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2009. 3. 3 Vol.61
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「Talk on Together 2009」を開催
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「Talk on Together 2009 〜第2部 トークショー〜」
▼進行:大住良之氏
▼出席者:フォルカー・フィンケ監督 モラス雅輝コーチ


大住氏:最初からストレートな質問ですが、今年浦和レッズでどのようなサッカーをしたいのか、簡単にお話しいただけますか?

PHOTOフィンケ監督:こんばんは(日本語で)。自分は今まで根本的にコンビネーションサッカーというものを追求してきました。技術的に優れている選手、それから運動量の豊富な選手、そういう選手たちを徹底的に使っていくことで、チームとしてコンビネーションをベースとしたサッカーというものを実際に実践してきたわけです。この新しいクラブでも、コンビネーションサッカーを実際に行ないたいと考えています。
もちろん、すべての試合で自分たちが理想とするようなサッカーを実践できるわけでは一切ありません。ただし、とても大切なのは全選手が同じ方向を向いて同じ道を進むこと、そして毎日のトレーニングで自分たちが何をやりたいのかを考えながら、さらに追求していくことです。相手によっては、少し自分たちのやり方が変わることがあるかもしれません。しかし根本的な私たちのスタイルは一切変わることはないでしょう。トレーニングで日々やっているサッカーを、週末の試合でもぜひ実践したいと思っています。それが私たちのコンビネーションサッカーです。

大住氏:コンビネーションサッカーという非常に明確な言葉をいただいたのですが、具体的なポイントはどういう点になるでしょうか?

フィンケ監督:このようなサッカーを実践するためには、まず豊富な運動量が求められます。私が前回来日して、試合を見たときに非常に感じたのは「運動量が少ない」ということでした。ですので、私自身も今シーズンの準備期間を非常に早くから始めまして、実際に1月12日というJリーグで最も早いスタートになったのですが、できる限り長い準備期間を通してしっかりと準備をしてシーズンに臨みたいと考えました。そして豊富な運動量というのはすべてのポジションで求められることだと思います。
そしてもう一つ、とても大切なのはボールを扱う技術です。このことに関して、私はそれほど大きな心配はしていません。なぜならこのチームには非常に優れた『個』を持った選手が所属しているからです。
皆さんもご存じの通り、準備期間の初めのころ、3日間を通して体力測定を行ないました。この本格的な体力測定によって、さまざまなデータを得ることができたわけです。そのデータをベースとしながら、私、それからコーチングスタッフ、それからメディカル部門の関係者といろいろな話し合いをして、それぞれの選手にあったメニューを作り出しました。
そしてそのメニューに対し、選手たちは一生懸命取り組んでくれました。そのような体力測定をすることによって、それぞれの選手に正しい負荷を与えるということができますし、場合によってはそれまで運動量に関してそれほど優れていなかった選手に対しても、他の選手に比べてさらに多くの負荷を与えることが必要だったかもしれません。ただしどのくらい与えなくてはいけないのかということはこのような体力測定の結果がないと、しっかりと積み上げることができないところがあります。このような準備をして、今年の準備期間に臨みました。

大住氏:走らなくてはいけない、それから技術的に高くなくてはいけないというポイントを上げられましたが、実際にピッチ上で、どのようなサッカーになるのかということを教えてください。

