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MANAGER'S VOICE
Estimados aficionados!
リカルド ロドリゲスです。
先週の土曜日に行われたJリーグ第31節のヴィッセル神戸戦は、1-5というスコアで敗れてしまいました。前半、シュート3本で3失点してしまったことから、試合中は良くない印象が強かったですが、終わってから映像を見ると、それほど悪い試合ではないという考えに変わりました。前半の終わり頃や後半の立ち上がりには大きなチャンスも作れましたし、それ以外にも良い時間帯がありました。スコアは大差でしたが、他の数字的なデータを見るとこちらが上回っていた部分もありました。神戸の決定力の高さにやられてしまった試合だと言えるでしょう。
ただ、危険な位置でFKを与えてしまうとか、ボールロストして失点につながるとか、自分たちで招いてしまったそういう部分は改善しなければなりません。来季のACL出場に近づくために重要な試合だったのでそこで負けたのは残念ですが、神戸戦のすべてが悪かったと思ってはいけません。
8月9日にリーグ戦が再開してから、しばらくは内容的に苦しい試合が続きましたが、ルヴァンカップ準々決勝の川崎フロンターレ戦でチームにスイッチが入り、その後は成熟した姿を見せることができていたと思います。
9月18日に行われたJリーグ第29節のセレッソ大阪戦はレベルの高い内容で勝つことができましたし、その次のFC東京戦では、早い時間帯に失点しても自信を持ってプレーを続け、逆転勝ちしました。神戸戦でも自分たちの特長が出せていたことは先ほど述べたとおりです。
我々にとっては、ここでしっかり立ち上がって戦い続けることが重要です。ホームのファン・サポーターのみなさんに浦和レッズ本来の姿をお見せしながら、またリーグ戦でACL出場権を目指していきます。
今日はYBCルヴァンカップ準決勝の第1戦です。C大阪には前回のホームゲームで勝っていますが、それだけに我々を分析して対策を立ててくるでしょう。彼らの リーグの順位から言っても天皇杯やこのルヴァンカップのタイトルに懸けているに違いありません。決して楽な相手とは言えないのです。
今日はパーフェクトなゲームをしなければなりません。この第1戦を無失点で勝って、日曜日に大阪へ乗り込むつもりです。
前回のホームゲームは久しぶりの埼玉スタジアムでの試合でした。浦和駒場スタジアムでプレーするときも良い雰囲気でしたが、埼スタでの試合は大好きです。今日はより多くのみなさんの後押しを受けて戦えると思っています。タイトルに向けて前進しましょう。
Muchas gracias!
PLAYERS' VOICE
ルヴァンカップ準々決勝の川崎フロンターレ戦は第1戦、第2戦とも右サイドバックで先発。第1戦はフルタイム出場した。
「久しぶりの出場というのもありましたし、相手が川崎ということもあってすごくプレッシャーを感じていて、イージーミスが多かったかなと思います。しばらく試合に絡んでいない中でいきなり出るのは改めて難しいなと感じました。ただ、自分自身『こんなものじゃないぞ』という気持ちもあります」
その後、試合出場はないが、練習での動きは非常に良い。紅白戦で右サイドの高い位置でサイドチェンジを呼び込み、ボールをいったん中へ入れると手薄な左サイドに回り込んでチャンスメークに関わり、さらに中央に移送して二次攻撃に備えるなど、躍動感あるプレーを見せている。
「チームが若返りを図ろうとしているときに、経験のある選手の存在というのは大切だと思いますし、なかなか試合に絡めなかったり、メンバーに入れなかったりというときでも、そういう選手がもうひと踏ん張りして、出場したときに日頃の練習の成果を見せないといけません。今、体はすごく動いているので、ピッチの中でしっかりそういう経験を伝えていければと思っています」
それほど内容が良くなかった時期から、内容が伴う試合も増えてきている。プロ12年目のベテランは、シーズン中のこうした変化をどう見ているのだろう。
