MANAGER'S VOICE
Estimados aficionados!
リカルド ロドリゲスです。
先週の日曜日、ヴィッセル神戸とのYBCルヴァンカッププレーオフステージ第1戦がアウェイで行われました。リーグ戦の結果を受けて、神戸が何かを変更してくることは予想していましたが、ややサプライズ的に変えてきたこともあり、立ち上がりは少し難しい部分がありました。また、早い時間にセットプレーから失点してしまったので相手が勢いを持ったと思います。
しかし前半の途中で指示を出したことでしっかり対応できるようになりましたし、攻撃に転じる時間も増えていきました。選手たちは理解力が高いので、そういう変更がスムーズにできています。そして前半の最後に追いつくことができました。
自分たちがボールを持てるようになってきた時間帯で、タカ(関根貴大)のサイドチェンジ、(田中)達也のクロスから(伊藤)敦樹が同点ゴールを決めてくれました。相手もうまく守っていましたが、練習で何度もやってきた形の一つが実りました。
アウェイゴールを取ったことで、後半に関しては危なげなく試合を進めることができました。前線からのプレスを怠らずに相手のミスを誘い、(興梠)慎三がしっかりと勝ち越しゴールを決めました。相手にとっては不運だったかもしれませんが、前線でボールを奪ってショートカウンターというのは我々の狙いでもあります。
その後は相手もリスクをかけながら攻撃の度合いを強めてきましたが、落ち着いて守りながら3点目を狙うという姿勢を持ち続けました。終盤に追いつかれて勝ち点2を失ったサンフレッチェ広島とのリーグ戦の教訓も生かせたと思います。
水曜日には天皇杯全日本サッカー選手権の2回戦が行われました。カターレ富山は映像を見て良いチームだと思っていましたし、実際にプレスを含めた守備、攻撃、セットプレーもしっかり訓練されていて、我々が最高のレベルでプレーしないといけない相手でした。セットプレーから危険な場面を作られましたし、(西川)周作のセーブで事なきを得ましたが、先に失点しそうな場面もありました。
天皇杯は5試合でファイナルに進出できて、ACLの出場権も狙える大会です。そのことを試合前に改めて伝えましたが、選手たちもそれをしっかりと認識し、高い集中力で戦ってくれました。
決勝点は大久保(智明)のプレーが起点になりました。久しぶりの出場でしたし、簡単ではなかったと思いますが、よく左サイドを支配し、チャンスを作っていました。最近の練習を見ていて、名古屋グランパス戦の後からずっと起用のタイミングを考えていました。
ルヴァンカップのプレーオフステージはまだ前半の第1戦が終わっただけです。神戸は立ち上がりから力強いプレーをして、先制点、さらに2点目を奪うというゲームプランで挑んでくるでしょう。
しかし、私たちもここで敗退するつもりはありませんし、2-1という途中経過をキープして引き分けを狙うつもりも全くありません。いつもどおりの自分たちの姿、スペクタクルなサッカーをみなさんにお見せしながら勝ちに行きます。
そして天皇杯で3回戦に進んだように、ルヴァンカップでもプライムステージへ勝ち上がり、タイトルを目指します。
Muchas gracias!
