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MANAGER'S VOICE
リカルド ロドリゲス監督
みなさんが期待してくれている、進化したスタイルと戦う姿を見せたい

 Estimados aficionados!
 リカルド ロドリゲスです。今シーズンから浦和レッドダイヤモンズの監督を務めます。どうぞよろしくお願いします。

 浦和レッズのことは、日本に来る前から知っていました。
 日本で最も多くのファン・サポーターがスタジアムに集まり、最も熱い応援で素晴らしい雰囲気を作っているのが浦和レッズでした。そして今は、日本でただ一つ、AFCチャンピオンズリーグを二度獲っているクラブです。総タイトル数も鹿島アントラーズとガンバ大阪に次いで多いでしょう。J1のタイトルはまだ一度だけですが、今日から始まるこのリーグ戦が、またJ1優勝を目指す中長期的なプロセスとなるはずです。

 コロナ禍が収束して、スタジアムの入場制限がなくなった近い将来には、この埼玉スタジアムが6万人で埋まるようなレッズになっていればと思っています。そのためには、私たちが面白いサッカーを見せていること。勝利していること。順位表の良い位置にいて、タイトルを狙える状況にあることなどが必要だと思っています。

 私がやりたいサッカーはシンプルです。
 自分たちがボールを持つ、そして奪われたら奪い返す。そのことに集約できると思いますが、実行に移すのは簡単ではありません。しかし選手たちは戦術を理解していますし、私は良い感触を得ています。ボールをしっかりキープして、相手を敵陣に押し込みながら攻撃をしかけ、その時間が長いサッカーを見せていきたいと思います。
 また、ゴールはサッカーで最も重要な要素ですが、FWだけに頼るのではなく、多くの選手がゴールを決めていきたいです。サイドハーフの選手はもちろん、センターバックの選手が流れの中で決めても良いと思います。
 戦術が完全にチームに浸透するまでには少し時間がかかるでしょうから、1試合目ですべてが完璧にいくとは思えません。しかしまず開幕戦で、みなさんが期待してくれている、進化したスタイルと戦う姿を見せたいと思っています。それがプロセスの第一歩となります。

 本日対戦するFC東京は、何年も同じ監督が指揮を執っていて、完成しているチームだと言えるでしょう。また外国籍選手は個人で試合を決める力も持っています。
 プレスの強いチームですので、それをいかにかいくぐるかが一つのテーマになると思いますが、そのためにいくつかのオプションを用意しています。しかし最終的には、この東京戦に限らず自分たちのゲームプランに近い試合、自分たちがやりたいことを実行して、相手がやりにくい流れを作りたいと思っています。今日は、危険な場面も作られるでしょうが、しっかり対処して勝ち点3を目指します。

 私が2015年にバンコク・グラス(タイ)の監督をしていたとき、ACLのプレーオフ・ラウンドまで進んだことがありました。北京国安に敗れて本大会には出られませんでしたが、もし勝っていればレッズと同じグループになっていたはずですね。
 ACLはぜひ出場したい大会です。そのためには自分たちのコンセプトを大事にしながら、しっかり戦って勝つという良いシーズンにしなければなりません。
 あらゆる側面でパーフェクトに近いパフォーマンスを発揮できるようになって、ACLの出場権獲得につなげていければと思っています。それと同時に、もちろんJ1の優勝も念頭に置きながら戦っていきます。

 そのスタートになる今日の試合、ぜひとも勝利したいと思います。

 Muchas gracias!

麻布テーラー
三菱UFJニコス
埼玉縣信用金庫
PLAYER'S VOICE
4 DF 岩波拓也
ホームでできるというアドバンテージをしっかりと生かしたい

レッズ加入4年目です。背番号を尊敬する鈴木大輔選手(現・千葉)が昨季付けていた4番に替えました。

「もともと背番号にこだわってはいなかったんですが、レッズの4番というのが、偉大な選手が付けてきた番号だということは、これまで見ていて分かっていました。昨季は自分の中で納得のいかないシーズンだったので、気持ちを切り替えて、これからは自分が中心になっていかないといけないということで、新しい番号を選びました」

