ONLINE MAGAZINE/REDS VOICE
2009. 3. 3 Vol.61
VOICE INDEX
「Talk on Together 2009」を開催
1 2 3 4 5 6
PHOTO清尾氏:チームの目標というのは、今までタイトルというものを毎年掲げてきたと思うのですけど、今季は特別掲げていないですけれども、構築するというものと、具体的な成績ということで、どうしてもお聞きしておきたいなと思いますが、それはどうでしょうか?

信藤TD:監督が今年はこうだっていうものを出さない理由があると思います。それは我々が今、ある意味ベースからチーム作りを進めていることと関係している思います。31人、このグループが同じ方向を向いて、いよいよレッズのサッカーを表現していこうという時期に、例えば何か目標を設定して、それが初期段階でうまくいかなかったときに、取り返しがつかなくなることがいろいろあります。だからといって目標がないわけではないと思います。チームをサポートして監督をサポートする僕の立場としては、そこはフィンケ監督の言葉が一番、第一段階では重要なのではないかと思っています。ですから僕の方からこうだというものを出すつもりはないです。

清尾氏:成績ではなくて、構築してもらおうというものはあるわけですね?

信藤TD:構築してもらおうというものは、今やってもらっているものです。それは選手同士の組み合わせであり、それぞれのポジションを結びつけたそれぞれのグループであり、そのグループというものが今は分かれていないんですね。これが一つになってチームが攻撃守備の切り替わる場面、あらゆるところでコンビネーションを使いながら、お互いのコミュニケーションを使いながら、監督も今、一生懸命英語で選手たちとコミュニケーションを取ろうとしているし、選手たちは一生懸命英語を学ぼうとやっています(笑)。そんな中で培われたものが出てくるのではないでしょうか。

清尾氏:実際に監督の指示をすごく真剣に聞いています。

信藤TD:今、チームのコミュニケーションがピークに来ています。頭の中は必死になって動いているんじゃないかと思いますね。英語を把握しようというのもそうですし、次のトレーニングになったときに、英語で指示をされて、英語が理解できなかったときには分かっている人間と相談をしながら、すぐに次に移行できるようにやっている姿が、ものすごく魅力的ですよね。

清尾氏:僕の話で申し訳ないですけど、これまで外国籍の監督のときに、選手は監督が指示をしているときももちろん聞いているんですけど、その後、必ず通訳が日本語でしゃべるので、そっちの方に集中している。ある選手に聞いたのですが、「やっぱり次待っちゃうよね」となります。でも今は英語の指示しかないから、そこで必死に聞かざるを得ない、それがすごくコミュニケーションだと思うんですよね。

信藤TD:日本人の英語ってどうしてもカタカナに近くなります。きちんとした英語表現でしっかり聞いてないと、それぞれの単語も分からない、ということを思い浮かべますけど、フィンケ監督はすごくシンプルな英語を的確に話してくれています。それを選手はカタカナじゃなく、しっかり英語として聞こうと必死になっています。

清尾氏:それでトレーニングで最初の選手が間違えても笑われるだけで怒ったりはしませんよね。

信藤TD:把握してないところをもう一度繰り返して、次にもう一回繰り返すときにはみんなができるようになっているので、それを踏まえながら、その練習のテーマをトライしている状況が今生まれていると思います。

清尾氏: これはお二人に聞きたいんですけれども、今季目指すものは、そんな10節ぐらいでできるとかという区切りはできないと思います。5年10年とは思いませんけれども、やっぱりある程度同じ目標に向かって続けていかないとできないと思いますが、たぶん多くのファン・サポーターの皆さんは、それなら楽しみにしようじゃないかと思っていると思います。ちょっと不安なのは、何かの事情でやっぱりこうしようと変わってしまうのが一番不安なのですが、それはいかがですか?
PHOTO
信藤TD:ないです。絶対ないです。今やっている準備のやり方が、間違っていると思っていないですし、僕の目から見ると本当に素晴らしい形を作り出していると思います。
これだけの準備を例えば日本人の監督で実行したとすると、朝から晩まで血みどろになって何かをやって、「これだけ準備したのだから俺たち負けない」っていう感覚が昔なら生まれたと思います。でも今は、必要なものを必要な状況に応じてトレーニングをして、回復も図って、そして頭を休めるときもあれば、頭を使ってミーティングの中で考えることもあって、すごく充実した生活習慣の中で、朝から晩まで選手たちはやっています。それは1日を使って、僕たちの仕事としてやっているという、それを考えたら、これだけいい準備をして、いい形が出ないはずがないと僕は思っています。多少困難な状況が起きたとして、絶対それを変えることはありません。

