OTSUKI TSUYOSHI
ダメージは大きくてもポジティブな部分もあった名古屋戦
強い闘志を持ち、ホームで広島に勝利します
みなさん、こんにちは。
2週間前に埼玉スタジアムで行われた清水エスパルス戦は悔しいドローに終わりました。前半うまくいかなかった部分をハーフタイムに修正して、後半先制点を挙げることができ、試合を決める追加点を狙いました。しかしうまくいっていた守備が、失点の場面はいろいろなことが重なって、同点を許してしまいました。
その4日後には、セレッソ大阪とのYBCルヴァンカップの第2節がアウェイで行われました。
大会のレギュレーションが変わり、我々が勝てばグループ1位、引き分ければ2位で抜けられる可能性が残り、負けた場合は苦しくなるという状況でしたから、しっかり勝利を目指そうと臨みました。
試合展開は悪くなかったと思いますが、我々の攻撃が続いていた終盤の時間帯に、相手のカウンターを止められず、決勝点を奪われてしまいました。どれだけ相手の攻撃を封じていても、ワンチャンスを決められてしまってはいけません。攻めているときのリスクマネジメントの意識をより強めていく必要があります。
その後、第3節の結果、ルヴァンカップの敗退が決まってしまったことは非常に残念です。
そのまま大阪に残って練習をし、3日後の名古屋グランパス戦に備えました。
大阪での練習でも、試合前のウォーミングアップでも、選手たちは非常にモチベーションを高く保っていました。実際に開始から10分は、よく押し込んでいましたし、セカンドボールも拾えて攻勢を続けていました。しかしロングボール1本で攻め込まれ、失点してしまいました。判定に疑問があってもすぐに切り替えて、それまでと同様の試合運びをするべきでしたが、続けてゴールを奪われ、その後も相手の勢いを止めることができませんでした。
流れを変えるべく、後半開始から3人の選手を交代し、前半との違いを見せることはできたと思いますが、失点もあり、点差を大きく縮めることはできませんでした。しかし、頭を下げたまま終了の笛を聞く、ということはなかったと思っています。
名古屋戦のダメージをまったくなかったかのように、すぐに切り替えるということは難しいと思います。
ただ反省と同時に、あの試合の立ち上がりに続けた攻撃の姿勢、そして後半見せた1点でも返そうという反撃の姿勢、これらもしっかりと確認した上で、安定して力を発揮することに結びつけていかなければなりません。
今週、オフ明けには戻り切れていなかったメンタルを練習の中で回復して、強い闘志を持って試合に臨めるところまで戻ってきました。
今日の相手、サンフレッチェ広島とは勝ち点が競っている状況です。
前節の敗戦をホームで払拭するためにも、上位への足がかりをつかむためにも、これまで続けてきたことを形にして勝ちたいと思っています。
ここまで戦ってきて、向上してきたところ、かみ合ってきた部分は少なくありません。そこを大事にしながら、試合の中で学んで来たことをしっかりと生かし、最後まで全力を出し尽くします。
筑波大学からソニー仙台FC(JFL)入りし、選手としてプレーした後、指導者の道へ。宮城県富谷高等学校サッカー部監督、筑波大学コーチ、水戸ホーリーホックコーチ、大宮アルディージャコーチを経て、2004年から浦和レッズ強化本部スタッフに。06年から10年まではコーチとしてリーグ優勝やACL制覇に寄与した。11年はベガルタ仙台のヘッドコーチを務め、12年から浦和レッズ強化部スタッフに復帰。13年から浦和レッズ育成ダイレクター兼ユース監督を務め、18年4月2日、トップチームの暫定監督に就任した。監督在任中はリーグ戦3勝1分け、ルヴァン杯1勝1分けの無敗で、オリヴェイラ監督にチームを引き継いだ。その後19年3月までヘッドコーチを務め、同年5月28日、1年1ヵ月ぶりに浦和レッズの監督に任じられた。今季も引き続き指揮を執る。
3連戦の初戦、広島に勝って、
嫌なムードを吹き飛ばしたい
○アウェイ横浜FC戦で今季初先発すると、清水戦でも先発。ルヴァンカップC大阪戦はベンチ外で、名古屋戦は後半開始から出場した。
「前半を見ていて、早い時間帯に失点したということがあっても、その時点で流れを変えるとか、違うチームに生まれかわるような、そういう風を送り込むことができず、ズルズルと相手のペースに持って行かれたと思いました。