センターバックは自陣からのビルドアップなど、攻撃の起点となるポジションです。

「ボールを大事にして後ろからつないでいくのは、自分の好きなスタイルでもありますから、リカルドさんが監督になると聞いたときからすごく楽しみにしていました。昨季の徳島の試合も見ました。
 実際にやっていて、自分たちがボールを持って相手を疲れさせるという楽しさもありますし、相手が我慢できずに食いついてきたところをかわして運んでいくということもあります。これまでそういう形で自分たちがやられていた試合もありました。僕が以前見ていて、魅力を感じていたレッズに近づいた感じがあります。そういうプレーができる選手が多いですし、新加入の選手たちもみんな足元がうまいので、そういうサッカーに向いているのではないかと思います」

前線に直接パスを送る、というのも岩波選手の得意なプレーです。

「ボールをつなぐというとショートパスに目が行きがちですが、一番大事なのはゴールに直結するプレーです。監督からもそういう動きを見逃すなと言われていますから、まずは一番遠くを見て、次に自分が持ち運んで相手を引きつけ、味方を楽にするというプレーを意識しています」

始動から1カ月余りで開幕を迎えます。手応えはどうですか?

「手探りで始まり、練習試合を5〜6試合こなしてきましたが、最初から全部うまくいくほど簡単なスタイルではないですし、うまくいかない試合で出た課題を次の練習で改善し、頭がクリアになった状態で次の試合に臨めるというサイクルができていると思います」

選手が3分の1以上入れ替わりましたが、チームの雰囲気は変わりましたか?

「ロッカールームの会話などを聞いていても、少し若返った感じがあります。僕は移籍を一度しか経験していませんが、移籍してきたときの難しさというのは分かっているので、いろいろフォローするようにしています。もうそれぞれの特徴は大体つかめています」

開幕からFC東京という強豪が相手です。

「東京は昨季2回とも敗れた相手です。今季はあまり新加入選手がいないですから、お互いをよく理解し合っているチームだと思います。しっかり守って、前線の外国籍選手がボールを収めて、というカウンターの強いチームですから、僕たち守備陣にとって重要な試合になると思います。開幕戦という難しさもありますが、ホームでできるというアドバンテージをしっかりと生かして、開幕から良いスタートを切りたいです」

41 MF 関根貴大
より高い位置を取れているからゴールを狙える。今季10点は欲しい

昨年12月に左足ガングリオン(ゼリー状のこぶ)除去の手術を行いました。

「回復が少し長引いて、万全の状態では始動を迎えられませんでした。沖縄キャンプになって戻ってきたかな、という感じです。痛くなって練習を休むことのないように、十分にケアをして練習や練習試合に臨んでいました。ケガ明けということを理由にしたくなくてがんばってやってきたので、コンディションはだいぶ上がりました」

リカルド監督のサッカーをやってみて感じることは?

「昨年の徳島の全ゴール集や活躍した選手のプレー集を映像で見ました。いろいろな人から話も聞きました。  スタートは4−2−3−1でも流動的というか、僕がやりそうな2列目の3人はかなり頭を使って動かないとうまくいかない感じですし、サイドバックもそうですね。これまでとは立ち位置や入って行くエリアが違ってきます。逆サイドが空いているからといって逆サイドに出すのではなく、同サイドで何度も攻めるとか、そういう駆け引きは面白いと思います。当然、基本技術がしっかりしていないと、正確につなぐことができないですね」

今季は2列目の選手の得点機会が増えそうです。昨季はリーグ戦で2得点でしたが、関根選手にも期待がかかります。

「4-2-3-1の2列目は4-4-2のサイドハーフよりも高い位置を取れていますから、ゴールを狙えると思います。こぼれも狙いやすいですしね。ヒデ(武田英寿)も練習試合でたくさん取っています。誰かが打ってこぼれたところを僕が詰める、という形がいいです(笑)。逆もあるかもしれませんが、2列目にセカンドストライカーのような選手が複数いると、ゴールは増えるんじゃないですかね。お互いにその“恩恵”を受けるんじゃないかと思います。自分としても今季10点は欲しいです」