PLAYERS' VOICE
ヴィッセル神戸とのルヴァンカッププレーオフステージ第1戦に続いて、水曜日に行われたカターレ富山との天皇杯2回戦にも先発出場した。
「0-0の時間が長かったですが、それで焦れて攻め急いだりすることはありませんでした。みんな落ち着いていたと思います。特に後半から入った槙野(智章)選手が、後ろで声を出して締めてくれました。球際に行けない選手には強く言ったり、厳しさも示してくれていました。途中から出る選手の質の高さというのも勝因だったと思います。
試合の前日に、気が抜けたプレーをするようであれば前半でも交代させる、という話が監督からありました。それぐらい気持ちを入れてやらないといけない試合だったと思います。天皇杯は初戦が一番難しく、相手のカテゴリーが下だとかは関係ありません。どんな得点でも、どんな失点でも勝負が決まってしまうという一発勝負の怖さは、僕たち自身も経験しています。富山戦は、より高い集中力で入らなければいけない、そういう試合でした。それをみんなが実践したからこそ、良い試合になったと思います」
富山戦の31分、相手のCKをキャッチすると、裏へ抜けたキャスパー ユンカーに素早くロングキックを供給。惜しくも相手GKにクリアされたが、際どいシーンを作った。また77分には、枠内に向かってきた相手のクロスボールを判断良く弾いて失点を防いだ。
「ユンカーへのパスは、計算ではボールが止まるはずだったのですが、ちょっとだけ滑りが良すぎましたね。彼は足が長いので、DFの後ろから追いかけても追いつく速さがあります。彼の左足のほうにボールを出してやればビッグチャンスになると思っています。
後半のあの場面は最大のピンチだったと思います。あれを止めるか、止めないかで試合結果も変わってしまいますからね。先に始まった他会場の結果を見てもJ1チームが苦戦していましたし、初戦はそういうことがあると思います」
富山戦で決勝点をチャンスメークしたのは、先発2試合目、出場6試合目の大久保智明だった。
「彼が結果を残したのには理由があります。最近はメンバー外でしたけど、彼はブレずに自分がやらなければならないこと、磨かなければいけない技術を分かっていて、熱心に居残り練習もやっていました。
本人には、これを一つのきっかけにして、プレーできる喜び、戦って活躍して勝利する味をかみしめながら、これからも一緒にやっていこう、という話をしました。リカ監督も、自分の目で選手を見て判断してくれています」
富山戦に続いてプレーオフ第2戦も浦和駒場スタジアムで行われるが、西川自身は駒場での試合経験があまりない。
「ここが聖地駒場、という感じですね。駒場でJ1昇格を決める劇的なゴールが決まったのはテレビで見ていましたし、特別な試合がいくつもあったのを知っています。埼スタとは違った雰囲気がありますね。トラックがある割にはスタンドが近く感じますし、ゴールの真後ろではなく斜め後ろに大勢が集まって、みんな立ちっぱなしで応援してくれています。ありがたいです」
レッズ加入2年目の2015年以降、ほぼ毎年リーグ戦全試合に出場し(2019年は1試合ベンチだった)、先日は500試合出場も達成した。しかし、第13節のベガルタ仙台戦を最後にリーグ戦では出場機会がない。
「新人のときのような感じで、新鮮です。大分でプロになったときも、メンバー外から先発で起用されるようになったので、ベンチにいることはほとんどありませんでした。しっかり自分に矢印を向けて、与えられた時間を無駄にしないようにしたいです。
こういうことで腐る選手を山ほど見てきましたが、僕には多くの経験があるので、違いを見せないといけないですし、立ち振る舞いやプレーの質にはこだわり続けないといけない。そして必ずまたチャンスをつかんで、リーグ戦でもみなさんの前に戻りたいという強い思いがあります。
今はすごく良い練習ができていますし、チームが勝つということにフォーカスしています。これを充実したものにできるかどうかは自分次第だと思っているので、この状況を楽しんでやっていきたいです。
ベンチで見ていると、(鈴木)彩艶も含めて浦和レッズは誰が出ても質が高いなというのを改めて感じます。勝ち点を持って来られる選手というのに、自分もなりたいと思っています」
神戸との第1戦は2-1。アドバンテージを持って第2戦に臨む。
「自分にとっては守り甲斐のあるスコアだと思っています。相手は点を取りに来るしかないですから、当然攻撃を強めてくるでしょうし、第1戦よりも守る時間は長くなるかもしれませんが、そこは覚悟を持って戦います。相手が前から来ることで、後ろが空いてきます。
