|
第2部
山内氏:こんばんは。週刊サッカーダイジェストの山内と申します。なにぶん雑誌をつくるのが仕事ですので、こういった場所は正直、苦手です。つたない進行になると思われますので、その点は予めご容赦ください。
一部世間では私のことを、レッズサポの編集長と言っているようですが(笑)、否定はしませんけども…編集長という立場上、あまりおおっぴらに肯定もできませんが…去年は非常にうれしい思いも悔しい思いもさせていただきました。
まず、監督にお伺いしたいのは、このような場合のメンタルコントロールはどうしたらいいのかと(笑)……続けさせていただきます。
監督にお伺いしたいのですが、率直に、私もどきどきし、喜んで悔しがった昨シーズンでしたが、選手時代ヒーローであった監督が、監督になられて、私としては非常にうれしかったのですが、そんななか、1年目でこの成績…セカンドステージ優勝ですが、あとの2つのタイトルは惜しいところで逃してしまった。この成績を素直にいま振り返っていただくと、どういった感想をお持ちでしょうか。
ブッフバルト監督:昨シーズンの成績は、本当にすばらしかったといえると思います。まず、いままで非常に気持ちの良かった所、あるいは私の第二の故郷であるこの浦和、さいたまで監督としてできるということは本当にうれしかった。ただし、うれしがってばかりはいられません。当然ながら、監督としての責任というものがありました。そして、昨年は1年目ということで、理想的にできればと思い、そのようにやっていこうと進めてまいりました。最終的にはある程度の成績が残せたと思っています。
浦和レッズはいま、Jリーグの中でもトップグループに入るチームになったといえると思います。今シーズンはそれを証明して、更なる進歩をとげる年だと思っています。
山内氏:タイ・キャンプが中止になり熊本でキャンプを張りましたが、そのキャンプの課題や成果など、これまでのところ、チームづくりはどのように進んでいるでしょうか。
ブッフバルト監督:我々はよく準備期間と呼びますが、非常に満足しています。いまの段階で、かなりのところまでできていると思います。練習を始めて最初の1週間は大原でフィジカルを中心にやりました。そのあと熊本にトレーニング・キャンプに行ったわけですが、非常にいい形で、プレーの、サッカーの練習ができたと思っています。といいますのも、熊本は、ちょっと寒かったんですが、芝がすばらしかった。この時期、フィジカルは終わった、さてサッカーというときに、芝というものは非常に重要になってきます。ですから、将来的には、大原にもああいう芝を準備していただければと思います。わざわざ熊本に行かなくてもここ、さいたまでできるように、さいたま市の方にはぜひお願いしたいと思っています。
熊本から帰ってきたときに乳酸値測定というものをしたところ、出た値がすばらしく良いものになっていました。
いま、ひとつ気がかりなことは、みなさんも思っているでしょうが、けが人のことですね。さまざまなけがですが、田中達也、鈴木啓太…アルパイはドイツで治療をして帰ってきました。アルパイの場合はもう体は完全に治っています。あと、山岸は脱臼して、彼は少し長くかかるかもしれません。もうひとつ、エメルソンは日本にいます。(笑・拍手)
そうはいっても、けがをしている選手たちも開幕に間に合うか、あるいは2戦目、3戦目には全員間に合うと思っています。それに、けがをしなかった戦力、彼らがしっかり練習を積んで、乳酸値測定の結果もすばらしいものでした。彼らがやってくれるでしょう。
山内氏:エメルソンの話が出ましたが、無事到着してなによりです。厳格なブッフバルト監督が、彼の遅刻癖…とまでは言いませんが…彼のああいう面を、率直に言ってどう思っているのでしょうか。
ブッフバルト監督:たしかに遅刻の回数は多いと思いますが、彼もしっかりしたプロの自覚をもっていて、そのおかげで昨年は得点王になった。彼自身がチームに貢献してくれたこと、チームを助けてくれたことは非常に多いわけです。そうすると、監督も、ま、しょうがないかと(笑)、それぐらいは大目に見てやろうかということがあります。しかし、それは、あくまでも彼がチームに貢献しつづけてくれる間ということです。チームへの貢献度が薄れてきた場合には、違う対応をしなくてはならないと考えます。エメルソンという選手は、勝者のメンタリティの非常に強い人間で、ピッチに入ったら絶対に負けたくない、そういう気持ちを絶えずチームに示してくれます。リーグを戦う以上、こういう強い意志をもった選手は必ず必要です。