「まず監督のやろうとしているサッカーを、みんなが迷いなくできるようになってきたことが一番の変化ですね。監督の戦術をしっかりと理解することで、自分たちが持っている力を100パーセント発揮しやすい状況になったのかなと思います。監督が会見で『赤ちゃんも8、9カ月経てば歩けるようになる』と言ったそうですが、まさにそれで、チーム戦術について『こうやらないといけない、ああやらないといけない』と考えなくてもできるようになったのが一番大きいです。
ただ、自分もミシャ監督のときに経験しましたが、良くなっていっても壁にブチ当たるような時期があります。自信が過信になったり、マンネリになったり。だから、『どんな監督でもそういうことはあるよね』ではなく、そうならないようにしていかなければいけませんし、クラブのマネジメントもお願いしたいです 」
そういう意味でも、敗れたヴィッセル神戸戦のあとはとても大事になってくる。
「神戸はメンバーの半数くらいが世界で戦ってきた選手たちで、戦術よりも個の力で負けたなという感覚です。ここ10試合の相手で、個の強さを感じるチームはありませんでしたが、『神戸は個が強かった』で終わらせるのではなく、次はそういうチームにも負けないようにしていかないといけない。一人ひとりがそれを意識できるかどうかです。
何も感じないで同じことを繰り返してはいけないし、そういう部分でも経験のある選手が言葉やプレーで伝えていかないといけない。次は(酒井)宏樹が不在なので自分にも出場のチャンスがあると思いますし、しっかりとチームに還元していきたいです」
自身はJリーグカップ準決勝を3回(2011年、2013年、2016年)経験し、いずれも勝ち上がっている。
「準決勝は3回とも試合に出ていました。ただ、セレッソ大阪には少し前にリーグ戦で勝っていて、『もっと点が取れたよね』とか『自分たちのほうが良かった』とか、そういう感覚があるので、次の試合は逆に戦いにくいと思います。そこを選手たちがどれだけ理解しているか。リーグとルヴァンカップは別物ということです。
2013年の決勝は柏レイソルが相手でした。柏とはその6日前にリーグ戦でも対戦していて、そのときはすごく良い内容で勝っていたんです。でも、決勝では一瞬のスキを突かれて失点し、0-1で負けました。そういうことがあるんだということを肝に銘じて戦わないといけません。
タイトルが懸かった試合を経験していない選手も増えているので、タイトルが近づいてくると、勝負に行くべきところで安全なプレーを選択してしまったり、一つひとつのプレーに重みを感じてしまったり、ということがあるかもしれません。みんなが成長するために重要な一戦ですし、ルヴァンカップの準決勝というだけでなく、リーグでのACL出場権争いを考えても非常に重要な試合になると思います」
前節の神戸戦では、49分に左クロスから小泉佳穂のゴールをアシストした。ここまで公式戦5ゴール4アシスト、特に8月のリーグ再開後は得点に絡む機会が増え、「ゴール+アシストで10点」という自身の目標に迫っている。以前は「チームのやり方を理解しながらも自分の良さを出したい」と語っていた。現在の好調の要因は何だろうか。
「もちろんチームの調子が良いことが大きいですし、自分も前を向いてプレーする回数が増えたことで、ゴールにつながるシーンを作り出せているのかなと思います。感覚的にはチームとしてやるべきことが自然にできるようになってきたことで、“チームとして”ということをあまり考えずに自分の良さを出せているというか、良い意味で自然体でやれているのかなと思います」
得点に絡んだシーンで最も気に入っているのは、第29節・C大阪戦の先制点の場面(※動画あり)だという。ピッチ中央右寄りで平野佑一のパスを受けると、ドリブルではなく江坂任へのパスを選択。絶妙なスルーパスを通した。
「あれは『(小泉)佳穂に出したんだろう?』とみんなに言われるんですが、(江坂)任くんしか見えてなかったです。任くんへのラインに佳穂が入って来たので『触らないで!』と思っていました。
自分が受ける位置も体の向きも良くて、視野を確保できていましたし、任くんが呼んでいるのが分かったので、ドリブルは全く考えずパスをしました。気持ちの良いプレーでしたね」
第30節のFC東京戦では66分にクロスバー直撃のシュートを放ち、それが江坂の追加点につながった。
「エリア付近でボールを持っているのに相手が全然プレッシャーに来なかったので、時間がゆっくり流れている感じがしました。そこを逃さずにしっかりシュートが打てて良かったです。