藤口代表:私もそう思っています。これは私個人としての考え方ではなくて、クラブとしての考え方で、これはクラブ全員がそう思っているし、今後も継続していきます。当然成果が出なかったらということですよね。でも成果が出ると自信を持って言っているわけですから。それにさっきも言いましたが、皆さんと一緒に作り上げるわけで、皆さんと一緒になってスタジアムがそういう雰囲気になっていって、いい形で行けると思いますので。だから皆さんにも協力していただきたいと思います。

清尾氏:それからどうしても2〜3点チームの強化以外のところでお聞きしたいのは、本当はここで出さない方がいいと思うんですけど、高原選手の交通事故がありました。内容についてはオフィシャルでも詳しく発表されていますけれども、つい先日のことでもありますし、昨年も何回か交通事故があったと思いますし、あらためてクラブの姿勢や対策が問われるところではないかなと思いますが、いかがでしょうか?

信藤TD:これはすごくシリアスでデリケートな問題です。まずは、けがをなさった方がいらっしゃるということで、これについては我々クラブもそうですし、選手もそうですし、1日も早いご回復をお祈りいたします。それから、もちろん元気な姿になってくれることをすごく望んでいます。選手たちも普段から運転には注意をしなければいけないですし、自分が置かれている立場、責任というものを考えておかないといけないと思います。交通事故というものはいろいろな局面がありますけれども、どんな局面であっても、起こったときにはしっかりとその状況を把握して、的確な対応をして、クラブとの連絡、その他との連絡を密にやらなければいけない状況だと思います。日本のスポーツ界にいる選手たちは社会の一員としての責任があると思っていますので、クラブとしては安全面に関しても、常に安全ということを考えながらの行動というのは強く言っていくつもりです。そんな中で、自分がどう思っていても、集中していても、(事故が)起こることっていうのは確かにあります。そのときにはきちんとした対応を取れるクラブでありたいと思っています。

清尾氏:本当にけがをされた方にはお気の毒ですし、信藤さんがおっしゃる通り一日も早く回復を望むところですが、もう一方で、高原選手の心情というか、具体的に試合がどうなるのだろうと心配されている方もいると思います。

信藤TD:もちろん、選手の心情とか、今のチームの中でそういうことがチームに影響するということがあると思いますが、ただ、順番を間違えてはいけないと思います。さっきの監督の逆算の考えではないのですが、その順番を間違えてしまうのは危険だと思っています。高原自身も起きたことに対して、すごく自分の中でもけがをされた人に対する思いというのもありましたが、実際には試合に向けて切り替えていかなければいけない。我々もそれは、チームとして、環境としてサポートをしますけれども、それがあるからと言ってここまでクラブがやってきたことの順番は変えられなかったと思います。

清尾氏:もう一つ、これも聞いていいかなと思いますが、今季大原サッカー場で、裏口から帰らずに玄関から帰るようになったということが徹底されているようで、かなりファンサービスもしている光景を目にします。話によれば誰がしていて誰がしてないのか、スタッフのチェックがあるということも聞きますが(笑)。今後シーズンが始まって、試合があればいろいろ事情もあるし、前日は難しいとかいろいろ出てくると思いますが、ファンサービスについてのクラブの考え方を改めてお聞きしたいのですが。

信藤TD:ファンサービスは、いい選手になればなるほどそういう気持ちは強いと思います。選手たちもファン・サポーター、簡単に言うと「応援してくださる方々」に対する思いというのはあると思います。ただ、試合前日、あるいはコンディションが悪いとき、それから回復に努めていかなければならないような状況に追い込まれたときに、どうやって、ファンに思いは伝えつつ、早い時間で帰らしてあげるかということも大事なことかなと思います。そのときにファンの方々に思いが伝わるようにするのはクラブの仕事かなと考えています。

清尾氏:実際今はクラブから選手に、なるべくファンサービスをして帰りなさいという指示をしているのですか?

