MANAGER'S VOICE
Estimados aficionados!
リカルド ロドリゲスです。
前回、この埼玉スタジアムでリーグ開幕戦を戦ってから、早くも3試合が終わりました。
FC東京戦は、試合を支配しながら勝ち点3が取れませんでした。やはりJ1というカテゴリーは、簡単に勝たせてくれる舞台ではありません。一方、VARによってゴールは取り消されてしまいましたが、杉本がネットを揺らすまでの展開など、いろいろな面で多くのことができた試合でもありました。セットプレーでの1点以外、相手に決定的な形を作らせなかったことも良かったと思っています。
YBCルヴァンカップの初戦となった湘南ベルマーレ戦は前半、自陣での展開が続き、なかなか打開できない時間帯がありました。前線のFWの特徴によって全体のプレーも変わってきますから、あの場合は長いボールを直接前線に送ることをあまりしませんでした。相手のプレスをかいくぐってつないでいくことを我々は目指していますから、それを実践しようとした結果であったと思います。
ルヴァンカップではリーグ戦につながるような試合をしたいですし、ここで出場した選手たちには経験を積んで良いパフォーマンスを見せてほしいです。それによってリーグで戦える選手を増やしていくことができますから。
サガン鳥栖戦は2失点を喫して敗れました。1失点目はポジショニングのミスがあり、2失点目は5人の選手がエリア内にいながら、ゴールを決めた選手をフリーにしてしまいました。J1では、小さなミスを犯せば大きな代償を払わなければならない。なぜなら相手に得点力があるからです。パーフェクトな試合をしないと失点は防げません。
またシュートやラストパスなど、フィニッシュの精度を上げていかなければいけません。1失点目の後に追いつくチャンスがありましたし、同点になっていたらメンタルの状況も違ったでしょうから、結果がどうなっていたか分かりません。両方のペナルティーエリアの中での強さ、勝利のためにはそれを見せることが必要です。
鳥栖戦は細かい部分で勝敗が決まってしまいましたが、選手たちには敗戦に値するような内容ではなかったという話をし、最後まであきらめずにゴールを目指して戦ったことを称えました。
これからリーグの連戦となります。湘南戦のように、前の試合からほぼ全員を変更するようなことはないと思います。重要なのは、チームコンセプトを最大限に体現できる選手がプレーすること。しっかりとチームとして戦って勝ち点を積み上げていきます。この連戦で勝ち点を積み上げないと、上位に食い込んでいくことは難しくなってしまいます。
横浜FCは一昨年までJ2で戦っていたので、私も対戦した経験がありますが、J1に昇格してから変わっているでしょう。鳥栖戦で出た課題を改善してベストな状態で臨みます。
ここまでの3試合の結果は理想的なものではありませんでしたが、チームとして見せようとしているアイデア、強度、アグレッシブさはしっかりと出せていると思います。チャンスを作れていますし、完全に支配された試合はありません。しっかりと戦っていけば勝利は得られると思っています。
チームは発展のプロセスにあって、まだ勝利をお見せすることができていませんが、この試合ではプロセスだけでなくゴールと勝利でファン・サポーターの皆さんに喜びや楽しみを届けたいと思っています。
Muchas gracias!