早い時間帯に失点すると、2点目3点目を取られてしまうケースというのは他のチームでもあります。こういう暑いときや連戦のときなどに先に失点してしまった際のメンタル状況がどうなるのか、というのを頭に入れておかないといけません。やはり今後は、そういった後のゲームプランを考えておく必要があると思います」
○後半は、前半とは違う雰囲気になったと思うが、一つの要因として槙野が最終ラインからの声がけを積極的に行ったこともある。
「自分が入った意味とか、ピッチ上で果たすべき役割はよくわかっていました。メンバー外のときも自分だったらどうする、というのを考えていましたから、前半見ていて足りないと思ったところをやらなければならないと考えていました」
○後半開始3分で1点を返し、良いムードになりかけたが、その2分後に6点目を奪われてしまった。
「良い風を吹かせたかったですし、早い時間帯に1点を取れて、これでいけるという部分はありました。しかし、まだ前半の悪い流れから切り替えられていない選手がいたかもしれません。
あの点差で勝つことは難しいですし、その結果は受け止めなければいけませんが、後半残りの時間の戦い方が次の試合に影響してくると思いましたから、しっかりと試合を終わらせることで、次節に向けて良いアプローチができるはずだと思っていました。そういう話を西川選手ともしていました。ベンチも含めてチーム全体がそういう意識にならないとなかなか良い雰囲気にはならないと思います」
○清水戦は終盤追いつかれ、C大阪戦は攻勢を取りながら終盤失点してしまった。試合運びという点で、ピッチ上で経験のある選手が果たす役割は大きい。
「たとえスマートな試合でなくても、この夏は勝ち点をしっかりとつかみ取る試合をやらないといけません。試合の入りと終わりのところは特に意識を高く持つ必要があります。チームは世代交代が進んでいますが、若い選手たちが失敗や発見をどう教訓にしていくのか。また、経験のある選手が口で伝えることもできますが、若い選手たちには実際に体験したことをしっかりと生かしていってほしいと思っています」
○広島戦からまたリーグ3連戦となる。
「いま得失点差のマイナスは大きいですが、勝ち点では真ん中より上にいます。同じくらいの勝ち点のチームが集中しているので、この3連戦は重要です。特に初戦の広島戦がターニングポイントになるかもしれません。ホームで勝って、このネガティブな雰囲気を吹き飛ばしたいと思います。まずは練習で嫌なムードを洗い流して、しっかりと準備して試合に臨みます」
今季初出場は果たした
結果を出していきたい
○鹿島戦、柏戦にベンチ入りしたが出番はなく、今季初出場がルヴァンカップC大阪戦の先発だった。
「ずっと準備はしていて、良くなってきている実感はあったので、ベンチに入ったときに少しでも出たかったですが、チャンスは必ずあると思っていたのでモチベーションは維持していました」
○初出場が夜でも気温30度を超えるコンディションで、しかもいきなりフル出場だったが。
「90分は練習試合でもあまりやっていなかったので、心配ではありました。走ってきてはいましたが、試合で90分やる体力というのは試合でないとつかないので、そこは仕方がない部分もあります。自分の体力を信じてやり続けました。
攻めているときに点が欲しかったです。決めきる力、勝負強さ、勝ち癖をつけていかないといけません。終盤まで相手は何もチャンスを作れていなかったのに、最後に崩れて失点してしまったのは、本当にもったいなかったと思います。後ろから声は掛けていましたが、90分最後までしっかりと守りきることができなかったのは悔しい気持ちです。自分自身、チームが勝って初めて評価されると思うので、本当に結果がほしかったです」
○名古屋戦は後半39分から出場した。すでに2-6と大差が付いていたが。
「前半の早い時間帯に失点してしまったので、相手が乗ってしまったと思います。せめて2失点した段階で、チームを落ち着かせて我慢して、前半のうちに1点でも返せていれば、と思っていました。ベンチからも声は掛けていましたが、ピッチの選手たちが、一気に元気がなくなってしまいました。
立ち上がりを見ていて、いけると思っていたのですが、以前にも1点を取られてバタバタしてしまった試合があったので、ちょっと嫌な予感はありました。1点目がオフサイドかどうかという微妙な失点だったので、それを引きずって2点目になったのではと思います」
○大阪、名古屋とアウェイ連戦で大阪にステイして練習したのは初めてだった。