山内氏:今年は去年のシステム、戦術を踏まえていくのか、それとも、新しい試みを考えておられるのでしょうか。
ブッフバルト監督:基本的には昨年と同じように、3バック、中盤に5人、そしてトップを2人というシステムでいきたいと思います。ただ、みなさんもご存知のように、昨年もシーズン中、対戦相手の戦い方によってはシステムを変更したこともありました。私が喜んでいるのは、そういった場合も、浦和レッズにはフレキシブルな選手が多いということです。いろいろなシステムを使っても、それにすぐに慣れて機能してくれる、そういう選手が多い。戦術、システム…みなさんいろいろおっしゃると思いますが…私は、システムをあくまでも基本的なものとしか捉えていません。サッカーは生きているものですし、そういうサッカーでなければ見ていて楽しくないと思います。私が現役のとき、いちばん楽しかったのはボールを扱っているときでした。いまの選手たちもボールを扱うのがいちばん楽しいと思います。観にきてくださるお客様も、サッカーが動いているのを見るのがいちばん楽しいと思います。いかにして、あの選手が1対1のプレーで相手を抜いていくのだろうか、こんなボールの扱い方ができるんだ、あるいは、連携プレーはどうなっているんだろうか、そういうものを見るのがいちばん楽しいと思います。ですから、私は選手には、システムはこうだとしても、自由を与えています。個々の選手のレベルが上がっていけば、チーム全体のレベルも上がっていくと思っています。
昨シーズン、我々はJリーグの中でいちばん美しいサッカーをしたと自負しています。得点もいちばん多かったし、結果も残しています。何より、私も見ていて楽しかった。こういったことを今シーズンも続けていきたいと思っています。
山内氏:監督はそうはおっしゃいますが、あれこれ言うのも仕事なので、もう一回聞かせていただきます。ファンの方々の間での議論でもあるんですが、いわゆるトップ下ですね…山田選手が務めるのか、それとも、私の考えるに、長谷部選手が務めるのか、監督の中ではズバリ、どう考えていらっしゃいますか。
ブッフバルト監督:山瀬功治がいなくなったということ。これが大きな問題の出発点だったと思います。本当に、彼がいなくなったのは痛かった。残ってくれるものだと期待していました。それに関しては、クラブも、私も監督として、引止めには尽力しましたが、残念ながら…。彼の人生ですから、彼が決めるのは正しいことだと思います。そして彼は、私たちではなくて、ほかのチームに行くことを判断してしまいました。そんななかで、ではどうするかということですが、山瀬も、昨年セカンドステージ、けがで大半は出られませんでした。そのあともレッズはいいサッカーを続けられたと思っています。長谷部だったり山田であったり…昨年使ったパターンは今年も考えられると思います。ただ、この選手はここだというふうに固定したくはない。長谷部も山田もすごい選手ですが、タイプが違います。そういうことがあるので…うちには非常にフレキシブルな選手が多いので…例えば、平川は右も左もできます。アレックスが代表でとられて、長い期間チームを空けるということもありますので、そのときの状況を踏まえて、試合ごとにそのポジションには誰を置くか、決めていきたいと思います。あるいは、昨年もやったのですが、エメ、達也、永井、この3人でというパターンも考えられます。だれがということも大切ですが、それ以上に、そのポジションでは何をすべきかなんです。そのポジションを与えられた選手が、自分の役割・責任は何かをしっかりと把握して、プレーすることがいちばん大切だと思います。
山内氏:森GM、お待たせしました。すいません。
森GM:ちょっと眠くなっていましたよ。(笑)
ブッフバルト監督:私はそんなに長く話してましたっけ?(笑)
山内氏:呼び出しておいてなんですが、もう一回、山瀬選手の話なんですが。強化として、なぜ山瀬選手を引き止められなかったか…といったらおかしいですけれど…。その話し合いについてと、山瀬選手に代わる選手補強策というのは…監督の意向でもありますが、それに沿って考えていらっしゃるのか…。