右サイドで先発することが多いんですが、結果を残せているのはほとんど左サイドに入っているときなんです。左のほうがプレー時間は短いんですけど。だから右サイドで出ているときも、C大阪戦でのアシストのような結果を残さないといけないと思っています」
敗れた神戸戦から中3日で迎えるルヴァンカップ準決勝第1戦。相手のC大阪にはリーグ戦で気持ち良く勝利したことが記憶に新しいが……。
「C大阪には良いイメージがあるので逆に怖いですね。リーグ戦とカップ戦は違うと思いますし、準決勝だから相手のモチベーションも高いでしょう。絶対に油断してはいけない。
神戸戦の反省点としては、相手が前からはめに来ていたので、どこまで自分たちのやり方にこだわるかをもっと的確に判断しないといけなかったと思います。自分たちのサッカーが自然にできるようになっているからこそ、一時的にそれを横に置いて、別のやり方をやっても良かったかなと。C大阪戦も同じことが言えるのかなと思います。相手も少し前に負けたときの印象が強いはずですから、対策もしてくるでしょうし」
ルヴァンカップは自身がヨーロッパに渡る前年に獲った唯一のタイトルだ。神戸戦のネガティブなイメージを払拭するためにも、そしてアウェイでの第2戦を有利な状況で戦うためにも良い結果で終えたい。
「最近負けていなかった分、神戸戦の1敗で気持ち的にも体力的にも重くなってしまうということがないように、切り替えて戦う姿を見せないといけない。昨季もタイトルは目指していたので『今年だから』という気持ちはないですが、タイトルに近づいているという感覚があるのでぜひ獲りたいです」
今季はここまでリーグ戦10試合、ルヴァンカップ5試合、天皇杯2試合に出場。8月のリーグ再開後は1試合の出場にとどまっているが、9月10日の横浜FC戦では途中出場でチームの完封勝利に貢献した。
「横浜FC戦は久しぶりの出場だったのでアピールしたかったのですが、自分としてはそれほど満足のいく内容ではありませんでした。まずは失点しないことが一番の役割でしたが、一度相手に入れ替わられそうになってファウルで止めてしまった場面がありました。もしもあそこで失点していたら自分が入った意味がなくなるので、ああいう場面を作られてしまったことは反省点です」
なかなか試合に絡めない状況が続いているが、出場に向けて練習ではどんなことを意識しているのだろうか。
「ビルドアップの部分でもっとレベルを上げないといけないと思っているので、立ち位置や体の向きなどは特に意識してやっています。ただ、簡単に身につくものでもないので、毎日の練習で継続してやっていかないといけないですね」
チームは8月14日のサガン鳥栖戦から9月25日のFC東京戦まで、公式戦10試合負けなしだった。外から試合を見る機会が多かったが、シーズン前半と比べてどんなところが良くなっているのだろうか。
「前からの連動した守備と最後のところでの体を張ったブロック、それが失点が減った要因ですし、攻撃でも後ろから相手をうまくはがせていると思います。ただ、個人としては試合に出ないと良くなっていきません。やはり試合に出ることが一番だと思っています。
長くやっている選手はどんな状況でも全力ですし、意識高くプレーしています。自分もこういう状況で腐らずにやれるほうだと思っているので、そういうところを継続しつつ、経験のある選手のプレーを盗んでいきたいです」
先日の神戸戦、そしてC大阪との準決勝2試合と連戦が続くが、連戦は出場機会を得るチャンスでもある。
「試合に出るためにも練習からアピールしていくことが大事ですし、課題ばかり意識するのではなく、スピードや人への強さを生かしたつぶしなど、自分の特長を出していきたいですね。そうすれば他のプレーも含めてノッていけると思います。自分たちの戦いができれば勝てると思いますし、そこに自分も絡んで決勝進出に貢献したいです。
埼スタで戦えるのもいいですね。駒場も独特の雰囲気がありましたが、やはり埼スタでプレーしたいという気持ちが強いです」
PREMATCH DATA
第2戦(A) △3-3 vs川崎フロンターレ
第2戦(A) ○4-0 vsガンバ大阪
過去5試合の対戦成績(リーグカップ) | ||||
---|---|---|---|---|