PLAYERS' VOICE
田中はアビスパ福岡の育成から東福岡高校に進み、九州産業大学を経てロアッソ熊本に加入。その後、FC岐阜、ガンバ大阪でプレーし、2019年7月に大分トリニータに加入した。大分では昨季までの1シーズン半で48試合に出場し、9ゴールを記録。その間にレッズと3度対戦している。
「3試合の中で一番記憶に残っているのは、埼玉スタジアムでの初対戦です(2019年10月18日・浦和0−1大分)。アディショナルタイムの得点で勝つことができたのでよく覚えています。今度は埼玉スタジアムをホームとして、勝ちたいですね」
FC東京との開幕戦では、トップ下の小泉佳穂に代わって75分から出場。89分に左サイドで武田英寿のパスを受け、ゴール前にシュート性のボールを送った。続くルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦では左サイドハーフで先発。10分に伊藤涼太郎のパスを受けて際どいシュートを放った。また後半アディショナルタイムにはエリア内で相手GKと1対1になったが、シュートはGKの足に当たった。鳥栖戦では右サイドハーフで先発し、45分間プレー。開幕からの3試合すべてに出場しているのは伊藤敦樹と田中だけだ。
「出場はしていますが、自分の役割である得点やアシストといった実績を残せていない。そこで貢献することがすべてだと思っているので、納得はしていないですね。湘南戦のアディショナルタイムのシュートを決めておけば、勝ちにつながるゴールになっていたはずなので、あの場面は非常に悔しかったです。GKの足に当たらないように、少しでもボールを浮かせておけば入っていたと思います。タラレバを言っても仕方がないですが、また同じような状況があるかもしれないので、振り返ることはしますが、引きずらないようにしています。切り替えてまたやっていきます」
チームとしてまだ流れの中からのゴールが生まれていないが、その手前まではチャンスが作れている、という見方もできる。
「それでもまだ十分とは言えません。もっと多くのチャンスを作らないといけない。チームとしてやりたいことはだいぶできていて、状態は徐々に上がっていますし、これからさらに良くなっていくと思います。ブレずにやり続けることができれば、面白くて強いサッカーが展開できるんじゃないかと思っています」
以前、記者の囲み取材で「リカルド監督のサッカーが好き」と語っていた。実際に3試合プレーしてみて、その実感はあるのだろうか。
「90分試合に出た湘南戦で特に感じましたが、ボールを保持する時間が長い分、パワーを有効に使いやすいですね。守備でのスプリントなどリアクションで動くより、自分たちがボールを保持した状態でランニングするほうが疲労度は少ないですし、気持ち良く走れます。鳥栖戦は相手のほうが完成度が高かった印象ですが、東京戦や湘南戦のようにボールを支配して動ければいいと思います」
横浜FCとは、昨季2回対戦して2試合とも自ら決勝点を挙げている(大分1−0横浜FC、横浜FC2-3大分)。相性の良さを感じているのではないだろうか。
「それほど意識はしていません。対戦チームとの相性というのはあるかもしれませんが、攻撃の選手はチームよりもマッチアップする相手選手との関係がどうかということのほうが気になります。僕が逆の立場であれば、1シーズンに2回決勝点を入れられた相手というのは警戒すると思いますが、自分がそういう対象になっているかどうかは分かりません(笑)。
横浜FCのサッカーは鳥栖と似ているところがあると思います。ボールを大事にして、相手に合わせて、しっかりとボールを保持できるような立ち位置を取るということを丁寧にやってくる印象です。レッズと共通する部分もありますが、リカ監督のサッカーでは、さらに動きが多いと思います。まだ開幕して4試合目ということで、目指していることと、実際にやれることの違いはあるかもしれませんが、やろうとしていることができれば、さっき言ったように強くて面白いサッカーができると思います」
今季栃木SCから加入し、トレーニングではFW、サイドハーフ、ボランチ、左サイドバックなど複数のポジションでプレーしている。FC東京戦では右サイドハーフで先発フル出場。これがJ1デビューとなった。
「東京戦では、プレーの質や判断のスピードなど、J1のレベルの高さを感じました。自分のプレーについては、前への推進力は通用するかなと思いますが、どこでボールを受けるかというような一つひとつの判断のスピードを、もっと高めていかないといけない。ゴールに結びつくプレーもありませんでした」
東京戦の11分、左サイドまで走って相手の攻撃を防いだ場面があった。
「攻守の切り替えは常に意識しています。あのシーンは、もともと僕がかなり中に絞っていましたし、相手のカウンターでヤマくん(山中亮輔)と(汰木)康也くんが置き去りにされそうな感じだったので、あそこまで走りました。予測で勝ったな、という感じです。僕は汗をかかないといけない選手だと思うので、これからも“黒子”ではないけれど、しっかりと走りながらチームを救いたいと思います」
鳥栖戦では後半開始から右サイドハーフで出場。0-1とリードされた76分、汰木康也の折り返しから杉本健勇がシュートした場面で、明本はニアに入り込んでいた。クロスに対して複数の選手がゴール前に入って行くという良い攻撃の形を作れていた。
「康也くんにボールが入ったとき、僕が早く中に入りすぎて合いませんでした。2人がFWになっているときは、どちらかが必ずつぶれ役になろうということは健勇くんと話していますし、それが形になった場面だったと思います」
