勢以外の海外クラブとしては5つめ、北中米カリブ勢では初めての相手だ。この数字が増えていくことにも大きな意味がある。移動距離は長かったが、6日のハノイFC戦から期間があいて、ここまで57試合を戦ってきた疲労やケガの癒しに少しはなっただろうか。勝てばまた連戦になるが、先のことは考えずに目の前の試合を全力で戦い、勝っていって欲しい。もちろん目指すのは常に一番上だ。
残念ながらテレビ中継がなく、FCWCがどこまで日本で盛り上がるか疑問だが、レッズの活躍次第で報道は大きくなるはずだ。
今年は日本のスポーツ界が国際大会で多くの話題を提供して来た。レッズが、多くのサッカーメディアが想像もしていない結果を出し、今年最後のスポーツの話題はレッズがさらって欲しい。
清尾 淳 ◎浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム
石川県加賀市出身。中央大学卒業後の1981年、埼玉新聞社に就職し、以来浦和に在住。92年から業務で『浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム(MDP)』の編集を担当し、05年、埼玉新聞社を退職してフリーでMDPの編集に携わっている。
いよいよ明日15日(金)が、浦和レッズのFIFAクラブワールドカップ初戦 クラブ・レオン戦。試合の前にぜひ、ご一読ください。
「海外開催で勝つ」から「レアルに勝つ」へ
2017年のFIFAクラブワールドカップ。
浦和レッズは2007年に続いて2度目の出場だが、10年前とは大きく違う側面があった。
日本開催ではない大会ということ。開催地のアラブ首長国連邦(UAE)はアジアではあるが、言語はもちろん、気候や風習など日本とはまったく異なっており、ある意味ではアメリカやヨーロッパよりも「外国」度が高い。
2007年のFCWCでレッズが戦った場所は、豊田スタジアムと横浜国際総合競技場。レッズは決して「開催地代表」クラブではなく、アジア王者として出場し、たまたま開催地が日本だったというだけだったが、スタジアムに来場したレッズサポーターの数は、もしかするとJリーグの名古屋グランパスや横浜F・マリノスとのアウェイゲームよりも多かったかもしれない。他のFCWC出場クラブからしてみれば、レッズにだけ大きなアドバンテージがあるじゃないか、と憤ったのではないだろうか。
2017年11月25日、サウジアラビアのアルヒラルに勝って2度目のアジア王者になったとき、「海外開催のFCWCで、前回(3位)以上の成績を」。そう考えたサポーターは多いだろう。
僕もそうだ。当然、簡単ではない戦いになるが、「世界での、自分たちの立ち位置がわかる」と思っていた。
この年、リーグ戦では厳しい成績を余儀なくされた。開幕から第8節まではほぼ順調で首位にも立っていたが、第9節で大宮(アルディージャ)に敗れるとリズムの良さが崩れ、負けが増えてきて、7月29日、20試合を終えた時点で当時のミハイロ ペトロヴィッチ監督が解任となった。後任監督には堀 孝史コーチが昇格し、黒星先行には歯止めをかけたが、上昇気流には乗れず7位でJリーグを終了した。ペトロヴィッチ監督が着任した2012年以降の6シーズンで最も悪い成績だった。またYBCルヴァンカップは準々決勝で、天皇杯はラウンド16で敗退し、国内大会は無冠。そんな中でACLは、ホーム7試合を全勝という成績で通算二度目の優勝を果たしたのだ。
浦和レッズの底力を示す最後の機会、としてFCWCには大きな期待をかけていた。中国の上海上港、広州恒大、アルヒラルといった強豪を退けてACLを制覇したことが、自信にもなっていた。
FCWCの初戦、準々決勝に勝てば、準決勝で当たるのはレアル・マドリード。クリスティアーノ ロナウドを擁するスペインの強豪クラブは前回FCWCの王者でもあった。つまりUEFAチャンピオンズリーグ二連覇中で、当時は同じスペインのFCバルセロナを抑えて世界で最も注目を集めているクラブ、と言ってもよかった。