札幌との練習試合は、相手の厳しいプレスでビルドアップがなかなかうまくいきませんでした。逆に引いた相手にはなかなか崩せないという苦しさが見られます。

「札幌とやったときは、まだチームを作っている準備段階で、前線で相手のディフェンスラインの裏に抜けている選手がいるのに、ボールを持っている選手がそこを見ていない、というシーンが多かったです。それは監督も『つなぐことが大事ではない。裏が空いているならそこを見よう』ということを言っています。そこをみんなが意識して狙うようになっていけば、相手も下がっていくと思います。そういう工夫は必要でしょう。
 引いた相手を崩すには、もっとコンビネーションが必要です。大きな展開だけでなく、同サイドの選手が連係して立ち位置を変えて、相手のマークをズラしながら崩していくことを意図的にやっていくということだと思います」

ホームでのリーグ戦開幕は初めてです。昨季はFC東京相手に2敗でした。

「相手のカウンターには要注意ですが、大事なのは(悪い形で)ボールを失わないことだと思います。青木くんもいますし、1歳下にインゴルシュタットで一緒だった渡邊凌磨くんがいます。彼には絶対に負けたくないです。ホームで迎える開幕戦はやはり違いますね。出場したいです」

29 MF 柴戸 海
監督の目指すサッカーが完成形に近づけば、間違いなく面白くなる

レッズに加入して4年目。毎年出場数を伸ばし、昨季は得点やアシストなど攻撃面での貢献が増えました。

「昨季の成績に関しては、開幕当初に立てた目標との間にだいぶ差がありましたから、もちろん納得はしていません。個人としては、自分の持ち味である運動量や球際の部分についてはしっかり発揮できたと思いますし、自信にもなりました。ただ後半はケガで試合に出られない時期が続いたので、悔しさもありましたし、ケガとの向き合い方など意識を高めていかないといけないと感じました」

リカルド監督はプロになって4人目の指揮官です。

「結果が求められる世界で、監督が頻繁に代わるというのは良いことではないと思います。ただ、ネガティブになってばかりでもいけないので、ポジティブに考えればいろいろなサッカーに出会えたということでもありますし、監督が代わればまた新しい競争が生まれることもあります。そういうふうにポジティブに捉えていけば、良い方向に回っていくと思います。
 リカルド監督のサッカーでは、ボールを動かす中で良いポジショニングを取る、体の向きを大事にするというのは自分にとって大事なことですし、そういう動きによって新しいものが見えてくると思っています。
 昨年末は徳島の試合も見ましたし、いろいろな情報を得て、自分の中である程度落とし込みはしていました。また、カテゴリーが違っても優勝するというのは、並大抵のことではないと思うので、監督と選手がベクトルを一つにしていけばJ1での優勝も可能だろうと思いました」

ボランチはリカルド監督のサッカーのカギだと言われることが多いです。

「ボランチの重要性は監督も常に言っていますし、攻守において間違いなくカギになるポジションだということは、監督の指示などを聞いて感じるところはかなりあります。実戦の中で学んでいく部分が多いと思うので、正直時間はかかるかもしれませんが、監督の目指すサッカーが完成形に近づけば、間違いなく面白くなりますし、勝てるようになると思います。
 リカルド監督はすごく情熱的で、一言で言えば真面目です。いろんなことを考えながら自分の考えを的確に伝えてくれます。チームの雰囲気を見ながら和ませてくれたり、締めたりというバランス感覚も持っていると思います」

汰木選手、関根選手を合わせた25歳トリオは年齢構成でいうとチームの真ん中にあたります。

「ピッチ内外で自分たちから行動を起こしていくことが大事になってくるかと思います。もう誰かについていくだけではダメで、自分たちが引っ張っていくようになりたいです。僕はあまりそういうタイプではないのですが、ときには役割を意識して振る舞うことも必要かなと思います。先輩たちの良い部分を盗んで、引っ張っていく存在になりたいと思います」

19 MF 金子大毅
これまでとの違いを吸収することでプレーヤーとしての幅が広がる

湘南では3シーズンを過ごし、リーグ戦56試合に出場しました。レッズとは過去2回対戦しています。

「そのときの印象はあまりありませんが、昔からビッグクラブだというイメージは持っていました。そういうチームでプレーできるような選手になりたいという気持ちはありました」