昨季は徳島と対戦し、リカルド監督のサッカーを逆の立場で体感している。
「徳島はボールを保持して攻めてくるので、こちらがめちゃくちゃ走らされて、それがすごく嫌でしたね。自分たちの側でそういうサッカーをやりたいという思いがありました。今は実際にそのサッカーをやっていますが、まだまだ課題はあります。積み重ねていくこと、続けてやっていくことが大事だと思います。得点するために、もう少し高い位置でボールを保持して、そこからのバリエーションなどを増やしていかないといけないですし、シュートの意識についても全体で合わせていければと思います」
公式戦3試合でファン・サポーターの期待は高まっている。その期待に次こそ結果で応えたいところ。
「横浜FCは、中に堅い守備をしているので、早くサイドで起点を作りたいですし、そこから仕掛けていきたいです。相手の攻撃の際には、外に誘導してサイドの選手が奪うとか、次の選手が奪いやすいようにコースを限定するとか、ファーストディフェンスが大事になってくると思います。
埼スタはずっと見ていたスタジアムですし、東京戦でピッチに立ったときは『やっとここに立てた』と実感できてうれしかったです。ここがスタートラインで、ここからやってやろうという気持ちでした。ファン・サポーターの皆さんに、勝って喜んでいただきたいのはもちろんですが、それ以前に戦う姿勢、最後まであきらめない姿勢を見せていかないといけない。ホームで戦える優位性をしっかりと出していきたいです」
ルヴァンカップの湘南戦でプロデビュー。右サイドハーフで先発し、69分までプレーした。
「早いタイミングでデビューできたことはポジティブだと思っています。2019年から特別指定選手としてやってきた中で、待ちに待ったデビューでした。ただ、あまり爪跡を残せていませんし、自分というものを示すことができなかったので悔しい部分もありました。
前半はチームとしてどうボール回しをするのかが、あまり定まっていなかった感じがありました。しっかりとビルドアップして前に運ぶというシーンも少なかったので、僕自身あまりボールに触れることができませんでした。ボールを触るだけなら、下がってもらいにいくという選択肢もありましたが、それは自分に求められていることではないので、前で我慢するという感じでした。それが前半、あまりボールに触れなかった要因です。
後半は、前半よりもボールを持つことができましたし、1本だけですがシュートを打つこともできました。今後はそういう前での仕事量を増やしていきたいです。『ここはやれた』というところは多くありませんが、『プロでは厳しいな』というわけではなく、これから試合に出ていけばどんどん良くなっていく、という手応えは感じています」
沖縄キャンプ中、右サイドから縦へ突破して中央へ切れ込み、左足で強烈なシュートを放つシーンがあった。カットインが最も得意なプレーなのだろうか。
「大学時代はカットインよりも、縦にぶち抜くことを極めたいと思っていました。左利きの選手が右サイドにいれば、カットインして左足シュートというのは当然狙いますし、相手も左足を警戒します。だから僕はあえて縦に行って右足でのクロスを狙います。右足のほうが力みがなくて蹴りやすさがあるので、いかに良い状態で蹴れる形に持って行くかを考えています。
今は左サイドもやっています。両方できるようにしておいたほうがいいと監督からは言われています。カットインにせよ、縦への突破にせよ、やり切るということが求められていると思いますし、ボールを回してチャンスを作っても、最後は個の力で仕上げなければならない。そこで結果を出していけば、試合に出られると思っています」
中央大在学中の3年生のときに加入が内定し、特別指定選手としてキャンプにも帯同。練習にも参加し、出場機会はなかったものの、公式戦でベンチ入りも果たした(2019年9月4日、ルヴァンカップ準々決勝第1戦の鹿島戦)。しかし、その頃に負った左ヒザのケガがなかなか完治せず、昨年の自粛期間明けもケガの個所が痛んだり、別のところに痛みが出たりという状態のまま大学でプレーを続けていた。完全に痛みが消えたのは、今年の沖縄キャンプだった。
「昨年10月に右足首のネズミ(遊離軟骨)を除去する手術をしました。12月に復帰しましたが、当初は手術箇所に痛みがあって完全ではありませんでした。だから迷いなくプレーできるようになったのは、この年明けからです。
今は痛みなくサッカーができていることが一番うれしいです。その中で日に日にできることも増えていますし、プレーの硬さみたいなものも取れてきました。練習でも調子が上がってきていると思います」
ケガがなければ大学時代にデビューしていた可能性もあった。
「レッズで試合に出たいという気持ちはずっと持っていました。優勝争いをしているとか、逆に残留を争っているという状況では大学生を使うのは難しかったかもしれませんが、昨年は中位でしたから、どこかで出るチャンスがあったかもしれない。そういう時期にケガで万全でなかったことを申し訳なく思っています。
埼スタの印象としては、一度ベンチ入りした2019年にピッチで味わった感覚が強く残っています。スタンドで見た試合では、その年のACL決勝が一番でしたね。『ここでプレーするのが楽しみだ』と思いました。大学生時代に感じた気持ちを忘れず、これからプロとしてやっていきます」
THE MDP
文●清尾 淳
「昨季、どこかで出るチャンスがあったかもしれません。そういう時期にケガで万全でなかったことを申し訳なく思っています」
申し訳ない? 残念だった、じゃなく?