この年の6月、レアル・マドリードがUEFAチャンピオンになったとき、ACLはまだラウンド16が終わった段階だったが、「ACLで優勝すればレアルとやれる」と、先の可能性に意欲を燃やしたレッズのファン・サポーターも少なくない。ACLの準々決勝で対戦することが決まっていた川崎フロンターレのファン・サポーターもおそらくそうだっただろう。
だから前述した11月25日のACL優勝の日、ファン・サポーターは、「海外開催のFCWCに出場する」という思いだけでなく、レアルへの挑戦権を得たような気がしていたかもしれない。
高い頂きを見るときこそ、足もとを固めなければ
初めてFCWCに出場し、初めてヨーロッパの強豪クラブと親善試合ではなく真剣勝負で戦った2007年。日本で開催されながら、自分たちレッズのファン・サポーターを除いた多くの日本人サッカーファンからは「ACミランの相手」としか見られていなかったような気がした。
それは錯覚だったかもしれないが、あの2007年準決勝は10年経っても記憶から消えていないどころか、二度目のFCWC出場で、ますます鮮明によみがえってきた。
「今シーズン国内で無冠だった日本の浦和レッズが、FCWCでレアルに勝って日本と世界を驚かす」
12月2日のJリーグ最終節を終えてから、その思いは徐々に強くなり、現地に行く人も行けない人も、FCWCへのモチベーションは非常に高まっていった。絶対に決勝に行く、という意気込みは間違いなく10年前より高かったし、それでなければならなかったと思う。だが…。
レッズの初戦は12月9日、アブダビで行われる準々決勝だ。6日に行われるオセアニア代表のオークランド・シティ(ニュージーランド)対開催国代表アルジャジーラ。1回戦というより、プレーオフのような位置づけのような試合の勝者との対戦だ。
決して、それを忘れていたわけではないし、楽な試合だと思っていたはずもないが、レアルを見過ぎていた、ことは否めない。前評判どおりアルジャジーラが勝って準々決勝の対戦相手に決まったが、自分たちは同じ中東の強豪アルヒラルと戦って勝っていることで自信もあった。
8日、レッズの前日練習のとき、先乗りしていた記者がやってきて「6日のアルジャジーラの試合を見ましたけど、レッズは勝てますよ」と言ってくれた。1年間、レッズの試合を見てきた記者がそう言うのだから、力の差を感じたのだろう。その言葉が準々決勝に向けて何かプラスになるわけではないが、僕を安心させる効果はあった。僕はそれより、自分が翌日スタジアムに入れるかどうかが心配だった。FIFAへのメディア登録も取材申請もちゃんと行っていたが、地元UAEのセキュリティ―上のエラーが出て、ADが発行されなかったのだ。
9日。当日になってもADは発行されず、僕は仲間のメディアと別れてチケットを買って入った。いっそレッズのサポーターの近くで応援に回ろうかとも考えたが、仕事を優先し、試合が見やすい上の方の席にした。
守備的なアルジャジーラに対し、レッズが主導権を握りながら攻めあぐむという、半ば予想された展開だったからだろうか、試合内容はあまり記憶にない。覚えているのは後半の早い時間帯に失点し、あ然としたことだ。
大丈夫、まだ時間は十分ある、という自分を落ち着かせるための言葉と、自国のスタジアムで先制したチームから点を取り返すのは難しいぞ、という思いが交互に浮かんでは消えた。ギアを上げたレッズだったが、ますます守りを固める相手を崩せなかった。終了の時間が近づき、考えたのはレッズサポーターのことだ。
今日は土曜日だから、この試合だけを応援しに来た人もいるだろうが、多くは準決勝を中心に予定を組んでいるはず。レッズが負けたらその人たちはどうするんだろう。これから日本を出発する人たちは、どんな思いでこの試合を見ているのだろう。
アルジャジーラ 1-0 浦和レッズ。