第1戦の前半は少し窮屈な感じがしましたが、あの経験は今度の試合に生かせると思います。また第1戦のときもそうしていたのですが、リードしているときにパスの方向が後ろ後ろにならないことが大事です。簡単に後ろに下げるのではなくて、前を見ながら、スペースを見ながらパスをつないでいくほうがチームとしては絶対に良いと思います。それも第2戦で大事なことだと思います。
今日問われるのは守備力です。点を決めさせなければ上のステージに行けますし、みんなが必ず点を取ってくれると信じています。
浦和駒場スタジアムで新たな歴史を作るためにがんばります」
今季はリーグ戦でフル出場を続けているだけでなく、公式戦全体でもルヴァンカップ第4節の湘南ベルマーレ戦を除いてすべての試合に出場している。5月に34歳になった選手としてはコンディションが気になるところだ。
「これまでなら、ルヴァンカップのグループステージや天皇杯の初戦などは自分がメンバーから外れることが多かったですし、若手にチャンスを与える機会という位置づけでした。ただ、連戦の厳しい日程でも体にむち打ってやることで逆に刺激になっていますし、若手と一緒にやることで、この年齢になっても成長できるんだということを感じています。一緒にプレーすることで若手を育てるだけでなく、自分も若手から学ぶことがあるんです」
シーズン序盤の3月にはサガン鳥栖、横浜F・マリノス、川崎フロンターレに完封負けを喫した。この頃の精神状態はどうだったのだろうか。
「決して強がりではなく、あの時期は積み上げを図っている最中の試合でした。あれらの試合では、相手がプレッシャーを前からガンガン掛けてきてもロングボールを蹴りませんでした。監督が目指しているのは『これだから』という意識でやっていました。
ですからあの敗戦は意味のあるものだったと思いますし、負けた試合でも前進している部分があったから、今があるんです。次にそういうチームと対戦するときは、違う姿を見せられると思います」
トーマス デンが戦列に復帰し、アレクサンダー ショルツの加入も決まった。センターバック陣の中でも激しい競争が生まれそうだ。
「一番層が薄いポジションでしたし、僕自身、レッズが上に行くために、アジアを獲るためには絶対に補強が必要だとクラブに言っていたので大歓迎です。チームにとって良いことしかないと思います。一緒にプレーすることで、お互いに力を発揮できれば一番良いですね」
相手からボールを奪い、奪えないときは柔らかいスライディングで蹴り出す。最後は相手のシュートコースに入って体を張るなど、余裕をもった守備を見せている。またビルドアップの際は、サイドバック、ボランチ、センターバックの相方とパスを回しながら焦れずにチャンスをうかがっている。
「開幕当初は、シンプルにクロスを上げて誰も触れずに相手に取られる、ということがよくありました。それがすべて悪いというわけではないですが、その後はボールを握ること、ボールを動かして相手を動かすことを強く意識してやってきました。それが今は徹底できていると思います。
出し所がなくて、困って後ろで回しているわけではないですし、見ているファン・サポーターも理解してくれているんじゃないでしょうか。今の浦和レッズがどういうサッカーを目指しているのか、監督のサッカーがどういうものなのかを理解して見てくれているので、僕らだけでなくスタジアム全体が我慢強くなっていると思っています。
意味のあるバックパスとか、意味のある縦パスの交換とか、それらはいわゆる“遊びのパス”ですけど、そういうときのスタンドの反応がポジティブなものになってきていると感じています。
チームの修正力はすごいと思います。飲水タイムやハーフタイムを経て、変わることがよくあります。本来はタイムブレークがなくても試合の中でできれば理想的ですが、開幕当初に比べればだいぶ進歩しています」
天皇杯の富山戦はベンチスタートだったが、デンと代わって後半から出場した。
「難しい試合になるのは分かっていました。スタジアムがいつもと違いますし、ボールも違いましたし、相手の勢いもありました。ただ、我慢すること、ボールを握ること、奪った後のカウンターなど、今季積み上げてきたものは随所に出ていたと思います。後半になれば必ずスペースが空いてくるので、後半に仕掛けるのがいいかなとは思っていました。
大久保がゴールに絡みましたが、彼が苦労していたのは良く知っていましたし、練習後に『槙野くん、1対1の練習しませんか』と誘ってくれて、居残り練習もやっていました。そういう選手がルヴァンカップや天皇杯で活躍して上がってくるのは良いことだと思いますし、もっともっとやってもらわないといけないです」