2020/8/5 | AWAY | ヤンマー | ●0-1 | 詳細 |
2017/9/3 | HOME | 埼玉 | △2-2 | 詳細 |
2017/8/30 | AWAY | ヤンマー | △0-0 | 詳細 |
2013/6/30 | HOME | 埼玉 | △1-1 | 詳細 |
2019/3/17 | AWAY | 長居 | ◯2-0 | 詳細 |
ルヴァンカップ準決勝特集
文●清尾 淳
過去7回の準決勝進出で6回ファイナリストに
2021シーズンのYBCルヴァンカップも決勝の舞台まであと2試合となった。
Jリーグカップが「ヤマザキナビスコカップ」という名称で始まった1992年からの10年間、浦和レッズはこの大会でベスト4に進んだことがなかった。予選リーグ5位や準々決勝敗退など、4強まであと一歩というところで敗れること計6度。まるで準決勝の前に壁でもあるかのようだった。
それでも2002年、初めてベスト4に名を連ねると、苦戦の末に準決勝を制してファイナリストになった。すべての公式大会を通じて、レッズが優勝に王手をかけたのはこのときが初めてだった。すると翌03年から、04年、05年とそれまで準々決勝でせき止められていた勢いがほとばしるように、4大会連続で準決勝まで勝ち上がった。しかも、そのうち05年を除く3大会は決勝まで駒を進めている。
その後はしばらく準決勝と縁遠いシーズンが続いたが、2011年に6年ぶりの4強入りを果たすとそのまま決勝まで進んだ。さらにACL出場で決勝トーナメントからの参加となった2013年と2016年も準々決勝、準決勝を勝ち抜いて決勝に進出。これまで準決勝を計7回戦い、うち6回でファイナリストになっている。
Jリーグカップ準決勝を戦うのは今回で通算8度目。その第1戦を前に、過去の準決勝をいくつか振り返ってみよう。
初の4強から延長Vゴールで決勝へ
自国開催のワールドカップの影響で準々決勝、準決勝が一発勝負で行われた2002年大会。レッズはグループリーグ第5節の段階で1位通過を決め、9月4日に柏レイソルとの準々決勝に臨んだ。これまで準々決勝は“鬼門”となっていたが、この試合では相手にほとんどチャンスを作らせず、69分にエメルソンが決勝ゴール。初めてベスト4に名乗りを挙げた。
続く準決勝ではガンバ大阪と対戦。レッズは8月31日に開幕した2ndステージ第1節をVゴールで勝利して以降、柏との準々決勝を含め、公式戦7試合無敗と好調を維持した状態で大一番を迎えた。
万博記念競技場での一戦は、20分にエメルソンが幸先良く先制。G大阪の長身FWマグロンに34分、38分と立て続けにゴールを奪われて一時逆転を許すが、49分にエメルソンがPKを沈めて試合を振り出しに戻した。その後は互いに追加点を取れなかったが、延長後半開始直後の107分、トゥットが前線に送ったパスを、相手DFがボールの処理を譲り合う間にエメルソンがボールを奪ってVゴール。苦しみながらも初めての準決勝を制し、決勝へ駒を進めた。
苦しい残留争いの最中に勝ち抜く
東日本大震災により1カ月以上のリーグ中断を余儀なくされた2011年。Jリーグカップの日程や方式も大幅に変更され、予選リーグは中止、1、2回戦のみホーム&アウェイ戦、準々決勝以降は一発勝負という形でトーナメントが行われた。
レッズは1回戦でモンテディオ山形、2回戦で大宮アルディージャを破って順調に準々決勝へ進出。しかし、リーグ戦では前半戦3勝9分け5敗と苦しみ、後半戦に入っても黒星が先行して残留争いから抜け出せないという状況でのベスト8入りだった。
準々決勝では1カ月前のリーグ戦で1-3と敗れていたセレッソ大阪と対戦。前半に先制しながら後半に追いつかれるという嫌な試合展開だったが、83分にデスポトビッチのゴールで勝ち越して2-1で競り勝った。それまで勝負弱さが目立っていたレッズにとって、追いつかれてから再び勝ち越したのは公式戦を通じてシーズン初めてのことだった。
準々決勝から4日後、埼スタで行われた準決勝の相手は、こちらも1週間前のリーグ戦で0-1の敗戦を喫したばかりのG大阪。この試合で活躍したのが梅崎司だった。梅崎は約2年間にわたってケガを繰り返し、試合から遠ざかることが多かったが、この試合で公式戦約2年半ぶりのゴールとなる先制点をマーク。さらに自身が打ったシュートがエスクデロ セルヒオに当たってゴールインし、チームに貴重な2点目をもたらした。スタンドでは梅崎の試合後の場内インタビューを聞いて涙するサポーターもいた。
