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22.03.15

森総監督インタビュー ~皇后杯優勝までの道のり(前編)~「レッズレディースの新たな歴史を刻めたことは本当に良かった」


皇后杯 JFA 第43回全日本女子サッカー選手権大会を制した三菱重工浦和レッズレディース。チームを率いて3シーズン目となる森栄次総監督と大会を振り返り、その心境を聞く。前半は、2022年2月27日決勝戦当日の舞台裏について。

決勝前日は眠りながらシミュレーションをしているようだった

改めて、皇后杯優勝おめでとうございます。心境はいかがですか?
「リーグ後半戦がすぐに始まってしまったので、あまり余韻に浸れなかったのですが…プレッシャーがあった中で優勝できたことはもちろんうれしいですし、ホッとしています」

森総監督は常々「プレッシャーも楽しみなさい」とお話されています。アベック優勝、初制覇、3年連続の決勝戦。様々な要因があった今大会、森総監督は楽しめましたか?
「正直に言うと“楽しむ”という感情はなかったですね。プレッシャーが先に来ていたかな。やっぱりアベック優勝で、初優勝。こんなチャンスはなかなかないので、是が非でも取りたいという感情でしたし、勝ちにこだわる試合。それも“勝たなきゃいけない”という気持ちが先にあったし、強かったですね。このチャンスをモノにしないと、絶対に後悔する。どう戦うか、延長やPK戦のことまで考えていました。いつも真剣に考えていないわけじゃないんですけど、今回はいつも以上に真剣だったように思いますし、今回の決勝は今までと違う感覚。いろいろなことを考えていくうちに、自分で自分にプレッシャーかけているような感じになっていたのかなと…」

プレッシャーのある中で決勝戦前日は、よく眠れましたか?
「いや…決勝戦のときは4〜5時間くらいで目が覚めて(苦笑)。頭の中で、どうしてもシミュレーションをしちゃうんですよ。例えば清家をどうやって使おうかとか。そんなことを寝ながら考えているような感じでしたね」

迎えた決勝戦。その清家選手を前半から動かし、勝負に出ているように見えました
「清家に『前に行け』というのは言っていました。事前のミーティングでも彼女をFWに上げることは当然、選手たちにも伝えていたのでチームとしても心構えはできていたと思います。それに今回の決勝に挑むにあたっては、前線の形は2パターン準備していたんです。一つは(菅澤)優衣香の1トップ。もう一つが、優衣香と清家の2トップ。どちらも練習していました。清家自身は大きなケガから復帰し、シーズンのはじめは無理をしていた面もあったと思いますが、皇后杯に入って90分フルで出場できるようになった。それは、チームとして戦う上でも大きいことで、清家を前に持っていくことで武器が増える。それをどこでどう使うか。常に考えていたことです。ただ、今回の決勝戦に限っては、うちの右サイドから崩される場面が出てきていました。そこで清家を上げて、守備も長けている(水谷)有希を下げようと考えたんです。清家の良さと有希の良さで戦況を変えるには、ちょうどいいタイミングだと感じたので、監督の楠瀬をはじめコーチ陣と相談をして、清家を前に持っていきました。実際に、清家が上がったことで相手が下がりましたし、有希が入って守備も固くなったので、結果的に良かったと思います」

あの場面の意図は得点を取りに行くのではなく、先に失点をしないことだったんですね

「今だから言えることですけど、自分の中で描いていたプランでは前半は0−0でもいい。そこで、守備は有希に任せて失点をせずに返って来いという思いでしたね」

選手たちと一緒にやっていきたいだから彼女たちの意見が大事

その流れの中で、後半開始からはまたポジションを戻しました
「ハーフタイムで選手に状況を聞いたら『今の形はきつい。ボールが回りづらい』と言うんです。それで、戻しました。プレーをするのは選手なので、選手のやりやすい形にするほうが絶対にいい。『実際にやってみてどう?』というのは、いつも聞くことなんです。選手たちとは一緒にやっていきたいという思いがありますし、特に心臓部分に入るはな(柴田華絵)と安藤には必ず意見を聞くようにしています。決勝も二人が『拾えない』という話をしていたので、ポジションを戻しました。後半勝負というのは頭の中にありましたし、相手が体力的にも落ちてくれたこともあって、うちが回せるようになったんですよね」

後半はボールを握る時間が増え、清家選手のアシストから菅澤選手のゴールが生まれました
「相手は3バックだったので、サイドはポイントになります。清家がうまくハマってくれましたし、得点が入った瞬間は『やった』と思いました。それしかないですし、飛び上がった瞬間でしたよ(笑)」

1点をリードして90分間戦い抜き、勝利した瞬間のお気持ちは覚えていますか?
「もう…『やった』しかない。それと、ホッとしたという気持ちですね。久々に飛び上がるような心境でしたけど、そういう気持ちになったのは、やっぱり“浦和レッズ”というクラブで総監督をさせてもらっているからだと思います」



2019年の皇后杯決勝で真っ赤なスタジアムを見たときに「浦和レッズというクラブの大きさを改めて感じた」と仰っていました
「やっぱり浦和レッズは、ビッグクラブなんです。2019年の決勝では1万人以上のファン・サポーターのみなさんが来てくれました。あんなに大勢の観客が集まった試合は、自分自身も初めてのこと。あの試合で、あの真っ赤なスタンドを見たときに『すごいところに来ちゃったな』と思いました。本当は、あのときに勝てれば良かったけれど…まだ、そこまでの力がなかった。二度目も取れなくて、三度目の今回。『ここは絶対に取らなきゃダメ』。その思いに尽きるんです。周りの期待も大きい分、プレッシャーも重いですが、改めて思うのは、そのビッググラブの一員としてレッズレディースを率いることができてうれしいということ。皇后杯初優勝。レッズレディースの新たな歴史を刻めたことは、本当に良かったと思います」
(後編へ続く)


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