誰も予想していなかった結末だった。いや、負ける結末は予想しなくてもいい。だが、負けないための準備は入念にしたのか。レアルを見てしまっていた多くの人たちの思いが影響したとは考えたくないが、そう言われてしまうことは間違いない。
勝ったのはアルジャジーラだが、レッズが負けたのは自分たち自身、そんな気がした。
FCWCの悔しさはFCWCでしか晴らせない。
だが簡単に出られる大会ではないし、レッズは翌年(2018年)のACLさえ出場権を持っていない。
2017年のFCWCは10年前の準決勝のリベンジという意識が強かった。その相手がレアル・マドリードだということが、さらに準決勝へ目を向けさせた。しかし、高い頂きに向かうためには、まず目の前の道をしっかり踏みしめて進んでいけなければならない。次に出場の機会があったら、そのことを肝に銘じて戦いたい。
ただ、それがいつになるのか、当時は全く見えなかった。
今年最後の話題を浦和レッズがさらおう
エピローグみたいに言ってはいけないが、2017年は5位決定戦に勝って終わった。相手のウィダード・カサブランカはモロッコのクラブで、スタンドのサポーターの陽気な応援が印象的だった。僕は5位決定戦でもADがもらえず、やはり一般席にいた。おかげで彼らが残していった「ハリセン」のような応援グッズをお土産にできた。
次はいつになるか。
FCWC出場の機会は6年ぶりにつかんだ。
今回はレッズが5月6日にアジア王者として出場を決め、さてACミランとの再戦かレアル・マドリードと6年越しの対戦があるかと思っていたら、マンチェスター・シティがUEFAチャンピオンズリーグで優勝した。もう知らない人のほうが多いだろうが、シティは1993年4月、Jリーグ開幕前に駒場競技場で国際親善試合を行った相手だ。もちろん、そんなことより話題は、イングランド・プレミアリーグで3連覇中のクラブと対戦する可能性が生まれたことだった。
ただ今回は「準々決勝に勝てばシティとやる」という言い方になっているのは6年前の教訓があるからだろう。また、準決勝の相手として北中米カリブの代表がメキシコのクラブ・レオンに早くから決まっていることもある。ちなみにマチェイ スコルジャ監督と今季の試合数の多さやシーズンの長さについて何度か話したことがあるが、彼の口から「マンチェスター・シティ」という名前が出てきたとは一度もなかった。常に「ハノイFCとの試合が終わったら、FCWCでクラブ・レオンと戦う」としか言っていない。
今季も国内ではタイトルを獲れなかった。2017年に比べれば、ルヴァンカップでは決勝に進んだし、Jリーグでもシーズン終盤まで可能性を残したが、いずれも最後に勝ち切れず、それだけに悔しさは一段と強い。
FCWC初戦の相手クラブ・レオンは、アジア勢以外の海外クラブとしては5つめ、北中米カリブ勢では初めての相手だ。この数字が増えていくことにも大きな意味がある。移動距離は長かったが、6日のハノイFC戦から期間があいて、ここまで57試合を戦ってきた疲労やケガの癒しに少しはなっただろうか。勝てばまた連戦になるが、先のことは考えずに目の前の試合を全力で戦い、勝っていって欲しい。もちろん目指すのは常に一番上だ。
残念ながらテレビ中継がなく、FCWCがどこまで日本で盛り上がるか疑問だが、レッズの活躍次第で報道は大きくなるはずだ。
今年は日本のスポーツ界が国際大会で多くの話題を提供して来た。レッズが、多くのサッカーメディアが想像もしていない結果を出し、今年最後のスポーツの話題はレッズがさらって欲しい。
清尾 淳 ◎浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム
石川県加賀市出身。中央大学卒業後の1981年、埼玉新聞社に就職し、以来浦和に在住。92年から業務で『浦和レッズ・オフィシャル・マッチデー・プログラム(MDP)』の編集を担当し、05年、埼玉新聞社を退職してフリーでMDPの編集に携わっている。