「連戦自体を経験していなかったので、初めてだらけでした。どういう準備をするのかというのは、周りを見て真似したりしていました。2試合に出場したのは自分の立場としては良かったのですが。そこで結果が出せなかったことは非常に残念です」
○これから出場争いがより激しくなっていきそうだ。
「右でも左でも準備はできています。負けたくないですし、あいつが出る試合は絶対に勝つ、と言われるようになりたいです。先発を目指していくのはもちろんですし、まずは出た試合で結果を出したいと思っています。出場しないことには大きく成長できないと思っています」
○自粛期間を含めコロナの問題に直面して新しくやったことや考えたりしたことは。
「外で食事をしなかったので、身体に良いものなどを意識して食べていました。それまでより食事や身体のケアに気を遣うようになったと思います。家でのトレーニングもそれまでしたことがなかったのですが、自粛期間に始めたので、今でもときどきやっています」
自分の手ごたえがあっても
勝利しなければ意味がない
○今季ここまで公式戦11試合にすべて出場している。
「自分の中で手ごたえは感じていますが、自分の良さを出せたとしてもチームが勝たなければ全く意味がないと思っています。チームを勝たせられる選手になりたいですし、そういったプレーをもっとしていきたいと思います」
○6失点した名古屋戦は、セットプレーの1点を除いて途中で相手の攻撃を止められなかった。
「相手のボールが縦に入ってきたときに、相手の金崎(夢生)選手に収まってしまったり、サイドのマテウス選手や前田(直輝)選手に走られて、そこで走り負けてしまったりしていました。どこで相手にプレッシャーを掛けて、どこで嵌(は)めてボールを奪うかということが、チームとして統一できていなかったと思います」
○今後のためにも試合の途中で修正、改善できるようになっていく必要がある。
「先制されたあと、次の失点をしてはいけないということが、チームとして統一できていなかったと思うので、まずそこを改善しないといけません。
失点した後の時間帯は少し慎重に、より集中してプレーしなければいけませんでした。まず、それができてから、相手がどう出てくるかということをピッチレベルで感じながらチームとして対策できなければいけなかったと思います」
通用したとは思っていない
もっと工夫し、勝利のために献身的に
○ルヴァンカップC大阪戦の後半31分、右サイドハーフで出場。これがプロデビュー戦となった。
「カップ戦だったので、自分の中でもチャンスが大きいと思っていました。もちろんリーグ戦に出ることが一番近い目標でしたが、どの試合でメンバーに入っても準備できるようにしていました。初めてメンバーに招集してもらってすごくうれしかったですし、試合でいざ名前が呼ばれたときはすごく楽しみな気持ちで入りましたが、なかなかうまくいかずに自分が入ってから失点をして負けてしまったので、すごく責任を感じています」
○紅白戦や練習試合で非凡なプレーを見せていたが、プロの試合はひと味もふた味も違っていたか。
「チャンスも作れなかったですし、シュートも打てなかったので、通用したという実感は全然ありません。ポジショニングを外に取ってプレーし、終盤だったということもあってクロスが多くなりましたが、もう少し自分で工夫してやっていけた部分もあったのかなと後から感じています。
今後は、途中出場でも先発でもチームの勝利に貢献できるように、もっと献身的にがんばりたいと思います」
出場は1年ぶり
チームに貢献できるよう鍛える
○昨年8月、湘南から復帰した際に負っていた右第五中足骨の疲労骨折からの回復が長かった。沖縄キャンプには最初全面合流していたが、痛みが出て別メニューとなり、完全に合流したのは自粛期間が明けて全体練習になってからだった。
「早くみんなと練習したい気持ちでした。今シーズンは頭からいけると思っていたのですが、キャンプの途中で痛みが出て別メニューになったときは、少しモチベーション的に難しい時期でした」
○清水戦の後半36分、右サイドハーフで今季初出場した。
「約1年ぶりの公式戦だったので楽しかったです。1-0の終盤だったので、守備を頭に入れながら攻撃の時は前に行こうという意識でいました。しかし勝利に貢献できなかったことが残念です」
○名古屋戦では右サイドハーフで先発出場した。
