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22.03.18

森総監督インタビュー ~皇后杯優勝までの道のり(後編)~「選手たちに伝えたい『ありがとう』」


皇后杯 JFA 第43回全日本女子サッカー選手権大会を制した三菱重工浦和レッズレディース。チームを率いて3シーズン目となる森栄次総監督と大会を振り返り、その心境を聞く。後半は、皇后杯優勝までの道のりとこれからについて。

苦しい時期だからこそ信念を持って「このサッカーでいく」と伝えた

レッズレディースを率いて3シーズン目での皇后杯制覇になりましたが、大会に入るまでのチームは試練のとき。厳しい状況だったと思います
「ピッチの中の話で言えば、今シーズンの(栗島)朱里の離脱は大きかったですね。ボランチは誰がいいか。いろいろ試した中で3試合を落とし、頼みの綱となったのが安藤です。経験値やスピードもあってどんどんフィットしていく。すごく馴染んできて、中盤で守備のフィルターがかかるようになりました。『いけるな』と感じたのは、第10節のちふれASエルフェン埼玉戦です。彼女がいてくれて、すごく助かっています。安藤ともたくさん話していますが、こちらの要求にも応えようと一生懸命トライをして、実際にできるのはすごいこと。ボランチが落ち着いたのは明るい兆しですね」

チームが苦しい時期には森総監督も休養しなければならない状況でした
「なんとかしなければ、という思いはありました。ただ、その中で決めていたのは『自分たちがやることは変わらない』ということ。それを変えてしまうと、チームは崩れていく。これまでの経験でもそういうチームをたくさん見てきましたしね。負けることもあるかもしれないけど、自分たちは信念を持って『このサッカーでいくんだ』という確固たるものをもう一度、彼女たちに強く伝えました。とはいえ、それを言った自分自身がチームを離れている状況だったので『早く帰らなきゃ』とずっと思っていましたが、第9節マイナビ仙台レディース戦は力も気持ちも入ったいいゲームでした。DAZNを見ていて、少し安心した思いもありましたよ」

好転の兆しが見えつつも、皇后杯準決勝から決勝までブレイク期間が入る変則的な日程で難しさもあったと思います
「勢いに乗ったまま決勝を戦いかったというのは正直なところです。ですが、その期間に行った沖縄キャンプはチームにとって大きかったですね。皇后杯決勝のためのキャンプになりましたし、対戦するジェフユナイテッド市原・千葉レディースを想定した練習をできましたから」



一方で、3大会連続の決勝です。精神的な部分で選手に伝えたことはありますか?
「皇后杯に対してどう臨むかは何も言わなかったですね。決勝が大事なのは、選手がよく分かっています。チームの意識も高くなっていた中で、彼女たちの『皇后杯を絶対に取りたい』という強い気持ちを感じていたので、任せました」

選手たちに任せること。それは森総監督がレッズレディースに来てから取り組まれてきたことです。改めて今、選手とチームの成長をどのように感じますか?
「うまくなりましたよね。今は細かいことを伝える場面も本当に少なくなりました。『守破離』です。1年目は守で2年目が破。3年目は離、自分の手が離れていく。選手たちに任せてもやっていけるし、応用が出るようになっています。そういえば、皇后杯が始まるときに『この大会は君たちの大会だからね』と伝えた記憶を思い出しました」

それは『自分たちでやるんだよ』という意味ですよね
「そうです。もちろん、こちらが図式を書くけれど『やるのは君たち』。そういう意味ですね。今回は特に選手たちの中では危機感も、自分たちでやらなきゃいけないという気持ちも相当にあったと思います。そこは、すごく成長した部分。やらされてサッカーをやるのではなく、自分たちが考えてやる。責任はこちらが取るけれど、ピッチで戦うのは選手だから自分たちも考えなければいけないし、こちらも考えないといけない。半分、半分なんです。そういうやり方を続けてきた中で、“自分たちでやる”という部分が本当に成長しています。皇后杯制覇は、その大きな成果の表れですよね。自分にとっても、選手がこのやり方を信じてついて来てくれたことはすごくうれしいし、ありがたい。お互いにリスペクトする中で、いい結果につながっていると感じています」

選手たちに一番伝えたいことは、どんなことですか?
「ありがとう。うーん…感謝しかないんですよ。決勝戦後のロッカールームで伝えたのも『本当にみなさんのおかげです』という気持ちでした。本当に、彼女たちのおかげ。勝利もタイトルも総監督が一人で取れるものでも取るものでもないし、選手だけで取れるものでも取るものでもない。みんなで取るものだから、感謝の気持ちが一番に出てくるのかなと思います」

このサッカーを信じ込んで、自分を信じて全員でひっくり返すリーグ後半戦へ

レッズレディースで、リーグと皇后杯のタイトルを獲得しました。ここから先、森総監督が叶えたいことを教えてください
「WEリーグ初代女王。それしかないですよね。残り10試合。勝ち点差は9。負けが許されない状況だからこそ、ホワイトボードに順位表を書いて『強気で行くよ』と伝えました。苦しい試合も、勝てないことも、きっとある。でも、『全員でひっくり返そう』と言って後半戦をスタートしたんです」

ひっくり返すには何が必要ですか?
「運かもしれない。でも今のレッズレディースには、それがあると思う。自分たちのやっていることを、みんなが信じる。ひっくり返せると信じ込む。運もツキも、実力も必要ですけど、このサッカーを信じ込んで、自分を信じてやり込んでいけば、絶対にいい方向に行く。そう信じています」

そこには背中を押す熱いファン・サポーターのみなさんの応援が欠かせません。最後にメッセージをお願いします
「まずは、皇后杯決勝戦。熱い応援をありがとうございました。いつも変わらずにレッズレディースを応援してくれて、非常にうれしいですし、すごく背中を押していただいていると感じています。ここからはリーグ後半戦。チームは必死にくらいついて、ひっくり返そうとしています。その戦いをぜひ見ていただきたいですし、みんなで力を合わせて優勝しましょう。引き続き、温かい応援をよろしくお願いします」(了)
◆前編はこちら→https://bit.ly/3KEULAo
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