リカルド監督のサッカーでカギだと言われるボランチのポジションで豊富な運動量を見せています。

「それが自分の強みでもあるし、そういう部分で負けてはいけないと意識しています。ボランチが機能しないとチームとしても機能しない、すごく大事なポジションだと思っています。後ろと前のリンク役になって、よりボールをうまく動かすこと、前に運ぶこと、良いポジショニング取りで、チームが良い方向に進むようにしていきたいです」

縦に速い湘南のサッカーとは違うスタイルで、自陣でのビルドアップの際に狙われることもあります。

「これまでとの違いを感じることはありますが、そういうものを吸収することでプレーヤーとしての自分の幅が広がると思っていたので、そこはポジティブにとらえています。
 味方のゴールに近いところでGKからボールを受けるプレーは、昨年まではあまり経験がないので難しい部分もありましたし、ミスもありました。ただ、ミスからどうすればいいか考えて、同じミスをなくしていくことで成長できるとポジティブに捉えてやっています。自陣で食いついてくる相手をはがし、前に運べればチャンスも増えますし、そこを強みにしていきたいです」

始動から1カ月、チームの雰囲気や自分の目標を聞かせてください。

「チームの雰囲気は良いですし、伸び伸びプレーすることができています。みんなよく声を掛けてくれます。その中で試合に出たい、という気持ちを持ち続けています」

レッズが目標としているACL出場についてはどうですか?

「サッカー選手でいる以上、出たい大会ですし、雰囲気もJリーグとは違うと思いますから、その出場権を獲りたいという気持ちは自分も持っています。2019年の決勝を見ましたが、相手の強さをすごく感じましたし、同じ日本のチームとして、レッズがそういう場に出ていることはすごいと思いました」

ファン・サポーターに向けてメッセージをお願いします。

「個人としてはまずは試合に出てチームに貢献できるようがんばります。チームとしては一つでも多くの勝ち点が取れるようにがんばっていきたいと思います」

37 MF 武田英寿
今年のサッカーはみんなに点を取るチャンスがあると思う

昨季は新人として加入し、リーグ戦3試合、ルヴァンカップ1試合に出場しました。今季は体格がひとまわり大きくなった印象があります。

「昨年の1年間、フィジカルの部分に取り組んできたので、自分としても少しは変化していると思います。当たりのところではまだ弱いかもしれませんが、相手のアクションに対する反応だとか、踏ん張ったり止まったり、出て行くときにトップスピードになったり、という部分では強度が出せてきました。
 プロでの試合は、高校時代よりもプレースピードで緩急の差が大きいですし、頻度も高くなるので、そこで力をすごく使います。ぶつかったときの強さも必要ですが、自分の体をコントロールするためにフィジカルを強くする必要があると感じていました」

沖縄キャンプではボランチあるいは2列目の右に入り、練習試合4試合のうち3試合で計5得点を挙げました。

「もともとシュートは得意で、形にこだわらず点を取ることは高校時代からやってきたのですが、それが出せるようなポジショニングを取れるようになったこと、自分がゴール前に入れるように周りが組み立ててくれたことが大きいです。シュートを打ちやすいので2列目の右が一番やりたいですね。そこに入るときは右から中に入ってゴール前に関わっていくプレーを期待されていると思っています。
 昨年はレオと慎三さんがたくさん点を取ってくれましたが、今年のサッカーはみんなに点を取るチャンスがあると思います。みんながゴールを目指して、全員が点を取るくらいの勢いでやっていければいいと思います」

リカルド監督のサッカーのカギとなる部分をどう捉えていますか? またその戦術理解は進んでいますか?

「相手を見て自分たちの立ち位置を流動的に変えながら攻撃的なサッカーをしていくので、みんなが自分の立ち位置を理解してできれば強いチームが作れるんじゃないかと思います。ミーティングなどでは分かりやすく話してくれるので、こうすればフリーになれると理解できるんですが、実戦の場では相手のDFがプレッシャーをかけてこなかったりして、難しいところがあります。でもそれをやっていかないといけない。
 札幌との練習試合では、1本目は相手にガチガチに前から来られて、完全にはめられてしまいましたが、2本目は監督の指示で少し変化をつけてやったら、ボールも回って良い展開を作ることができました。監督の一言で変わったというのもすごいと思いましたが、全員が理解してやれたと思います」

青森山田高から浦和に来て1年。改めてレッズについて感じたことは?