フィンケ監督:私の一つの考えとして、ボールを奪った時点で、できる限りしっかりと攻撃の準備をしてから相手の陣地に攻め込むことが大切だと思っています。ボールを奪ってからすぐロングボールを蹴るということは、非常によくないことです。 なぜなら、ドイツではこういういい方をします。一度ボールを奪った時点ですぐにロングボールを前線に蹴ってしまうと郵便局の速達のような、同じようなスピードでまたボールが返ってくる、ということです。やはり忘れてはならないのは、私たちはチーム全体でボールを奪ったわけです。なぜ相手チームにプレゼントする必要があるのでしょうか?できれば、7回もしくは8回、もしかしたら今までのやり方を考えれば非常に多い回数かもしれませんが、しっかりとパスをつないでいくことによって、しっかりボールを回して相手のチームの選手を動かして、出来上がった穴のところに付け込んでいく、そういうサッカーをやりたいと思っています。
私はよくコンビネーションサッカーと言いますけれども、単純にボールを奪って、すぐにロングボールを蹴って、数秒後にはまたボールが自陣に戻ってくるということではなくて、しっかりとショートパスをつなぎながら、相手の陣地へゆっくりと攻め込んでいく、正しいタイミングでスピードアップしてどんどん攻めていく、そういう戦い方だと思っています。一部の新聞で書かれたことですが「新しい監督はロングボールを禁止したそうです」。
そんなことは一切ありません。もちろんロングボールというのもサッカーに必要なわけですし、ロングボールなしのサッカーというものはあり得ないでしょう。ただし、私が言いたいことは、ショートパスをつなげることによって、しっかりとしたシチュエーションを作り出して、そこから効果的なロングボールを蹴るということです。ボールを奪ったからすぐに前線の選手にボールを出すということでは一切ありません。ショートパスからショートパスへとつないだ後に、正しいタイミングでロングパスを蹴るというのは非常に効果的だと思いますし、このようなシチュエーションをできる限りたくさん私たちもゲームの中で多く作り出していこうと思います。

大住氏:パスをたくさんつなぐということは、やはりミスが出る可能性も増えるということだと思いますが、それについてはどのようにお考えでしょうか?

フィンケ監督:一つどこかに誤解があると思います。必ずしもパスの回数が多いことによってミスが増えるというわけでは一切ありません。ただし、7回、8回、9回とパスをつなげばつなぐほど、スタジアムで見ている人たちは、このチームはしっかりパスを回せるじゃないかと思います。そして10本目のパスがミスパスとなると、「何だ、やっぱりパスを回す回数が多くなるとミスが多くなるんだね」という印象を与えてしまいます。
ただし、統計上でも実際にミスパスが増えるということは一切ありません。ですからたくさんのパスを回していって得点チャンスを作るということは大切ですし、今後私たちはそれをやろうと考えていますけれども、だからと言って自動的にミスパスが増えるということは一切ないわけです。
一つはっきり言えることはボール保持率が上がることです。60%とか70%のときもあるでしょう。ずっとこっちの方がボールを回しています。もちろん物事を批判的に見ることもできます。「ボール保持率が60%以上なのにまだ点を取ることができないのか」というようにですが。ただし、そのように悲観的な考えではなくて、ボールを回していくことによって、自ら主体的に得点チャンスを作り出そうとしているチームを、誉めたたえるべきではないでしょうか。
PHOTO前もって皆さんにお話をしておきますが、私はドイツ人です。しかし、「いかにもドイツ人」というタイプの指導者では一切ありません。実際には皆さんにお話をしています私の考え、それからサッカーについてのスタイルに関しましても、「いかにもドイツ人的な」サッカーを追求しているわけでは一切ありません。たぶん私が求めているサッカーというのは、地中海の周辺の国々でプレーされているサッカーに近いのではないでしょうか。フランス、スペイン、ポルトガルなどのサッカー。そういったさまざまな国から影響を受けて来たのが私です。ですから、みなさんがドイツ人の監督が来たから、ものすごくドイツ的なサッカーが見られるということを期待しているのだとしたら、それは残念なことにかなわない夢になってしまうかもしれません(笑)。
もう一度はっきりと申し上げますが、私は一応ドイツ人ですけれども、がっかりはしないで下さい。ドイツ的なサッカー、実際にはモダンな戦術をベースにしたドイツ的なサッカーもあるわけですけれども、そのようなものを求められているとしたら、私のやり方は今回うまくいかないかもしれません。なぜかというと、私がやろうとしているサッカーはまったく違うからです。ロマンを提供してくれるような、魅力的なコンビネーションサッカーを私はいつも追求してきたわけです。
皆さんもご存じかも知れませんが、1972〜1976年、このときの私たちのドイツサッカーというものは世界でトップレベルでした。非常に魅力的な、美しいサッカーを展開していました。その後、残念ながら戦術的な穴に入ってしまい、国際的に高い評価を戦術面で受けることはなかったのですが、2006年ワールドカップ・ドイツ大会後では再び評価が高くなってきています。私たちの国ドイツの方でも、とてもモダンな戦術が実践されるようになってきました。2006年ワールドカップ以降は、私たちのサッカーは国際的に見てもいい評価を受けるようになってきています。(「5」へつづく)
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