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レッズレディースを支える人たち 立石典久GKコーチ インタビュー Vol.2
レッズレディースを支える一人が、着任3シーズン目となる立石典久GKコーチ。
女子サッカーに携わるのは初めてだったがここまでのキャリアで培った選手たちと本音の対話を大切にして、チームとともに成長を続けている。育成年代を渡り歩きながら得た指導者としての矜持を胸に今、レッズレディースでできること。
指導者として『嘘をつかへんとか本音で話しをする』ことは大事にしている
育成年代での指導とトップチームでの指導では、違いがありますか?
「育成年代は、成長させていくことも大事ですよね。人に成長してもらおうとしたら、多少、ストレスをかけないとあかんときがあります。課題を与えると言うんかな。でもそうすると、できないことをやろうとするから一時的にパフォーマンスが落ちます。ただそれは、選手が伸びていくために絶対必要なことやと思いますし、トータルで見たら絶対プラス。なので育成のときは状況に応じてトライしてきた部分があります。でもレッズレディースはトップチームなので、伸ばすことよりもコンディションやメンタルも含めて、いい状態でピッチに立ってもらうこと。それは優先します」
そうした違いがある中で指導者として大事にしていることや心掛けていることはどのようなことですか?
「偉そうな感じにしたくないというのはありますね。相手が女性でも高校生でも中学生でも一緒。人見知りだけど、人と人です。育成で指導していたときもフランクというか、絶対に立石コーチとは呼ばせなかったところがあって、言葉が難しいですけど、コーチという人格でも立場でもありません。そういう役割があるだけで偉いわけでもないし、選手がおらへんかったら、どれだけ指導したくてもできないですしね」
レッズレディースでも『たってん』と呼ばれていますし、選手たちともよくお話をされていますよね
「それはここでも変わらへん部分です。選手たちとは雑談をすることがは多いですよ。でもそれは何かを意識してやってるわけちゃうし、サッカーの部分で気づいたことは言ってあげたほうがええかなというのも思っています。精神的なことだけではなくて、プレーで悩んでいることとかも含めて、何か困っているなというのはわかるし、それは気になるから。僕の中では気づいたことを伝えるのは選手のためになるし、チームのためになるんちゃうかなと思っているので、雑談の中でサッカーのことをなんとなく話すこともあります。指導者として力を認めてもらい、信用してもらうことは大事やと思いますけど、同時に、人間として信用してもらえなかったら、どれだけ楽しいことを言っても聞いてもらえない。そういうところは、本当に大切ですよね。とは言え、大事やと思っているから何かをするわけじゃないですけど、ただ、嘘をつかへんとか本音で話しをすることとかは、大事にしています。その上で、ここはトップチームで、チームとしての方針や方向性があるから、言い過ぎないことのバランスは心掛けています」
そうした目に見えない部分を大切にしているから、選手たちとの距離感がほどよく、関係性も良好なのですね
「関係性ができているかはわからへんけど、サッカーの指導者としては、結果だけを追い求めるというよりも、一人ひとりが良くなっていくことも大事なことやと思っています。でもそれも目に見えるものではないし、結果として出てくるものでもないですよね。サッカーはそういうもので、実は目に見えないものも大事やと思います」
その上で、男子トップチームの練習や試合を見学されるなど、時間を惜しまずに勉強を重ねていると伺いました
「単純に勉強になるから見に行かせてもらっていて、僕の場合は、映像よりも実際に自分の目で見て、何を言っているか。空気感や実際のスピード感。そういうことを見るのがすごく好きやから足を運んでいて、そうした現場感を大切にしています。それに、それこそ、男子も女子も育成もしっかりしている浦和レッズやからできることでです。男子のトップチームの練習を見学させてもらった後に、その意図などをチームスタッフと答え合わせをさせてもらえます。それは指導者の経験値としても大きくて、自分の中に蓄積されていくものがあるんですね。それは選手のためというか、成長したいという気持ちを持つ中で、成長して培ったものを選手たちに提供することは、僕の仕事です。その上で勝つための努力をしています。もちろん勝敗は実際に試合をしないとわからないことですけど、でも目の前の関わっている選手を良くすることはできる。指導者としての道のりも、目の前のことを一つひとつやってきたから、今があります。だからこそ今は、ここで自分にできることをやりたいと考えています」
今、向き合っている選手たちには、どんな選手であってほしいと思いますか?
「サッカーの原理・原則を理解した上で判断できる選手になってほしいですね。もちろん、その中にそれぞれの個性があっていいと思いますし。個性や長所って、こちらが伸ばしてあげないと伸びひんものではないのかなと。変な言い方ですけど、押さえつけられたとしても、それを撥ねのけて出てしまうものが長所でストロング。それが少し抑えられたり、封じられたりしたぐらいで、できなくなるのは武器になりません。だからこそ、一人ひとりがそうした武器を持ちながら、サッカーの本質的な理解を一人ひとりが身につけていけば、より強固な組織になると思います。それから、『人として』という部分も持っていてほしい。人のために何かするということ。それは、指導者人生の中でずっと思っていて、伝えたり接してきたりしています。でも今は育成年代やアマチュアではない、トップチームですから、そういう部分は、だいぶ隠しているんですけどね(笑)」
(了)
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