富山戦の先発メンバーのうち8人が今季の公式戦で10試合以上に先発している選手だった。天皇杯の初戦でこういうチョイスは珍しい。
「監督の、この大会に懸ける思いの表れだと思いますし、それは試合前日にも言っていました。メンバーを落として負けたチームもある中で、浦和レッズが天皇杯を獲りにいくという姿勢を示せたと思います。
もともと、ルヴァンカップのグループステージでは少しずつメンバーを入れ替えながら、かなりの選手が出場経験を積んできましたし、さらにJエリートリーグなど経験値を上げる機会もあります。先発メンバーがあまり固定されていないことで、試合で戦える選手が増えたということでもあると思います」
カップ戦において、アウェイでの第1戦を制し、アドバンテージを持ってホームでの第2戦を迎えるというシチュエーションは5年ぶりだ。
「ホーム&アウェイの180分間で勝敗が決まる戦いには慣れていますが、ビハインドの状況でやってくる相手の怖さ、というのは僕らが一番良く知っています。自分たちにアドバンテージがあるという気持ちで試合に入ると難しくなるので、今までどおりしっかりとボールを握って相手を走らせる、相手が点を取りに来るその裏を狙うことが大事だと思います。
天皇杯もそうですが、ルヴァンカップもタイトルを目指していきたいです」
神戸とのプレーオフ第1戦で公式戦4試合ぶりの先発出場。同点ゴールが生まれた場面では、ゴール前に走って相手DFを引きつけ、伊藤敦樹をフリーにした。前半から球際の攻防で何度も痛む場面があったが76分までプレーした。
「第1戦は堅く入って1点でもアウェイゴールを持って帰れれば、という気持ちがありました。早い時間帯に先制されてそれが狂ってしまいましたが、そこから崩れなかったのは今季のチームの強さだと思います。
相手が自分たちにシステムを合わせてきたので、立ち上がりはなかなかボールを前に運べなかったのですが、そこで自分たちのサッカーを崩さないというのは、全員の共通認識としてありました。一見、無駄に見えるパス交換も攻撃の糸口を見つけるためのものですし、あの試合でも徐々にペースをつかんでいきました。ただ、最近は前半が難しくて、後半に修正するという試合が多いので、前半からボールを握って自分たちのやりたいサッカーをする、あるいは飲水タイムを待たずに修正するというのが理想です。
同点ゴールのダイナミックな展開は練習でもよくやっている形ですし、僕がゴール前に走ってDFを引きつけるというのも練習どおりでした。関根が左サイドでボールを持った時点で、僕はあのゴールの形を頭に描けていたので、ボールには全く触れていませんが、非常に気持ちの良いゴールでした。
体はまだ痛いですよ(笑)。でもああいうところで球際に行けるのが自分の良さだと思うので、少し痛いくらいが自分のプレーができているということだと思っています」
天皇杯の富山戦でもベンチ入りし、先制ゴールが決まった直後の81分から出場。山中亮輔に代わって今季初めて左サイドバックを務めた。
「前半ベンチで見ていて、天皇杯の難しさ、そして富山が良いチームだということを感じていました。ただ、前日に監督から非常に厳しい言葉がありましたし、もともと誰一人として『J3のチームだから』という気持ちはなかったと思います。
そういうこともあって、例年になくバタバタすることのない天皇杯初戦になったと思います。ルヴァンカップの神戸戦から中2日で先発は8人替わりましたが、今季経験を積んできた選手が多かったですし、チームの底上げができていると思います。
自分が入ったのは点が入った後でしたが、その前から山中が少し足をつっていたので交代はすでに決まっていました。プレーが切れるのを待っている間に先制点が入ったという感じです。(汰木)康也も大久保との交代で入り、もう一度左サイドを活性化しようという意図がありました。
先制点をアシストしたのが、11人の中で一番出場経験の少なかった大久保だったことはうれしかったですね。そういう選手がゴールに絡むのは重要なことですし、練習を見ていても非常に良いプレーをしていたので、試合で使ってほしいなと思っていた選手でした。試合前に『絶対に結果を残して来いよ』と話していたので、彼が勝利に絡めて本当に良かったです。最後のドリブルは目の前で見ていましたが、素晴らしかったです。
FKを蹴る場面もありましたが、練習ですごいのを決めていたので期待して見ていました。本番で蹴らせてもらったのは他の2人(阿部勇樹と山中亮輔もFK地点にいた)の優しさでしょうね。
自分が左サイドで出たのは今季初めてでしたが、パッと切り替えて対応できました」