森GM:山瀬選手がチームを去ったことは私もすごく残念だし、チームにとっても戦力ダウンということで、痛手でした。もちろん、昨年の12月ぐらいから何回か本人とも話をしましたけれど、本人も悩んでいる状況がありました。結局、それを1月の終わりまでずっと引っ張って、私だけでなく監督もそうですが、ぜひ残ってくれという努力をしたんですが、最終的に本人の決断で出ることになった。1月の下旬というタイミングとなると、代わりにだれかをとってくるには遅すぎる。穴を埋める選手が補強できていないという現実はあります。非常に痛手であるということは、申し訳ないと思っています。
いろいろな話をして、「何か不満はあるの?」と尋ねても、「いえ、何も不満はありません。レッズはすばらしいチームだし、給料にも満足、チームの雰囲気、監督もクラブの人もみんないい人だし」と。「じゃ、何で契約しないの?」って。何度か同じような会話を交わしましたけど。こればかりは、本人にいつか聞いてみないと、本音は何だったのか、私もつかんでいないのが実状ですね。
山内氏:彼の抜けた穴に対して、いま現在探しているということはありますか。
森GM:もちろん、探してはいますが、だれかを狙っているということにつながるわけではありません。どこのチームもこれからシーズンが始まろうとしているわけで、こっちが欲しいと思う選手は相手も絶対に出していい選手ではない。しかし、シーズンが始まって5試合、10試合たってくると、レギュラーでない選手、ベンチに座っている選手について、あれならうちに来てほしいな、ということが見えてくる時期が、いずれはくると思います。そういうのがマッチングすれば補強はしたいなと思っています。
山内氏:今季の補強についてお二方に伺います。若手の高校生年代が多くて、将来性は非常にあると思いますが、即戦力としての補強があまりなかったように思えます。若手年代の補強と、即戦力を補強しなかった点についてのお考えを伺いたいんですが。それとも、若手年代を即戦力と考えているのか。
ブッフバルト監督:考え方はいろいろあると思いますが、最初に認識しておかなければならないことは、浦和レッズがどういうチームであるかということです。昨年セカンドステージに優勝した、日本のベスト2のひとつだということができる。それだけクオリティーの高いチームです。その中に、今も若い選手というのはいます。田中達也、長谷部、鈴木啓太、平川、闘莉王…坪井だってまだまだ若い選手に入ると思っています。もちろん、代表として国際経験を積んでいる人もいますが、まだまだ若い選手であるといえます。今のこのチームに新たな選手を入れるとなると、当然、今いる選手よりもいい選手でなければならない。そして、うちのチームに合う選手。サッカーだけではなくて、個性、キャラクターも合わなければならない。新しい選手が入ったことでポジティブにならなければいけないということです。
実際、このポジションに人材がいない、ユースから上がってくる選手もいないということになったら、いろいろなやり方があると思いますが、例えば、今シーズン、ジュビロやマリノスがやったやり方…ほかのチームからスター選手をとってくるやり方…これは、浦和レッズのフィロソフィーではないと思います。我々は、自分たちのチーム…先ほど、若いチームと言いましたが…非常に統制の取れた、ハーモニーのあるチームです。このチームを、いかにして目的をもって強くしていくかが大切です。監督としては、あるポジションの選手がいないとなったら、若手を育てようと考えています。外国籍選手は3枠すべて使っていますし、3人ともすばらしい選手です。ですから、外国籍選手の補強は考えていません。日本人選手…他のチームで活躍しているスター選手をとってくることは難しい。となれば、今うちのチームにいる才能ある若い選手を伸ばしていく、そして、今、穴とされているところを埋めていく。あるいは、彼らがもっともっと花開いてすばらしい活躍をしてくれる…そういうことを私はやっていきたいと思います。
山瀬がいなくなったあと、ひとり、どうしてもとりたい選手がいました。クラブに相談したところ、無理だと言われたんですが…バルセロナのロナウジーニョですね。(爆笑)
お金もないし、向こうも出さないということで、断られました。でも、しつこく追っかけていこうと思っています。(爆笑・拍手) |
|