「日本でもトップの環境とファン・サポーターの存在、それと街全体がサッカーを盛り上げようとしてくれているのは感じました。新型コロナの影響でたくさんの人がスタジアムに来て応援してくれる機会はなかったですが、ファン・サポーターの熱量を感じることができました。やはり日本一だと思います。昨季はあれだけ応援してもらいながら結果が出せないことが残念でしたし、自分も試合に出られないことが悔しかったです。今季はみんなにとって良いシーズンになるようにがんばります」

武田選手の立ち位置は昨季とだいぶ違っています。開幕の相手、FC東京についてはどうですか?

「カウンターが速いチームで、外国籍選手のインパクトが強いですが、こちらが良いボールの持ち方をして、味方と良い距離感が保てていれば取られたときも良い距離感で奪い返しにいけます。カウンターが鋭いFC東京を前に押し込む試合をしたいです」

PREMATCH DATA
浦和レッズ
2020成績
10
勝ち点46 13714
43得点 56失点
FC東京
2020成績
6
勝ち点57 17611
47得点 42失点
通算対戦成績(J1リーグ)
2099敗 63得点44失点
直近5試合の対戦成績(J1リーグ)
2020/9/30 HOME 埼玉 ●0-1 詳細
2020/7/18 AWAY 味スタ ●0-2 詳細
2019/11/30 AWAY 味スタ △1-1 詳細
2019/3/30 HOME 埼玉 △1-1 詳細
2018/12/1 HOME 埼玉 ◯3-2 詳細
文化シャッター
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あの日、あの時、あの瞬間 〜Memories of REDS〜

ホームで迎えるリーグ開幕は14年ぶり
初戦に勝利してスタートダッシュを

ホームでの開幕戦は過去5勝2敗。早春のデーゲームを楽しめた

 1993年にJリーグがスタートして今年で29シーズン目となるが、浦和レッズが開幕戦をホームで迎えるのはわずかに8回目だ。
 ホームスタジアムが駒場だけだった時代は、ホームでの開幕が5シーズン続いたこともあったが、埼玉スタジアムを利用するようになってからシーズンチケット購入者が一気に増加。Jリーグの日程発表から開幕までに送付が間に合わない可能性があることから、クラブがJリーグに調整を依頼してきたこともあり、ホームでの開幕戦は実に14年ぶりとなる。

 近年ではJリーグ開幕前にACLのグループステージがあることも珍しくなく、前年の成績によっては富士ゼロックススーパーカップに出場する。昨シーズンもJリーグ開幕はアウェイの湘南ベルマーレ戦だったが、その前にYBCルヴァンカップが始まり、レッズは埼スタにベガルタ仙台を迎えてシーズンをスタートさせた。ファン・サポーターもJリーグの開幕がアウェイで行われることをそれほど気にしないだろうし、すっかり慣れっこになっているに違いない。

 それでも1シーズンを通して覇を競い、翌年のACL出場権も懸かるリーグ戦の開幕をホームで迎えるのは、晴れがましい気持ちになるだろうし、“プレ開幕戦”のACLやスーパーカップ、ルヴァンカップの試合をはるかにしのぐファン・サポーターが集まる。常連はいつもの場所に陣取り、名前を知らない顔なじみたちと、「今シーズンもよろしく」と正月さながらの挨拶を交わす。周りから醸し出される開幕戦特有のワクワク感が初めて埼スタを訪れた人にも伝わり、生観戦初体験の期待が何倍にも膨らむに違いない。

 そんなポジティブな雰囲気がピッチにも伝わるのだろうか。リーグ開幕戦をホームで迎えた過去7回は5勝2敗とすこぶる勝率が良い。しかも雨天だったことは一度もなく、さわやかな早春のデーゲームを思いきり楽しむことができた。
 久しぶりにホームでリーグ開幕を迎えるにあたり、過去の開幕戦から2試合を振り返ってみよう。


