松長佳恵アシスタントコーチは、現役時代は東京電力女子サッカー部マリーゼや伊賀FCくノ一三重などで活躍。
当時のレッズレディースは、倒さなければいけない強敵だった。
かつてのライバルクラブで指導者のキャリアをスタートさせた今は、自身のキャリアと照らし合わせながら、情熱を持って選手たちに接する日々を送っている。

今はレッズレディースのことで頭がいっぱい
昇格した選手の活躍を見るのが大きなやりがい

普段はどんなお仕事をされているのでしょうか
「今シーズンからトップチームのアシスタントコーチを兼任していますが、基本的にはユースでの指導がメインとなっています。トップチームに関しては平日に週1回トレーニングに参加し、試合日はユースの公式戦がないときはトップチームに帯同しています。ユースでは、ウォーミングアップなどのトレーニングメニューを考えて、選手に指導を行っています」

トップチームとユースのコーチを兼任するとなると、仕事内容や選手への接し方なども変わると思います
「今回アシスタントコーチを受けるにあたり、トップチームとユースのそれぞれに対する情熱を共に持ち続けられるか、という不安はありましたが、今は自分なりに精いっぱい取り組んでいます。選手への接し方については、ユースの選手には伝えるべきことをある程度かみ砕いて話すようにしていて、トップの選手には自分が現役だった頃を思い出しながら、ざっくばらんにコミュニケーションを取るような感じで接しています。トップの選手に対しては、こちらから伝えるというよりも、聞き役に徹することが多いですね。選手は常に結果を求められストレスを抱えていますし、それが他愛もない話で緩和されてリラックスできるなら、その方が良いプレーができると思っています。自分も現役時代にはコーチと話せてリラックスできていたので、レッズレディースでもそういう役目を担えればと思っています」

育成という点では、ご自身も育成の選手としてプレーし、トップに昇格できなかった経験をお持ちです。それを踏まえて、ユースの選手たちにこんなことを伝えていきたい、こういうことを大事にしてほしい、という点はありますか
「今のユースには『トップに上がりたい』と思っている子がたくさんいますけど、必ずしも全員が上がれるわけではないのは、誰しもが分かっていることです。自分もそうでしたけど、常にトップ昇格したい気持ちを抱きながら、情熱を持ってトレーニングに励むことがすごく大事で、結果はその後についてくると思っています。それと、私もアカデミーから直接は昇格できませんでしたけど、最終的に伊賀FCくノ一三重に戻って選手になれました。自分が強く思い続けていれば、たとえトップ昇格が叶わなくとも、いずれそういうふうになれる可能性はあります。ユースの選手たちはまだ若く、これからまたどんどん伸びていくので、トップ昇格できなくてもがんばり続けてほしいというのは、自分の実体験を元に伝えたいと思っています」

また、サッカー選手としてだけでなく、人として大事にするところについてはいかがでしょうか
「自分は常に、感謝の気持ちは忘れないでほしいと思っていますし、それはしっかりと伝えていきたいと思っています。レッズレディースの素晴らしい環境は、決して当たり前ではありません。それに対して感謝の気持ちを持ってプレーすることで、自分だけでがんばるのではなく、誰かのためにがんばるという気持ちも出てくると思います。育成年代の選手だからこそ、感謝の気持ちを常に大切にしてほしいですね」

昨シーズンからレディースユースのコーチを担当されていて、そこからトップチームに昇格し、公式戦デビューしている選手もいます。そういった姿を見ると、感慨深いものがあるのではないでしょうか。
「フィールドプレーヤーでは、丹野凜々香、西尾葉音、西村紀音の3人は、ユースのころに指導していました。正直に言うと、私は指導者を始めるとき、なでしこリーグのコーチとかをやりたい気持ちの方が強かったです。でも、ユースで一緒にやっていた選手がトップの試合に出場しているのを見たときに、これは素晴らしいことだ、うれしいことだ、指導者として喜ばしいことだなと、心から思いました。彼女たちの姿を見ていることで、私自身も育成の指導者として、本当に大きなやりがいを感じることができています」



ぜひ指導者として優れた選手を育て、レッズレディースの歴史にお力添えをいただければと思います
「今はとにかくやりがいしかないですし、頭の中はレッズレディースのことでいっぱいです。今の時代はいろいろな情報があふれていて、特に若い選手は他のことに興味を持ちがちだと思いますが、自分は常に情熱を持って指導していますので、それが選手たちにも伝わって、集中してサッカーに取り組んでもらえたらと思っています」

また、レッズレディースには育成年代の試合に足を運ぶ熱心なファン・サポーターの方も多くいらっしゃいます。最後に、そうした方々へのメッセージをいただけますか。
「いつも遠くから応援に来てくださる方もいらっしゃって、本当にありがたいと思っています。中には私よりも選手のことを把握しているのではないかという方もいて、その熱意には驚かされます。みなさんが応援に来てくださることを選手たちも本当に喜んでいますし、だからこそトップに上がりたい、という思いも強くなると思います。今後もぜひ、選手たちを温かく見守ってあげていただければと思います」
(了)

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