またG大阪戦での白星は、2007年8月15日以来約4年ぶり。いろいろと劇的な記録を残しながら手にした決勝への切符だった。
Jリーグカップの成績はリーグ戦の順位とは全く別物だが、カップ戦で見せたこの粘り強さはその後のJ1サバイバルレースにも生かされた。
アウェイゴールの差で決勝進出
レッズが5年ぶりにACLに出場した2013年。Jリーグカップには準々決勝から参加し、1勝1分けでC大阪を退けて川崎フロンターレとの準決勝に進んだ。第1戦は等々力で2-3というスコアだったが、この試合で興梠慎三が挙げた2つのアウェイゴールが大きな意味を持った。
1カ月以上間を空けて行われたホームでの第2戦。第1戦でのリードを守りにきた川崎に対し、レッズは終始攻勢を取った。そのプレー内容は、ミハイロ ペトロヴィッチ監督がハーフタイムに「私が浦和に来てから最も素晴らしいゲーム。あとはゴールだけ」と述べるほどの出来だった。
後半、選手交代でさらに守備姿勢を強める川崎に対し、攻め立てるレッズは80分、交代で入ったばかりの関口訓充の速いクロスに興梠が合わせてついにゴールをこじ開ける。試合はそのまま1-0で終了。2試合合計3-3ながらアウェイゴールの差でファイナリストとなった。
初の2戦勝利、埼スタでの決勝へ
2016年から大会の名称が現在の『YBCルヴァンカップ』に変更。ACL出場でノックアウトステージからの参加となったレッズの準々決勝の相手は、直前の8月27日にリーグ戦でも対戦するヴィッセル神戸に決まった。
レッズは8月中旬までリーグ戦10戦無敗と好調を維持していたが、8月20日の川崎戦で無敗を止められると、神戸との公式戦3連戦の初戦となったノエスタでのリーグ戦も1-2で落として連敗。しかし、この嫌なムードを吹き飛ばしたのが加入2年目の高木俊幸だった。
高木はノエスタでの連戦となった準々決勝第1戦で先制点を挙げると、同点に追いつかれた後半にはズラタンの勝ち越しゴールをアシスト。2つのアウェイゴールに絡んで2-1の勝利に貢献した。さらにホームに戻った第2戦でも先制点を決め、2点目につながるPKを奪取。3点目もマークする大活躍でチームを4-0の大勝に導いた。
準決勝の相手はFC東京。アウェイでの第1戦では後半立ち上がりに先制されたが、途中出場の高木が準々決勝の勢いそのままに77分に同点ゴール。その後、武藤の勝ち越しゴールも決まり、2-1という有利なスコアでホームに戻ってきた。
第2戦、最低でも2点が必要なFC東京は試合開始から積極的に前に出てきたが、レッズは守りに入らず真っ向勝負。その結果、高木のアシストから先制点を挙げた興梠が、その後ハットトリックを達成し3-1で試合を締めた。準決勝のホーム&アウェイを2試合とも勝って決勝に進出するのはこれが初めてだった。 Jリーグカップの決勝の会場が埼スタになって3年目、レッズにとっては悲願の決勝進出だった。
準決勝でも粘り強い戦いを
今季は必ずしも順調に勝ち上がってきたわけではなかった。アウェイで行われたグループステージ第5節の柏戦では、84分まで1-3とリードされていた。アディショナルタイムに伊藤敦樹と関根貴大がゴールを決めて辛くもドローに持ち込んだが、この試合に負けていたらグループステージ突破は難しかっただろう。どの試合も重要だったが、ギリギリの時間帯で2点のビハインドを追いついたこの試合こそが大きなヤマだった。
神戸とのプレーオフステージでは、アウェイでの第1戦を2-1で制し、ホームでの第2戦も2-1とリード。ところが77分にアンドレス イニエスタの直接FKで2-2とされ、あと1点失うとアウェイゴール差で相手に切符を持っていかれるという緊迫した状況に追い込まれた。3点目を狙いつつ、しっかりと守備意識を高めて最終的にはそのまま試合を締めたが、こちらも薄氷の勝利だったと言える。
そして1カ月前の準々決勝。リーグ王者の川崎相手に第1戦、そして第2戦の後半途中まで互角以上の戦いを演じたが、77分と83分にCKから失点して一気に2点のビハインドを背負った。それでも87分にキャスパー ユンカーのゴールで1点差に詰め寄ると、アディショナルタイムにCKのボールをつないで最後は槙野智章が同点弾。敗色濃厚の状況から、アウェイゴールの差で通算8回目となる準決勝進出を決めたのだった。