信藤TD:今シーズンの初めにもやりなさいという話はきちんとしています。ファンサービスというのはやはり内面から出てくるものがあるでしょうし、そういう指示がなくてもきちっとできることと、そうじゃなくて、「今日はごめんなさい」って言えるような状況になるのが理想だと思っています。

清尾氏:地域密着という言葉は言われて久しいんですけど、レッズがビッグクラブと自分で言っているとは思いませんけど、世間が言うようになってから、もしかしたらやることが多すぎるのかもしれませんけど、地域との関係がやや薄れているのではないかと思われがちだと思うんです。それは何が原因なのかなと。これは藤口さんに聞きたいと思います。

PHOTO藤口代表:例えばハートフルクラブの海外キャンプをACLに出るようになってからやるようになっています。これは非常に好評だということで、メディアの方にも取り上げていただいて、大々的に紙面に載ったりしました。ホームタウンで活動しているハートフルクラブもこれまでと同じようにやっているのですが、このような報道によって、そっちをないがしろにして、海外にばかりにベクトルが向いているというイメージがあったりします。確かにパートナーの方々から見ても、地元ではなく中央のパートナーと一緒になってやっているんじゃないかとか、地元をちょっとないがしろにしているんじゃないかとか、そういう話を耳にしたこともありました。決してそんなことはありません。ホームタウンなくして浦和レッズはありませんので、ホームタウンがあって、初めてアジア・世界があることを認識しています。ただ、クラブが発足した当初は街のお祭りに選手を派遣したりとか、そういうことをかなりやっていた覚えはあります。選手の派遣等について、そういうところに出て行く機会は、少し少なくなっているということはあると思います。
ただ、イベントへの協力、これにつきましては市の方々と一緒になって、商店街の方々と一緒になって、協力をさせてもらっています。バナーがあったり、チームスタッフが訪問したり、ハートフルクラブのコーチが指導したりという形で、さまざまな協力をさせてもらっています。ただ、地域密着の、本当の形とは何なんでしょう。一番大きな地域密着というのは、選手がいて、クラブスタッフがいて、日常生活の中で会ったときに「おはようございます。頑張ってください」という声を掛け合うとか、例えばレストランに入ったときに隣にいたとか、そのときに「こんにちは」って声をかけられたり、「けがは大丈夫ですか?」って言われたり、そういうのが本当に地域に入り込んだ関係なのではないかなと思います。理想かもしれませんけど、そう思っています。
そのかわりに、先ほどファンサービスということがあって、例えば選手があるレストランに行った、そこに一般のお客さんがいる。そこで「すみません。サインください」と声を掛けてしまう。これはある意味では、あってはならないことです。それでワッーとなってしまえば、お店にも迷惑をかけてしまいます。プライベートの世界と、そうでないときの区別は、やはりわきまえて頂かなくてはいけません。そういうことを、大多数の浦和の方々には分かっていただいていると思いますけれども、それができなくなると選手が、「あそこに行くと、ワッーとなってお店に迷惑をかけるから」ということで行かなくなる、そういうことでは、だんだんホームタウンから離れてしまって、本当の意味での地域密着をはかれなくなってしまうと思います。その辺も一緒になって取り組んでいくことが大事だと思っています。
さらに今年はもう一度ホームタウンに根付くために、昨年まで選手だった内舘秀樹君を広報部のスタッフとして迎え入れました。広報部でクラブ広報に専念してもらいます。そしてホームタウン活動をフルにやってもらっています。小学校へ行っていろいろな話をすることもあれば、商店街に顔を出すこともあります。内舘君は、ソフトな人あたりで非常に人気がありますので、そういう活動をもっとしていきたいと思っています。
いずれまた、レッズでの選手生活を終えた人材がクラブスタッフとして入ってくると、浦和レッズのDNAがずっとつながっていくと思います。その第一人者が内舘君ということになります。そういうような活動は、今後もしていければいけないと思っております。

清尾氏:内舘さんには広報として何をやってきたか、1ヵ月に1度くらいはMDPに書いていただくことにしています。第1部の終了時間がそろそろ過ぎようとしていますので、一言ずつ何かあればお願いします。

信藤TD:今シーズン、チームに見えるプロの雰囲気と、それからピッチ上での大きな変化を楽しんでください。ありがとうございました。

藤口代表:今年は、チームの変革の年と位置付けています。クラブも変革の年としてこの2月1日付で組織改正を実行ました。従来の事業本部・強化本部の2つの本部制から、チーム強化を強化本部だけに任せるのではなく、クラブ全体で支えて取り組んでいくというフラットな体制に変更しました。ぜひクラブ一丸となって取り組んでいきますので、今まで以上に熱いサポートをよろしくお願いいたします。(第1部終了・第2部「4」へつづく)

※掲載内容は、実際の発言の主旨を変えない範囲で、変更している箇所があります。
1 2 3 4 5 6