守備的な相手に苦しむも、埼スタ開幕戦初勝利~2007年・横浜FC戦

 まずは14年前の2007年3月3日。レッズはその前年、クラブ史上初のリーグ優勝を成し遂げ、さらにその30日後には、Jリーグ勢としては初めて天皇杯連覇を果たした。
 チームを過去最高位に導いたギド ブッフバルト監督が家庭の事情などで退任し、後任にはかつて選手としてブッフバルトと共にプレーし、監督としてもレッズにプロフェッショナル精神をたたき込んだホルガー オジェック氏が11年ぶりに指揮を執っていた。また選手では、ジェフユナイテッド千葉から日本代表ボランチの阿部勇樹が移籍してきた。

 そんなレッズの開幕戦の相手として、Jリーグは日本で最も熱い場所である埼スタにJ1初昇格の横浜FCを送り込んできた。横浜FCは2001年のJ2昇格から5シーズン、最高位は8位と苦しんでいたが、2006年に高木琢也氏が指揮官になると大躍進を遂げてJ2で優勝。クラブ創設からの夢だったJ1の舞台に躍り出た勢いのあるチームで、元日本代表の山口素弘、小村徳男、奥大介、久保竜彦、三浦知良らを擁していた。また元レッズの早川知伸、室井市衛、吉野智行も所属していた。

 レッズがリーグ開幕戦を埼スタで行うのはこれが二度目。一度目の2005シーズンは鹿島アントラーズに0-1で敗れていた。
 レッズサポーターは、ビジターエリアの一角を除くスタンドを赤白の市松模様に染め、初顔合わせの相手を最大の敬意で“もてなし”た。まるでモーターレースで勝者が決まったときに振られるチェッカーフラッグのようでもあったが、そうだとしたら「今シーズンも優勝するのは自分たちだ!」という決意の表れでもあっただろう。スタジアムは57,188人の観客で埋まっていた。

 試合は25分、MFロブソン・ポンテのクロスが横浜DFに当たってオウンゴールを誘発する。思わぬ先制点に少し拍子抜けした感もあったが、追加点を奪えずに迎えた44分、横浜のFW久保が意表を突いて放った約30メートルのロングシュートが、GK山岸範宏の手を越えてゴール右上隅に突き刺さった。後半は守備を固める横浜に苦しんだが85分、それまで「オフサイドにかかりすぎだった」と言う永井雄一郎が、エリア手前でこぼれ球を拾うと、中へ切れ込んでシュート。これが決勝点となり、レッズは埼スタで迎えるリーグ開幕戦に初勝利した。


初めてのホーム開幕。攻守の主力を欠くも総力で白星発進~1996年・柏戦

 初めてホームで開幕戦を戦った1996年の試合も振り返っておこう。
 レッズはJリーグがスタートした1993年から3年連続、リーグ開幕戦をアウェイで迎えていた。当時は地域的なバランスも考慮されたが、前年のリーグ上位チームが開幕戦でホームゲームを戦うことが多かった。レッズは年間最下位を2シーズン続けたが、1995年は1stステージ3位、2ndステージ8位となり、年間順位は14チーム中4位の成績だった。ホームでの開幕はレッズが「万年最下位」と揶揄されていた状態を脱し、「上位グループ」に入ったことの証明でもあった。

 3月16日、前年に改修された駒場スタジアムに迎えたのは、前年にJリーグに昇格した柏レイソル。対戦成績はレッズの3勝1敗、柏の年間順位は12位だったが、2ndステージはレッズを上回る5位と勢いに乗っていた。俊足FWのエジウソンや、現在は大分トリニータの監督を務める片野坂知宏、横浜FCの指揮官になった下平隆宏、さらにはユースから昇格したばかりで、この開幕戦で最終的にJ1通算495試合出場というキャリアのスタートを切った明神智和らが先発した。

 対するレッズはGK土田尚史、DFブッフバルト、FW福田正博という前年のレギュラー3人がケガで欠場。とりわけ守備の要であり、チームの精神的支柱でもあったブッフバルト、32ゴールを挙げて95シーズンのJリーグ得点王になった福田という金看板が2人とも欠場したことに一抹の不安があった。

