その瞬間がどれだけ選手たちに勇気を与えているだろうか。
その瞬間がどれだけ選手たちに使命を抱かせているだろうか。
その瞬間がどれだけ選手たちに勇気を与えているだろうか。
その声を聞くことが、西川周作のモチベーションになっていた。サンフレッチェ広島でリーグ連覇を達成していた西川を、2014年に浦和レッズへと突き動かしたのは、ファン・サポーターからの厳しい目と重圧が自分自身を成長させてくれると感じたからだった。
「開幕戦に勝って浦和レッズでのキャリアをスタートしたいという思いがあったので、ガンバ大阪に勝利できたことによって、波に乗れたと思っています。というのも、加入する前に槙野智章選手から、浦和レッズのファン・サポーターは、プレーを認めてくれないとコールやチャントを歌ってくれないということを聞いていたので、逆にそれが自分のモチベーションになっていたんです。1日でも早く、自分のプレーを認めてもらい、コールやチャントを作ってもらえるような選手になりたいと思っていました」
認められたい。その思いが、西川のプレーに表れていたのだろう。G大阪との開幕戦で1−0の勝利に貢献した西川は、第10節まで半数に当たる5試合を無失点に抑え、チームを勝利に導いていた。
2014年5月3日——。
J1リーグ第11節のFC東京戦。試合前にウォーミングアップをするため、ピッチに出るとはっきりとその声を聞いた。
「ファン・サポーターのみなさんが自分の名前を呼んでくれたんです。9年経った今でも覚えている忘れられない日です。厳しいと聞いていただけに、そこで一つ、ファン・サポーターから認められたんだなって。何より僕のことを考えて、コールしてくれたこと、チャントを作ってくれたことがうれしかった。その背景を考えると鳥肌が立ちました」
2年後の10月15日、PK戦までもつれたJリーグYBCルヴァンカップ決勝で相手のシュートを止め、自身が加入してから初めてチームにタイトルをもたらしたときには安堵した。
「自分が浦和レッズに来た意味というのは、やっぱりタイトルを獲るためだと思っていたので、そこで一つ結果を残せたことはうれしかった。タイトルを獲るには相当なパワーが必要だし、プレッシャーとの戦いにもなりますけど、今年も含めて、これからもそこに向き合って、目指していきたいと思っています」
2022年、クラブ設立から30年という節目を迎えた。その間、浦和レッズのエンブレムをまといプレーしてきた多くの選手たちに同じだけのストーリーがあり、ファン・サポーターの応援は心に深く刻まれている。 きっと、当事者であるファン・サポーターが想像しているよりも大きな力と記憶として。
だから——西川は言う。
「ファン・サポーターの存在は僕ら選手にとって大きく、間違いなく心強い存在です。特に僕は、彼らの本気の応援というものを知っている。だから、従来のスタジアムの雰囲気と後押しができるようになり、あの応援を背に戦える日が来たとき、僕らは本当の浦和レッズの姿になっていくのではないかと思っています」
ファン・サポーターが送る拍手、熱量が選手たちに使命を抱かせ、勇気になる。
そして——近い将来、真の浦和レッズの姿が見られたとき、スタジアムから発せられる熱気は大きな歓喜へとつながっていく。
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