大久保智明に、一昨年途中から今年にかけてのケガとの闘いについて話を聞いていると、「2020シーズン、レッズの結果が気になっていたか?」という質問に対して冒頭の言葉が返ってきた。
大久保は2019年7月に翌々年の加入が内定し、8月にJFA・Jリーグ特別指定選手の承認を受けていた。2020年も同様だった。レッズが中位でもがいている時期が長かった昨季はどういう気持ちでいたのだろうか、というのが質問の意図だった。試合に出られたかもしれない時期に、ケガのために出られない状態だったことが「残念」だっただろうとも推測していた。
それが「申し訳ない」気持ちだったという。
2019年、練習参加した大久保のプレーを見て、キレの良さに驚いた。複数のプロ選手を相手に、ボールを足元に吸い付かせながら細かい動きで抜いていった。「キュキュッ」という音が聞こえてきそうだった。
「公式戦でどこまでやれるか、試合に出してみてもいいんじゃないか」と思ってもいたから、埼スタで行われた9月4日のルヴァンカップ準々決勝第1戦でベンチ入りしたときは期待した。
試合は前半だけで鹿島に3点を奪われたが、後半に2点を返していた。第2戦で勝利するためにあと1点でも返しておきたい場面だったが、あの緊迫した展開で大学生を「試す」わけにはいかなかったのか、レッズ初の特別指定選手デビューは実現しなかった。
「アップでピッチに出ていく瞬間に鳥肌が立って、このスタジアムでプレーしたいと思ったのが今でもずっと忘れられません」(今季の新加入記者会見から)というインパクト。試合への出場はなかったが、チームと、そしてサポーターと共に闘った時間。
あの日「浦和レッズの大久保智明」が誕生した。
特別指定選手は所属する大学や高校のサッカー部―大久保の場合は中央大―との掛け持ち状態だが、主体はあくまで所属チーム。練習参加はともかくレッズでの試合出場は、簡単ではない。
だが大久保は1年半、中央大サッカー部の主力として活動しながら、レッズの一員としての意識も持ち続けていたのだろう。だから僕の質問に対して、試合に出られない状態で「申し訳ない気持ちだった」という言葉が出た。プロになる前から「責任」を背負っていたとも言える。
大久保のベンチ入りがルヴァンカップ準々決勝第2戦、つまりアウェイのカシマスタジアムだったとしても同じだったかもしれないが、「デビュー」の意識をより強くさせたのは埼玉スタジアムだった。
レッズサポーターが応援している埼スタにはそういう魅力、いや魔力がある。
藤原優大も、2019年度の高円宮杯U-18チャンピオンシップや高校選手権において、大勢の観客が入った埼スタでプレーした経験があるが、「今思うと、あのお客さんが赤いユニフォームを着て応援していると考えると鳥肌が立つ」と新加入記者会見で語っていた。
新人だけではなくプロの移籍選手も、相手チームとして埼スタで戦った経験を振り返り、「あれが今年からホームになると考えると…」と期待を語ることがほとんどだ。
昨年から、埼スタの魔力は「潜在能力」になっている。
だが、地中深く封じ込められているわけではない。昨年7月4日には、ファン・サポーターとクラブが力を合わせて、無観客とは思えない、いや観客がいないからこそできる前代未聞のビジュアルを出現させた。
今季開幕の東京戦でもビジュアルが登場したし、あるサポーターからは「東京戦でずっと手を叩き続けていたら、最後は手のひらが粉を吹くぐらいになってしまった」という話を聞いた。そんな人は少なくないだろう。
レッズ最強の武器が十分に威力を発揮できない状況でも、できる範囲で最大限のものを繰り出そうとする努力は、選手たちもよく分かっているはずだ。そして埼スタの魔力を引き出す呪文は、選手たち自身も唱えることができる。
それは、今日ゴールを決めること。勝つこと。
埼スタで勝利した瞬間に、我々が受けるあの感覚は、次への活力を呼び起こす魔力と言っていい。
昨年の10月から感じていないあの力を、今日こそ味わおう。