C大阪との準決勝も楽な戦いにはならないだろう。しかし、今のレッズには、たとえリードされてアディショナルタイムを迎えても決してあきらめない姿勢と、実際に試合をひっくり返すだけの力がある。一丸となって、7度目の決勝進出を果たそう。
THE MDP
文●清尾 淳
2013年はスーパーカップに出たわけでもないのに、シーズンのスタートが当時としては早い2月28日だった。5年ぶりに出場したAFCチャンピオンズリーグ。浦和レッズはグループステージの初戦、アウェイで中国の広州恒大と対戦した。
「え、中国ってこんなに強かったっけ?」
初めて対戦する広州恒大は、6年前に戦った同じ中国の上海申花とは次元が違った。フィジカルの強い中国人選手たちがしっかり守り、個人技に長けた3人の南米選手が危険な攻撃を仕掛けてきた。
広州天河体育中心という大きなスタジアムの7割近くを埋めた“足球迷”も初めて見る光景だった。僕が知っている中国のサポーターと言えば、レッズサポーターの応援を見て、これは一つにならないと勝てない、とばかりにガラガラのスタンドを移動してまとまり始めた上海申花のそれだった。広州にはレッズサポーターも1,000人近く来場していて「浦和」を高らかにアピールしていたが、さすがに4万人が「グアンジョウ!」と叫ぶ声には劣勢だった。
試合は0-3の完敗。個の強さにコンビネーションがねじ伏せられた印象だった。
その頃のレッズは2011年の残留争いでギリギリ勝ち残り、翌年にはミハイロ ペトロヴィッチ監督の下、新しいスタイルを身につけて一気にJリーグ3位まで浮上。この2013年ACLの出場権を得て、再びアジアと国内のタイトルへ挑戦を始めていた。しかし、Jリーグでの対戦相手とはまるで違う広州恒大に勝たなければ、2度目のACL制覇は難しいな、と感じた。
ところが2カ月後、埼スタでのグループステージ第5節では広州に3-2で勝った。この試合も勝てるだろう という思惑が外れてイライラした相手の監督が退席処分になるという一幕もあった。
結局、この年は勝ち点10を挙げながらレッズのグループステージ突破はならず、広州恒大がACLを初制覇した。この大会で広州に黒星を付けたのはレッズだけだった。さらに2016年と2019年、レッズは広州恒大と計4回対戦して3勝1分け。一度も負けていない。
今のレッズが置かれた状況は、このことを思い出させる。それで古いアルバムをめくってみた次第だ。
リカルド ロドリゲス監督のサッカーが浸透し始め、白星が先行するようになったシーズン前半だった。そして中断明けは苦しい内容の試合を制して勝ち点を積み上げ、夏の新加入選手がフィットしてからは内容にも結果にも満足できるようになってきた。
そこへきて神戸に1-5の敗戦。
冷静に受け止めにくいスコアだが、2013年のACL初戦のように、ある意味でこれが新しい戦いの始まりだと思った。宇賀神もコメントで語っているが、10戦負けなしだった9月までの時期、ここまで個の能力が高い選手を多く抱えるチームとの対戦はなかった。成長してきたレッズに対して、神戸のようなチームにも勝てるようにならないとJリーグの頂点には立てないぞ、という啓示が与えられた前節だった。 その試合でもレッズらしさが出せた時間帯はあり、得点以外にビッグチャンスも複数作れていたのだから、スコアに恐れをなす必要は全くない。今後、神戸と対戦するときに負けないチームに成長していることは十分可能だ。今季の残りの試合で、それを裏づけてほしい。
もう一つ。
今日の相手、C大阪には9月18日のリーグ戦で快勝した。そのイメージで相対し、あのときと同じように試合が進められないからと自分たちのリズムを崩すようなことがあってはならない。それでは、8年前の広州恒大がレッズに敗れたときと同じ轍を踏むことになる。Jリーグ第10節でC大阪と対戦したときも、今季初の3連勝の後で好調を感じていた時期だった。そしてあの試合も主導権を握りながら点が取れず、ワンチャンスを決められ敗れた。
敗戦におびえず、勝利におごらず。
今日はこの2つを肝に銘じ、自分たちを信じて戦ってほしい。
そして今季初めて5千人を超えるファン・サポーターが集う埼スタで、タイトルへの道を進んでいこう 。