 駒場は収容人数(21,500人)の限界に迫る20,124人の観客で埋まった。レッズサポーターは、折から来場したFIFA国際サッカー連盟の理事・サウジアラビアのアブドゥラ・アルダバル氏に、日本一の盛り上がりを見せることで2002年FIFAワールドカップの日本招致活動の一助にしようと、バックスタンドに赤いデカ旗を垂らし、赤と白の紙テープを投げ入れた。

 柏の速い攻撃に苦しんだが、9分にFW福永泰が先制ゴール。24分にセットプレーから追いつかれたが、65分にFW岡野雅行のパスに走り込んだ福永がこの日2点目を挙げて勝ち越した。福永は前年に練習生として加入し、主に途中出場で活躍してプロ契約を勝ち取った選手。前年は攻撃的MFでの起用が多かったが、この年はFWとして起用され、福田に代わる得点源となった。またブッフバルトの代わりにリベロを務めたベテランMF広瀬治は、初めてのポジションながら、DF田口禎則とこの年に加入した元フランス代表DFボリをうまくコントロールし、安定した守備を見せた。土田と同い年のGK田北のシュートストップも冴えた。

 前年にチームを躍進させたオジェック監督体制での2年目、チーム力が向上していたレッズは、攻守の主力2人を欠きながら2-1で柏を下し、Jリーグ4シーズン目にして初めて開幕戦に勝利した。観衆2万人超え、晴天の駒場でシーズンのスタートを飾った勢いはその後も続き、開幕5連勝へとつながっていった。

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THE MDP

躍動する「新顔」たち

文●清尾 淳

 新しい監督を迎え、選手の3分の1以上が入れ替わった浦和レッズ。
 開幕までにどこまで、そしてどうやってチームを作っていくのか。少ない取材機会の中で感じたのは「新しさ」だ。

「新顔」とは普通、新しく加入した選手のことを指す言葉だが、練習を取材して、ずっと在籍している選手も新しい顔つき―「新顔」をしていると感じた。
 新しい監督の下で、これまで培ってきたものに上積みをしていくこと。初めて一緒にプレーする選手同士がお互いの特徴をつかみ連係を深めていくこと。新しいシステムや動き方の中でポジション争いをしていくこと。
 全員がフレッシュな気持ちで2021シーズンに臨んでいることが、練習からも、そして限られた人数ではあるが選手の言葉からも、しっかりと伝わってきた。

 Jリーグ開幕は29回目だが、レッズが新監督を迎えての開幕は12回目となる。
 今季の特筆すべきことは、「リカルド ロドリゲス監督の就任」が昨年11月のうちに報じられたことだ。それが終盤の成績に影響を及ぼしたかもしれないが、一方で今季もレッズでプレーする気持ちのある選手は、同監督のサッカーについて“予習”する機会が十分にあったはずだ。何しろ日本で他チームの指揮を執っている現役の監督だったのだから。
 全く白紙の状態から取り組むのとは違い、始動した時点で多くの選手がリカルド監督のサッカーを研究しており、理解は早かっただろう。そこから実践的理解、対外試合での実戦を経て今日の開幕戦を迎えている。

 まだ成長の途中であることは容易に想像できる。いや、ここからが本格的な成長の始まりだと言ったほうがいい。公式戦でこそチームは鍛えられるのだから。そういう意味でFC東京は、浦和レッズが成長するための良い対戦相手だと言える。
 昨季の終わりから現在にかけて、チームを離れた選手が11人。試合に出場しない柏木を含めてポジション別に並べれば、J1で十分に戦えそうなチームができる。しかも半数が2019年のACL準優勝に力を尽くした選手だ。そう考えれば不安ばかりが募りそうだが、今は期待感のほうが強い。
 新加入の選手がどんなプレーでチームに貢献するか。よく知っている選手がこれまで見せなかった動きをするのか。そして、J1初挑戦となるリカルド監督が、どんなサッカーの残像を我々に植え付けるのか。いろいろな意味での「新顔」が埼スタで躍動する。

 常に勝利を目指すと共に、チームの成長を見届けていく38試合がいまスタートする。

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