リーグ戦では第6節の川崎戦を最後に先発出場がないが、ルヴァンカップでプライムステージ進出に貢献することが、またリーグ戦に絡んでいくきっかけとなる。
「正直なところ、気持ちをどの試合に向けるか難しいところはあります。試合に出ていないので疲労はないのですが、今回は神戸戦ではなく天皇杯の富山戦に向けて準備していたので、先週は『ここで(出番が)来るのか』と思いました。ただ、監督は本当によく練習を見てくれているので、だからこそ第1戦で起用されたと思っています。練習から人一倍やっていますし、なかなか出番のない若手が気持ちを落とさないように、自分が率先してやることで若手を引っ張っていくことも役割だと思っています。
第2戦は自分たちにアドバンテージがありますが、こちらが先に点を取ってしまえば相手はさらに難しくなります。ですからアドバンテージを生かして守るのではなく、いつもどおりの試合を心掛けたいと思います」
THE MDP
文●清尾 淳
水曜日。まずカターレ富山の所属選手を改めて見た。西部洋平(40歳)、大野耀平(26歳)、柳下大樹(25歳)、松澤彰(23歳)…。
GKの西部洋平は、レッズがJ2時代の2000シーズン終盤、新加入2年目で先発起用され、最終節までの7試合を6勝1敗。チームは昇格を果たしたが、最後は勝ち点1差で2位になるという、薄氷を踏む思いだった。6勝のうち完封勝ちが5試合で僅差の勝利が多く、あの時代を知っているサポーターにとって、洋平は戦友だった。
柳下と大野はレッズジュニアユース、松澤はレッズユースにそれぞれ3年間在籍した。ジュニアユースとユースで6年間過ごした関根貴大を物差しにすると、大野は関根の1年上で柳下は関根と同期。松澤は関根より2年下だ。みんな顔はぼんやりとしか覚えていないが、不思議とプレーの雰囲気は記憶に残っている。大野は2009年まで発行されていた「リトルダイヤモンズ」の42~45号(https://www.urawa-reds.co.jp/archive/pdf/ld_42.pdf)に載っている。それより若い2人は、MDPにあった「FAMILY」のページに載ったことがあるはずだ。
トップチームではプレーしていない3人も含めて浦和レッズのOBが4人(松澤は試合のメンバーにいなかったが)…、そういう感慨に浸りそうになったとき、ふと思い当たった。今日の試合、もしかして「駒場慣れ」している選手は富山のほうが多いんじゃないだろうか(笑)。
選手のウォーミングアップが始まった。浦和駒場スタジアムでの試合は、一昨年の天皇杯2回戦以来だった。
そう言えば、あのときも相手の流通経済大には、3年生にレッズユース出身の伊藤敦樹がいた。かつての憧れのチームを74分まで1-1と苦しめたあの試合の2年後に、同じ駒場で自分がレッズの選手となってJ3のチームを迎え撃つことになるとは、想像していなかっただろう。
駒場は不思議だ。陸上のトラックがあるのに、ピッチが近く感じる。そしてアップを終えて引き上げる西川に、また選手入場の前に姿を現してベンチに座るリカルド監督に送られた拍手が、埼スタよりもはっきりと聞こえるような気がするのだ。
過去5回、唇をかみしめた天皇杯初戦。今回も決して楽な試合ではなかったが、試合展開に焦れたり、逆に相手を舐めたりせず、我慢するところは我慢してレッズが1-0で勝利した。J3で首位を走る富山の、スピードがあり強度の高いサッカーとの対戦は見ごたえがあった。大野の、ジュニアユース時代を思い出させるような「思いきりが良すぎる」プレーには苦笑するしかなかったが。
スタンドに手を振った洋平の脳裏には、やはり2000年11月19日のサガン鳥栖戦が浮かんでいただろうか。試合が終わってから関根と会った柳下は「いつかJ1で対戦するぞ」と誓ったのだろうか、それとも「いつか一緒に駒場で」と…。
さて。今日は駒場で11年ぶりのホームゲーム。水曜日にチームとして駒場での経験値を上げる機会があったのは何よりだ。
第1戦を勝利して第2戦をホームで迎えるのは2016年以来。アドバンテージを初めから意識した戦いはしないだろう。普段どおり、粘り強く守り、我慢強く攻め、勝つことを目指すはずだ。たぶん今のレッズにはその姿勢しかインストールされていない。
駒場であろうが埼スタであろうが、あるいはノエスタであっても、1勝は1勝。
ただ今日は、次のステージに進む扉を開けようとしている。そういう節目の勝利をここで挙げ、選手たちが「駒場での試合も良いな」と感じてくれたらうれしい。
どれだけ時代が変わっても、歴史が書き換えられることはない。浦和レッズは初期の10年をここで過ごした。
30年目の今季、その「実家」で新しい歴史のページを開く。そんな日にしよう。