「久しぶりに開始から出たことはうれしかったのですが、まだまだ自分の力不足を感じました。レッズで自分を生かすための努力をもっとしないといけません。身体のコンディション的には問題はなかったと思いますが、プレーにおいて課題は多く見つかったと思います。チームに結果をもたらすことができずに申し訳なかったと思っています。
試合の立ち上がりは良かったので、あの時間帯をもっと長くすることと、あの時間帯に失点しないようにする必要があります。良い時間帯はあったにせよ、相手の流れに飲み込まれてしまいました」
○自分が初先発した試合で大敗したことを、今後の糧にして欲しいが。
「すごく準備はしていたので、久しぶりに試合に出てこんな結果なのか、というショックの方が大きかったことは事実です。しかし、やり続けることは変わらないですし、与えられたポジションでやれるように、自分を鍛えていきたいと思っています。
今はサイドハーフとFWをやらせてもらっていますが、もっと自分の中でチームの戦術を消化しながら自分の良さを出していけるプレーを選択していきます。個々の選手の特長を把握することと自分のプレーを知ってもらうことをもっともっとやっていきたいです」
清尾 淳 ● せいお じゅん
『ここから25試合』
昔から節句や季節の風物詩などを意識している方だった。
もっとも、子どものころ田舎では行事を旧暦に合わせていたから、おひな様が飾られるのは4月3日だし、鯉のぼりは6月5日の空に舞っていた。時代が経過するに従って、現在の暦に沿うようになったが、お盆だけは我々が「旧盆」と呼んでいた8月のこの時期が今では普通の「お盆」になっている。
季節を知るのはカレンダーだけでなく、頬をなでる風や気温、店頭に並ぶ野菜や果物も目安になった。「ああ、そろそろ○○だな」と。
ところが、ここ数年「観測史上初」が枕詞になるような異常気象が続いているから、肌感覚が狂ってきた。ましてや今年は新型コロナウィルスの影響で、最も風が心地良い季節は家にこもっていたし、自粛が緩んだら梅雨寒の日々。そして梅雨が明けたらいきなり40度に届こうかという猛暑だ。春のお彼岸も、新入学・新入社も、大型連休も、七夕も、その空気を感じる間もなく過ぎていった。目の前に張ってあるカレンダーは、試合日を確認するためのもので、季節を感じるものではなくなっている。
例年なら今ごろは終戦記念日関連のテレビ番組や新聞の特集などを見ながら、残り10試合余りになったリーグ戦の行方を予想していた。もちろん毎年、頂点を目指す気持ちはシーズン中も持ち続けているのだが、残念ながら2017年からの3シーズンは、新たな着地点を模索せざるを得ない順位だった。
ただし「今ごろ」というのは8月15日ごろのことで、第10節のことではない。
去年までならリーグ戦の約3分の2を消化している時期だが、今年はまだ約4分の1を過ぎたところ。リーグ戦は例年の2倍、25試合も残っているではないか。
前節、豊田スタジアムで大敗を喫した。その前のC大阪戦、さらに前の清水戦と終盤に失点して勝ち点を落としているから、流れを変えたかったが、逆の結果になってしまった。リーグ戦で負けた後に大事なことは、勝ち点3を相手に与え得失点差が悪くなったという数字上のダメージ以外に影響を残さないことだ。試合の前半は、失点後のメンタルの切り替えがうまくいかず、連続失点してしまったように見られるが、次節以降にまでそれを持ち越してはいけない。
名古屋戦の後半だけ見れば2-1。6点目を奪われたのは残念だが、それでも前半とは違う試合になっていた。それを拠り所にしていいはずだ。
カップ戦2試合を含めたここまでの11試合で、ケガ人以外のフィールドプレーヤーはほとんど先発を経験した。選手個々が手ごたえや足りない部分を確認しただろうし、選手の組み合わせによる特長もはっきりしてきた。11試合を経たことで、より競争が激しくなったと思われるポジションもある。残り25試合に向かって、戦う態勢は開幕時より充実していると言っていい。
いつも大事なのは過去ではなくここからだが、今日は特に、25試合の初戦という気持ちで戦って欲しい。
★編集後記。選手が期限付き移籍していくときには、いつも「必ず活躍して戻って来い」「そしてレッズの中心選手になってくれ」と2つのことを願う。なかなか両方は実現しないが、荻原拓也にも同じことを強く願っている。2018年に沖縄キャンプで何度も見せてもらい、その後ルヴァンカップ名古屋戦で炸裂した強烈なシュートは忘れない。過去にとらわれることなく、しかし自信を失わず、ここから充実した4ヵ月間を過ごして欲しい。(清尾)